②-2 昔の俺は
突然の再会になった昨日ぶりの美人のお姉さん。なんかめちゃくちゃ運命を感じるけど、ラブロマンスとかにはならないだろう。だって担がれてるもん肩に。
「黙ってなさいって言われたんですけどお伝えします!今は走ってる方向には多分木崎の仲間が待ってますよ」
そうさっき木崎に話しかけられた時居たもう1人は追って来なかったからただ待ってるって事は無いかもしれないけど居る可能性が高い。
「そう、やっぱり水嶋くんも来てたか!もう、昨日から相性悪いやつばっかり!!」
「そんな事言って逃げないでよ姫様ー」
お姉さんとそこそこ距離が開いていたはずなのに木崎は並走してきた。
「妖火獣旋群蝶!!」
お姉さんが木崎に向かって左手を掲げた、手のひらから小さな火球が沢山勢いよく出てきた。それは直ぐに蝶々の形へと変わる。アゲハ蝶の様な全身が火で出来た綺麗な蝶々
「ぼたんたち!時間稼いで、旋牢火粉」
木崎の周りを蝶々達が囲み渦を作って上へと羽ばたいたその度に出る鱗粉は火の粉でありやがて炎の渦へと変わった。
「あいつは直ぐに出てくるわ、けど目くらましにはなってるはず、健人くんはとにかく逃げて」
そう言ったお姉さんに俺はまた投げられた。
「いってぇ!」
すごく痛い、当たり前だアスファルトに投げ捨てられたんだもん。あれ?そういえば今は前みたいに世界が変わってない、ゴツゴツした岩場でも花畑でもなく、アスファルトに叩きつけられた。あっ肘擦りむいてる。
「早く逃げなさい!」
もうなんなんだよ昨日から、訳の分からない事ばっかり、今日なんて武器持った人に襲われて、今命狙われたんだよな?それでお姉さんに助けて貰って投げられて、もう、本当にわからない、肘痛い、腰も痛い、怖いし、逃げよう。
健人は逃げ出した。
「上手く逃がせた?そろそろいーいー?」
炎の渦の中から叫ぶ問いかけ
「私も逃げるからまだ中に居てくれ無いかしら?」
「激流槍ケートス!!」
炎の渦の中からまた叫び声が聞こえたそして大きな水流の渦が地面から旋牢火粉を飲み込むように巻き上がった。空に舞い上がった水流の渦は弾けて辺りに雨の様に降り注いだ。
「姫様に逃げられるのは嫌だなーちょっと久々に本気で戦いたいもん」
水の渦が解け降り注ぐ中から現れた木崎は、頭を振って水を振り払い向き直って笑顔を私に向けた。
「ケートスは知ってるよね?姫様?」
「えぇ、勿論、昔ボコボコにされて悔しくて悔しくて頑張って創ってたものね」
激流愴ケートスはその名の通り激流を操る槍、一振で波を起こす水の槍、かつて木崎くんが私を倒すために創った槍、火には水ってね、相性最悪。笑顔で余裕ぶって煽ってみたけど…キツイわね
「妖火獣双子狐!」
私の手のひらに火球が2つ現れる、それは地面に落ちて狐の形に変わる
「行くよ、イナリ、おあげ」
この狐達は私の妖火獣の中でトップクラスに頭が良く、コミュニケーションをとる事に長け、連携して戦える。いい狐達だ。
「でたなぁコンコンズ!」
木崎は楽しそうに笑っている
「変なあだ名を付けないで…」
出来るだけ会話で健人くんが逃げる時間を稼ぎたい、そんな私の気など知らない木崎くんは私の話に聞く耳持たなかった。
「へっまとめて鎮火しなぁ!!大波ぃ!!」
大きく体を右側に捻り放つ大波はその名の通り大きな波で敵を押し潰す技、そして次の技への繋ぐための目くらましの技…
「妖火獣盾亀!燃ゆる亀甲盾」
波を防ぐように炎でできた大きな盾を目の前に出しそして手足、尻尾に炎の揺らめかし纏う亀が私の左腕に抱きつく。
「耐えてください!!おきな!」
私は反転し背後から放たれた木崎くんの突きを受け止めた。
「目くらましをして背後から一突きなんて、ベタでわかりやすい不意打ちね?」
「わかりやすかろうが実際これが効くんだよね!まぁ受け止められちゃったけどね?」
攻撃を防がれ硬直をしている隙をあの狐こ達は見逃さない。
「いったいなぁ!」
木崎の両腕にイナリとおあげは勢いよく噛み付いた。
木崎私と距離を取った、同時に私も飛びのけ距離を取って、
「おきな!かましてください!!」
おあげとイナリを振りほどこうとしている木崎に左腕を向ける、おきなの手足、尻尾から大きく炎が吹き出し、飛んだ。
「ぐぅお!」
木崎はおきなの頭突きを腹にくらい、大きく吹き飛んだ。
