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②-3 昔の俺は…

自分を助け、逃がしてくれたお姉さんの元に颯爽と駆けつけてピンチなら助ける!そんなシュチュエーション主人公見たいじゃん!なんて軽い気持ちで行った俺の目に飛び込んできたのは、背中を槍で刺されたお姉さんの姿だった。

こんなヤバいことになってるなんて思ってもみなかった。俺が戻って出来ることなんて何も無いのに、でも助けなきゃ、とにかく話しかけて注意をこっちに向ける。


「妖火獣剛腕大猿(ごうわんたいえん)


お姉さんの呼び出した炎のゴリラが木崎を殴り飛ばした。


「え?」


そのゴリラに自身に刺さった槍を抜いてもらうお姉さん。痛い痛い痛い絶対痛いよあれ。

そんなお姉さんと目があった、何かを呟いた後疲れた顔で苦笑いをしながら手招きをしている。

あっ俺足震えてる…けどゆっくりでもお姉さんに近づいた。


「大丈夫ですか?」


大丈夫なわけないけど聞いた。声が震えてる…情けない


「えぇまぁ見た目ほど辛くは無いから安心してちょうだい?無理かしら?」


俺は手で押えているお腹に視線がずっと行ってる事に気付いた。顔をみたら冷や汗を浮かべながら笑ってくれている。


「早く逃げましょ!?俺背負いますよ!早く病院にいか……」


俺の言葉を遮るようにお姉さんに手を向けられた。


「本当に大丈夫なの、それよりもうすぐ木崎くんが立ち上がってくるわ」


そうだ!木崎!あいつぶっ飛ばされた後どうなった!?

飛んだ方向を見ると大の字で倒れてる木崎が見えた。あれ、生きてるか?あのパンチの勢いは凄まじかった。生きてても気絶はしてるんじゃないだろうか?


「立てるんですか?あれくらって」


「えぇ、彼は待ってるのよ」


「何を?」


「健人くん、貴方が戦う準備が整うのをよ」


へ?


「へ?」


戦う!?俺が?


「さぁ今からあなたは主人公になるの」


イタズラっぽく微笑みながらお姉さんは意味のわからない事を言い出した。


「一体何を言ってるんですか!?」


本当に何を言ってるんだ、主人公?いや確かに主人公っぽい事出来るかもって戻ってきたけど?


「混乱するのは解るわ、でもよく聞いて貴方(あなた)は……」


そこまで言ってお姉さんは止まった何かを少し考えた後


「いえ、ごめんなさい説明は今度ゆっくりするわ、まずは目を閉じて」


「えっ!?いや、あの」


「大丈夫、私の事を信じてゆっくり目を閉じて」


お姉さんの真剣な眼差しに少し安心した。俺はゆっくり目を閉じた。


「深呼吸をしながら聞いて」


「はい」


ゆっくり息を大きく吸った、吐いた、


「貴方は昔の自分を思い出しなさい、そう…かつて冒険が大好きで勇者を名乗っていた頃の自分を」


何をさせられてるのか少し疑問に思ったけど言われた通りに思い出そうとした。昨日の魔王城から今朝の夢で少し思い出した昔の自分を。


「貴方は忘れていたかもしれない、上手く思い出せないかもしれない、けどあの時の…勇者であった健人をしっかりイメージして」


なんでお姉さんが昔の俺の事を知ってるんだ?違う今は集中、集中昔の俺、


『ゆーしゃ健人パーティー!冒険にしゅっぱーつ!』


昔ばーちゃん家に泊まりに来ていた時、俺はよく冒険に出かけていた。なんにも無い田舎、俺には新鮮だったなでもそれがなんで冒険なんて、えーーーと確かそうだ、ばーちゃんもじーちゃんも畑仕事してて暇だったから1人で遊びに出たんだ、それで男の子2人と会って友達になったんだ。顔は……思い出せない、それで教えて貰ったんだ。


