表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現場の昼飯時、近寄ってくる動物達  作者: 蘭鍾馗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

1.奈良公園のシカ

 奈良公園の鹿に、みだりに食べ物をあげてはいけない。



「え?鹿せんべいも駄目なの?」

 いやあれはいいんです歴史もあることだし。

 でも、それ以外のものはやめといた方がいい。それに人間の食べ物は塩分たっぷり入ってるから鹿にも良くない。まあでも、鹿の方はそんなことお構いなしだからね。

 知らない間に、あなたの弁当は狙われている。


 気をつけろ!


 ◇


 20年くらい前の話だろうか。


 奈良公園の近くで、ある仕事の委員会が開かれた。私は事務局で出席していた。

 で、1時間の昼休憩になった。奈良公園がすぐ近くだったので、そこで弁当を喰うことにした。

 空いているベンチを見つけて、そこで食べた。そして無事に食べ終わった。


 私が座っていたベンチから、遊歩道を挟んだ先には四阿あずまやがあって、若いカップルがサンドイッチを食べようとしていた。

 すると、どこからともなく雄鹿が2頭現れて、四阿の様子を伺っている。どうやらサンドイッチを狙っているようだ。何やら二頭で相談?をしているようなそぶりを見せた後、そいつらは二手に分かれた。


 私に近い側から回り込んだ一頭が、四阿のテーブルに置いてあるサンドイッチを、首を伸ばして取ろうとする。女性の方が慌ててサンドイッチを持って「いやー!」とか言いながら鹿から遠ざける。


 その刹那。


 反対側から回り込んでいたもう一頭が、女性の背後から首を伸ばして、手に持ったサンドイッチを「ぱくり」と咥えて持ち去ってしまった。


 なんて頭のいい連中。


 と思ったのだが、サンドイッチを咥えた一頭は、おとりになったもう一頭にサンドイッチを分けることなく、走り去ってしまった。


 おい。


 呆然とするおとり役のもう一頭。サンドイッチを咥えた一頭ははるか遠くへ走り去ってしまい、追いかけるにはもう遅い。どうも事前打ち合わせと違う行動をとられたようだ。裏切られたな。

 で、その裏切られた一頭が、突然私の方を向いて、近寄ってくるのである。

 私の目の前に顔を突き出して、鼻を鳴らしながらサンドイッチを要求する。


「いや、何も持ってないよ。弁当はもう喰い終わったからね。」


 両手を開いて挙げてみせると、意味が分かったらしく、うなだれてしまった。

 そして、私の靴の上にどかっと座り込んで背中を向けた。


「撫でれ。」


 八つ当たりである。


 ◇


 仕方ないので撫でてやる。


 奈良公園の鹿を撫でたことのある人は知っているだろうと思うが、鹿の毛は太くて固くてごわごわで、犬猫みたいに撫でてもあんまり気持ちよくないのである。ブラシかなんかを思わせる感触だ。

 まあでもしょうがないか。こいつもこうでもしてもらわないと腹の虫がおさまらないのだろう。

 しばらく撫でてやる。ヒルやダニがついてると嫌なので、一応チェックしながら撫でてやる。


 撫でてやると、気持ちがいいらしく、顔をこっちへ向けて「ブフン。」と息を吹きかける。

 お前、口臭いぞ。


 ◇


 さて、そろそろ昼休憩が終わる。委員会の会場に戻らねば。


「はい、もうおしまいだよ。」


 そう言うと、意味が分かったらしく、雄鹿は立ち上がってどこかへ去っていった。

 お礼は言わなかったな。


 ◇


 以上、奈良公園での話である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
奈良公園のシカ、人慣れがすごいですものね……良いのか悪いのか(笑) 鹿の毛は確かにごわごわしてますね~。たわしみたい。鎧なのかもとも思えます。 そして、大阪では今その鹿が、話題になっていました。 鹿(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