そして瞬間離れていたおあげとイナリの追撃、2匹とも空中に跳びあがり回転しながら木崎に向かって落ちていく。
ドン!と土煙と火柱があがる。しばらくは起きれないはずだ。今の内に逃げる
「妖火獣!」
逃走用の妖火獣を呼び出そうと火球を作る私の腹に槍が突き刺さった。
「姫様とーった⭐︎」
振り返ると木崎がニヤリと笑っていた。
殴りたい笑顔だ。
しまったなやられた……
体が痛い、疲れたお姉さんに言われるがまま走って逃げてたけど、最近運動して無いもんなぁ息が上がるのが早い。頭も回らない、そもそも状況がよく分からないままなんだ、あーぁ萎えた。俺は走るのをやめてとぼとぼ歩き始めた。
「なにがどうなってるんだよ」
とりあえず呟いて見たけど返答は無い。
「はぁ帰ろう」
帰ろう訳の分からないことには関わらないようにしよう。
「今日は冒険の予定だったのに」
今朝玄関を出た時の晴れ晴れした気持ちはどこに行ったやら。
冒険、こんなワクワクする言葉無いよ、ロマンに溢れている。未知なるものへの挑戦。子どもの頃はなんでも冒険だったんだろうな。なんなら自分達で未知を作り出して、ルールを作って難易度上げて、楽しみながら挑戦してた。なのに今は未知を怖がり逃げようとしている。
「なんで逃げたんだ俺」
お姉さんが逃げろって言うから、命を狙われたから。なにより今起こってることが現実とは思えなかった。理由はあるけどさぁ
「なんか、腹たってきた」
そもそも何も説明してくれないで、黙りなさい、帰りなさい、逃げなさいって巻き込まれた俺をとにかく避けるお姉さん、なんか知らんけど急に命狙って来た木崎の野郎。
「戻ろう」
俺は逃げて来た方向に走り出した。
体は痛いけど、苛立ちが忘れさせてくれる。
「2人だけで、あんなのこと…あんな!楽しそうなことを!」
走ってる俺は、笑っていた。
「これこそ、冒険だろ!今戻れば俺!主人公みたいだろ」
急に現れたヒロイン、それを追う敵の登場、ヒロインに庇われ逃げ出した主人公が覚悟を決めて敵と対峙することを選ぶ、こんな最高にワクワクするお膳立てされて戻らない男の子なんて居ないよね!?
「まってろよぉーーー!いまいくぞぉ!」
こんな軽い気持ちで戻った俺の目に映ったのは、
「姫様とーった⭐︎」
俺のいる所には声は届かなかったけど、お姉さんの背中に槍を突き刺す、木崎の姿だった。
「お姉さん!!」
思わず叫んでしまった。
二人がこちらを向いた、口を動かしているけど何を言ってるか分からない。
お姉さんを助けなきゃ…でもどうやって?やっぱ逃げればよかった?ここに来てそんな事考えるな、今、今出来ることを!
「木崎!!お前の狙いは俺じゃないのかよ!?かかって来いよ!!」
ひとまず、俺に意識を集めて、お姉さんにこれ以上危害を加えられ無いように…え?
「え?」
突如大きい炎のゴリラが現れた、そのゴリラは木崎を思いっきりぶん殴った。木崎は、飛んだ。
やられたわね…背中から腹に貫通した槍を握ってみたけどちょっと力は入らない、抜かれて追撃されたらしんどいわね…
「あなた吹き飛んでなかったかしら?」
「へっへーん変わり身の術ってやつぅ?やっぱ不意打ちって効くんだよねぇww」
腹立つ話し方するわねこいつ本当ぶん殴りたいわ
「お姉さん!!」
その声を聞いた私と木崎はその声の主に注目をした。
「なんで戻ってきたの!?」
「はははは、あいつ戻ってきたよ!あー残念俺の狙いは姫様と戦うことでさぁ!君じゃないんだよね?ね?姫様?」
「妖火獣剛腕大猿」
私の妖火獣の中で一番今したいことを叶えてくれるのはこの子だろうと呼び出した。
「ごめん木崎くん、本当にぶん殴りたかったのその顔、ゴクウ悪いけどこれ抜いてくれる?」
衝撃で槍を離しながら吹き飛んだ木崎くんに謝りながらゴクウに槍を抜いてもらう、いや目を背けながらゆっくり抜かれるのは辛いわ、あなたそんなところ繊細なの?
「ごめん、一気に抜いて?」
「ウッウホォ…ウッホォ!」
両目をかっと開いて覚悟を決めた顔をしたゴクウは勢いよく槍を引き抜いた。握られた槍は霧散した。
「ありがとう、はぁ痛かった」
一連の流れを見て呆然としている健人くんと目が合った。
「流石に説明してあげないとね」
もう、隠しておけない状況になってしまったものね。
そろそろ物語が動き始めるのでよろしければお付き合いください。