『なぁ!お前見ない顔だな一緒に遊ぼうぜ』


『この白い線からはみ出したら負けなんだよ!』


ぼんやりとしか思い出せないけど元気な男の子が2人笑顔で白線の上に乗って遊びを提案した。


『落ちたらサメに食べられちゃうんだよ』


大人しそうな男の子も白線の上に乗ってそう言った。


『サメ?』


『そう!白線から落ちたら海なんだ、人喰いザメがいっぱい泳いでて落ちたら食べられちゃうだぜ!』


俺が居た街は歩道と車道の間には柵があるしそもそも歩道がとても広い。こんな道路で遊ぶなんて事はしなかった。危ないんだろうけど視界は広いしそもそも車も滅多に走ってない、田舎だからできる遊びなんだろう。


『面白そう!』


それで白線を渡りながら散歩してたんだ。気の強そうな子が先頭、落ち着いた子が続いて俺は2人を見本にしながら進んだ。


『いいね!いい感じ!落ちないじゃん』


今となっては余裕だけど当時は落ちないようにって意識するとなぜか余計にふらついた。気持ちのいいそよ風がとても強く感じたんだ。


『うん、すごいね』


2人は時々振り返って俺の事を気にしてくれたり声をかけてくれた。褒められると調子に乗ってしまう。


『こんなの簡単だよ!』


自慢げな俺を優しい目で見守ってくれてた気がする。


『そうかー?おっとーここで海は終わり!』


道の途中で初めての人喰いザメのエリアは終わった。

この道は民家が集まっていた所だった。この先は周りが田んぼで周りが開けていたんだ。


『ここからはねー天空の橋なんだよー』


大人しそうな男の子、そう言えば眼鏡かけてたっけ?が教えてくれる。


『横からの風に気をつけろよー?後デッケェ鳥が襲ってくるかもよ?』


元気な男の子は俺を脅す様にいたずらっ子の様に言った。


『わかった!』


3人並んでゆっくり進んだっけ。


『お前凄いな!初めてなのに1回も落ちてないんじゃね!?』


『凄いよ、僕初めての時はフラフラしちゃったもん』


『そうかな?へへっ』


『そう言えばお前名前は?』


『けんと!!』


『けんとか!よろしく俺は〇〇〇』


『僕は〇〇〇けんとくん改めてよろしくね』


名前、思い出せない……


『よーしけんと、ここからは先頭だ!』


『場所変わる時は降りていーよ』


そう言われて初めて先頭に立ったのは魔王城こと白川さんの家が見えて来た時だった。


『この先に魔王が住んでる家があるんだ』


『そこの前の横断歩道…魔王城への道がボロボロで行くの難しいんだよ』


『へ、へー』


『だからまずけんと挑戦して見てくれよ!』


『周りはマグマだけど落ちても僕が居たら復活できるよ』


『あっ〇〇〇それはまだ内緒だって』


2人でなんかコソコソ話し始めた。


『よく分からいけどここ?』


そこは昨日少女に出会ったボロボロの横断歩道。魔王城の前だという事はこの時初めて知ったんだ。


『そうだ!』


『頑張ってね』


あの頃は途切れ途切れの白い部分がすっごく離れて見えた。


『怖い、』


『初めてだもんな、でも大丈夫俺たちが見てるからよ』


この時初めて現実と妄想がはっきり融合して見えたんだ。黒い部分がマグマに見えた、白い部分はマグマから生えてる小さな岩の足場。

それで俺は唾を飲み込んで、覚悟を決めた。


『行ってくるよ!』


『頑張れ!』


『頑張って!』


振り返った時の2人の笑顔にものすごく勇気を貰った気がした。なのに、なんで顔は思い出せないんだ。


最初の一歩が怖かった。

踏み外したらマグマに向かって真っ逆さまだ。

緊張する、怖い、汗で手が濡れる、それだけ集中していた。


『頑張れ!』


『頑張って!』


2人の笑顔の激励は俺に勇気をくれた。


『はっ!』


俺は跳んだ、


『いいぞ!』


『その調子だよ!』


2人の声援は聞こえている、けど返事をする余裕はない。

一歩また一歩跳んだ、足元を見るとかなりの高さに感じた、ここはただの横断歩道じゃない、マグマの上の小さな足場。

…思い出した俺は昔…妄想と現実の境が曖昧になっていたんだ。ハッキリと世界が変わったそれは昨日の出来事と同じくらい。


『ラスト!』


『あといっぽ!』


あと一歩跳べばゴール、でもその距離が絶望的に遠く感じた、


『はぁはぁはぁ』


集中、集中、集中、跳べる!……だめだ怖い


『けんと!』


『けんとくん!』


『大丈夫だ!お前なら行ける!』


『ここまで来れたんだもん!』


2人が俺の1つ前の足場まで来てくれていた。2人の顔と声で俺はまた安心して、それで……


『よーいっしょおぉおおおぉ!』


『いやったあぁぁ!やったな!』


『凄い、凄いよ!!初めての1回で出来るなんて!』


俺は跳べたんだ!


