魔王の玉座から見た世界救済
『魔王、ここまでだ!』
――ハッハッハッ!
――よくここまで来たな勇者一行よ!
勇者一行と魔王が相見える。
世界の命運を懸けた死闘が今、始まる!!
あ、どうも魔王が座っている玉座です。
そうです、すっごい禍々しい雰囲気を醸し出してるやつです。
『よくも俺の故郷を、たくさんの人達の命をぉぉぉ!』
――我が魔王軍の精鋭である四天王を倒したその力で、我を打ち倒してみよ!
先月に現代で非業の死を遂げて、異世界転生した感じです。
女神から能力を貰って転生したんですけど。
勇者が死んだらタイムループってやつだけど、俺勇者でもないし終始関係ないんですよね。
――そんなものか勇者の力とやらは!
――我の本気の力を使うまでもないわ!
『まだまだぁぁ!!』
特にする事ないし、魔王にただ座られるだけなんで。
餓死とか刺されて死ぬとかないんで、それは逆に嬉しかったです。
つまんないかって?
そりゃあ、暇ですよ。
だって、日中は魔王が座ってますもん。
でも魔王がご飯食べにいったり魔王が視察に行ったりしてる時は結構面白いですよ。
――最強の魔王である我に傷をつけた事、光栄に思うがいい!
――まぁ、一切効かないがな!!
魔王には家族がいるらしいんですけど、家では尻に敷かれてるらしくて、威厳が全く無いらしいんですね。
この前、部下のグレムリンが家に忘れ物を届けに行ったそうですけど、そん時、『母ちゃんゴメンよぉ!』って泣きながら土下座してたらしいんですよ。
目にたんこぶとかアザとかすり傷とかしてて、まぁ…ひどかったそうです。
『魔王よ、これならはどうだ!』
『魔法使い、僧侶、騎士の力を合わせた奥義だぁぁぁ!!』
勇者も勇者でヤバいんですよね、これ。
勇者以外のメンバーは全員女なんですけど、偶然じゃなくて勇者が望んだそうです。
もちろん三股してて、それ以外にも街に入るたびに町民とか助けたエルフとか、挙げ句の果てには占いのオババにも手を出したんです。
勇者の動向を監視してたサキュバスも流石にドン引きしてました。
絶対、パーティメンバー以外の力の方が大きいですよ。
――くっ、まさかここまでやるとは…
――そろそろ本気を出してやろう!
魔王って思ったより人望が無いです。
1日あたりの報酬が少ないくせに、事務作業などのめんどくさい作業を四天王とかに押し付けてました。
なんていうか昭和の上司ですね。
前世の会社にもいたんですけど、教育っていう名目で色んな事してたんですよ。
魔王も同じで、上からただ指示するだけなのに自分の上手いようにいかないと不機嫌になって近くにある皿とか杖とか投げたり、サキュバスとかに『今日の格好エロいね』って言ってケツ触ったりするセクハラおじさんです。
嫌な上司ですよね。
部下たちも近日中に別の課に移動しよっかなって話ばかりしてました。
しかも「週休2日制」とか宣っといて、実際はそれよりも少ない休みで残業とかも強制してますし。
ブラックもドブラックですよ、魔王城。
『これは、女神様から頂いたお守り!?』
『力がみなぎってくる…!』
『これで終わりだ魔王!!』
あぁ、思い出した!1つ面白い話があるんですよ。
さっき勇者が色んな奴に手を出してるって話をしたんですけど、魔王の1人娘にも手を出してるんです!
しかも魔王の娘だと知ってた上で手を出してるっていう話で。
魔王の娘は完全に惚れちゃってて、でも勇者は利用するだけの道具とかほざいてるんです。
魔王って言えども娘には甘いんですから、魔王軍の資金とか黄金とかを娘にこっそりあげちゃってるんです。
それを、勇者に貢いでて。
それで、現在の魔王城の資金は底をついてます。
いやぁ、世も末ですよね。
『やったか!?』
――この姿を見せたのはお前が初めてだぞ、勇者!!
――これで貴様も終わりだ!!
で、こっからなんですけど。
さっき監視してるサキュバスがいるって言ったじゃないですか。
当然、この事に気づいてて相当焦ったそうです。
勇者の事を研究して、勇者のタイプに変身して近づいたそうです。
結論から言うと、勇者はそのサキュバスに貢いでます。
勇者も転生してきたんでしょうね、まぁ…デカいお姉さんが好きなんだそうです。
勇者には最悪な欠点があって、金遣いが荒いんですよ。
ゴールド数枚っていう話じゃなくて、黄金のネックレスとか服とか…最終的には家をあげたっていう。
もちろん、勇者のポケットマネーじゃないですよ。
王国のカネです。
姫とか色んなツテを使って、金かき集めさせてるそうです。
ナニコレ?
異世界小説だとしても、もっとマトモですよ。
『これが最終奥義だ!』
『終わりだ、魔王!!!』
王国もカネがないそうで、近々勇者を追放するってウワサがあるほどです。
王国だけじゃなくて貧困になる村とかが急激に増加しました。
監視してるサキュバスはどうなったかって?
貧困で困ってる村とかに食料品とか衣服を配る活動をしているそうです。
そもそも、魔王と勇者の闘いはここ数年で始まったらしいです。
先代魔王は平穏を好んでたそうで、人間と友好的な活動をしていたそうです。
実際、王国も仲良くしようという人が多かったらしいです。
彼を多くの者たちが慕ってました。
でも、病で先代が死んで今の魔王になると状況は一変しました。
突然、戦争をするとか改革をすると宣言したんです。
自分なら先代ができなかった世界征服できると言って。
転生してきた勇者も、俺なら魔王を打ち倒せるとか言って。
結果はね、見ての通りなんですけど。
結局、意味のない闘いをけしかけて、望んでない人々が死んで、不幸な人がどんどん増えて。
まぁ…そんな訳で、何が言いたいかって言うと――
――ぐわぁぁぁ!!
――おのれ…勇者め!!
――お前も道連れだ!!!
『なに!?』
『くそぉぉぉ!!』
[自分の事ばかり考えて行動すんなクソったれ。]
魔王、勇者…死亡。
勇者と魔王の闘いの後、人々とモンスターは手を取り合い、仲良く平和に暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。




