表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

テイクアウト

作者: 蒼空 秋
掲載日:2025/12/19

「やっと着いた~、あ~疲れた。それに熱いし」

 朝一番で王都を出たのに、テーベ村についたときは既に正午をまわってた。真夏の太陽に照らされて、汗だくの助手のサーシャはそうつぶやいた。

「ノートンさん、お腹すきました~」

「そうだな、路銀は心もとないが、とりあえず何か食べよう」

 だがお昼時であることもあってかどの店も客でいっぱいで、入ることができなかった。

「どうしましょう、ノートンさん。このままだとランチタイムが終わって、お店がしまっちゃいます」

「仕方がない。これお使うか」

 俺は鞄からランチボックスを取り出す。

「ランチボックスだ~、でも空みたいですけど?」

「ここに料理を詰めてもらうんだ」

「でも、このお店はテイクアウトはできないみたいですけど?」

「これは〝強制テイクアウト・ランチボックス〟といって、なんでもテイクアウトできるようになる魔法具なんだ。

 俺はランチボックスをもって、店の給仕と交渉する。アイテムの力のおかげで、通常の2割増しの値段を支払うことで、テイクアウトを承諾してくれた。

「よかった~」

 おいしそうにステーキが挟まったサンドイッチと冷製スープを食べるサーシャ。

「おかげで路銀が底をついてしまったな」

 あの店でテイクアウトしたのは失敗だったかもしれない。値段を確認してからにすべきだった。

「まあこれだけの街だ。何らかの仕事があるはずだ。少し、周ってみよう」

 こういう街には、俺のような魔法具を持った旅人相手の仕事があることが多かった。

「あ、あそこに仕事の立札があります。行ってみましょう」

 とある家の前に仕事募集の立札を見つけた俺達は、仕事の内容を確認する。

『この家に住まう霊を浄化してほしい。報酬は1000ゴールド』

「れ、霊の浄化!? こわい~!!」

「だが報酬はいいな」

「ほんとだ。でも怖い、やだ~」

「とりあえず、中に入ってみよう」

「え~。ああ、まってくださいノートンさん」


「私がこの家の住人のハドソンと申します」

「アイテム商人のノートンです。まず本当に霊がついているか確かめささせてください」

「もちろん、お願いします」

 俺はカメラを取り出して、周囲の写真を撮る。

「なるほど、確かにこの家には霊がいるようです」

「なんでわかるんですか?」

「これは〝写っちゃうんです〟という名前の、霊を映すことができる心霊写真機です。ほら、ここに映っている」

「きゃ~!!なんで私の肩に!!」

 写真を見るとサーシャの肩に、青白い女の影が映っていた。

「とりあえずこの塩をまいてみるか」

「それは、清めの塩ですか?」

「いや、携帯用の食塩だ」

 長旅では塩が不可欠なので、持ち歩いていたのだ。

「……やはり、効果はないか」

「そりゃそうでしょ」

「この十字架も、効果ないな」

「クンクン、ちょっと臭いけど、何かの魔法具ですか?」

「いや、ニンニクを十字の形にかたどっただけだ」

 ニンニクの十字架で効果か倍増するかと思ったが、そうでもないらしい。

「そもそもこの霊、吸血鬼じゃない気が……」

「この手の霊を浄化するには正教会の聖塩をまくのがいいが、教会があるのは50キロくらい先だ。取って戻ってくるとなると往復100キロか」

「戻るなんて嫌です。塩とか重いし、外も熱いし」

「路銀も尽きたから、今夜は野宿だ。夕食はニンニクの塩焼きだけでいいか?」

「絶対に嫌です! 美味しいもの食べて柔らかいベッドで眠りたいです」

「仕方がない、この手しかないか。

 サーシャ、一人で除霊を行いたいから、少し家の外で待っていてくれ」

「はい!」


「昨日はふかふかのベッドで眠れたし、美味しいご飯も食べられた。これで涼しかったら最高なんだけどな~」

「まあな」

「あと、この道でいいんですか?」

「教会がある街に寄って行くから、この道でいいんだ」 

 俺はランチボックスを抱えながら、サーシャの質問に答える。昨日は大変だったが、依頼をうまくこなせてよかった。

「おまけにランチボックスにお昼の準備まで万端だし。どんなお弁当なのかな?」

「ああ!」

 驚く俺を無視し、サーシャはランチボックスを開く。

「あれ、空ですよ。お弁当じゃなかったんですか?」

「開けてしまったか」

 と俺はため息をつくと、怪訝そうな顔をするサーシャの姿を写真に収める。

「除霊に成功したんじゃない。持ち帰って教会で除霊するつもりだったんだ」

「へっ!? じゃ、じゃあランチボックスに入っていたのは?」

「……昨日の霊だ。今はサーシャの肩についている」

 写真を見せると、サーシャの片には青白い女の影が映っていた。

「きゃ~、どうして言ってくれなかったんですか!」

「いうと怖がると思ってな」

「しかもなんで私の肩にばっかり!」

「気に入られたのかもな。まあ、道中涼しくなって良かったと思おう」

「やだ~! お化けをテイクアウトなんて! 寒い!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