『初めてでゴールなんてすっげぇよ!俺もまぁ2回くらいで出来たんだけどさ』


『えー〇〇〇それは嘘だよぉもっとやったじゃん僕たち』


『それは〇〇〇が来れなかっただけだろ?』


『はははは、2人のおかげだよ2人が応援してくれたから俺は跳べたんだよ』


『いや、けんとがすげぇんだよ!』


『うん!そうだよ、僕なんて10回以上かかったんだよ?』


2人に褒められると照れるな。3人でぴょんぴょん飛び跳ねながら興奮していた。


『そうかなぁ?ありがとう』


『あーあー、1回でクリアされたら認めるしかないな』


『そうだね』


『何を?』


『今からけんとは俺たちのリーダーで勇者だ!!』


『え!?俺が勇者?』


『うん!この魔王城に来れるのは勇者とその仲間だけなんだよ!』


『今までは俺が勇者だったんだけどなー仕方ないから俺は戦士ね!』


『あっ僕は魔法使いだよ』


『これからよろしくな!』


『たっくさん冒険しようね!』


2人が手を差し伸べてくれた、それで俺は握手をした。この時俺は、


「勇者になったんだ」


2人の顔はまだぼんやりとしか思い出せないけど確かにあの時俺は勇者として認められた。


「思い出したのね?自分が勇者になった時のこと」


お姉さんの声がして目を開けた。お姉さんと目が合った。ふっと視線を逸らしてしまった。


「思い出しました、その後のこともぼんやりと沢山あいつらと冒険したんだ、なんでこんな楽しい思い出忘れてたんでしょうか」


そう、思い出せない事の方が多いけど、この思い出はとてもとても大切な物だったはずだ、なんで忘れ出たんだよ、俺の宝物のはずなのに…右頬に暖かい液体がスっと流れたのがわかる。思い出を思い出して泣いてるなんてお姉さんに見られたくなかった。


「大丈夫、またしっかり思い出せるわ」


そう言って俺はお姉さんに抱きしめられた。


「ちょっ!ちょっと何するんですか!?」


つい驚いて突き放してしまった。


「ふふふ、ごめんなさいね、つい」


いたずらっぽく笑うお姉さんは可愛かった。


「ねぇーーーーえ!終わったー?そのやりとりー!!」


木崎の声だ!あいつ起きてたのかよ!?どれくらい時間たったんだ!?


「うるさいわね!もうちょっとだから待ってなさい!」


「もぉーはやくしてよー?」


木崎は手を頭の後ろに組んで地面にドサッと座った。


「健人くん、今から貴方は木崎と戦うのよ、そしてその準備をするのを彼は待ってる」


「え?どうやって?おれ、お姉さん見たいに魔法も使えない、木崎見たいに武器もないんだよ!?」


「大丈夫、健人くんの戦い方は健人くん自身が1番よくわかっているはずよ、さぁもう一度ゆっくり目を閉じてイメージしなさい、勇者だった頃の自分を」


理解なんてまったく出来ていない、でも今は信じるしかない。流れに身を任せる。


「イメージをしたら一歩踏み出しなさいそれが貴方がこの世界の主人公になる第一歩になるわ」


俺は言われるがまま一歩を踏み出した。


「さぁ目を開けなさい、勇者健人!!貴方の新しい冒険が今始まるの!」


俺の新しい冒険、その一歩目で踏んだものはあの時の冒険の始まり道路の白線だった!


「あっはーーー!姫様が守る奴だからもしやって思って待ってたけど、やっぱり君が主人公だったか!さぁ聞かせてくれよ君は一体何者なんだい?」


木崎の問いかけに自然と言葉が出てきた。


「俺は真田健人!!勇者の健人だぁ!!」


全身に力が満ちた!その時俺の体を光が包んだ!!


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