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①-2懐かしさと…

『よぉ!ゲンキ、元気か!?』

子どもの頃の俺は玄関前の柵越しによく声を掛けていた。バゥワゥ!!ガウゥゥと吠えられ唸られても柵越しだから怖くない。むしろこれが逆に仲良しのじゃれあいだと思って居たんだ。


『ゲンキにちょっかい出すのをやめなさい。あなたみたいな駄犬の事賢いゲンキは嫌いなのよ。』


『うっるさいなぁ俺たちは親友なんだよなぁ?ゲンキー?』


バゥワゥ!!


『あははちがうってー』


いたずらっぽく笑うその子の顔をぼんやり思い出していた。誰だっけなぁ仲良かった気がするんだけど思い出せない。

彼女の事は思い出せないけど重要なことの気がした。

けど思い出してしまったのは俺を担いでいる女性が言っていた、余計な事だった。


『魔王の手下〜?そんなの居ないよ。魔王は一人で最強なんだよ!!』


『居るもん!最強の魔王の番犬ケルベロスよ!3つの首で駄犬なんてひと口で食べちゃうもん』


『3つの首なのにひと口でー?』


ニヤニヤしながら揚げ足をとる俺は普通に糞ガキだった。


『うるさい!首のひとつは炎を吐くわ、もうひとつはヨダレがマグマなの!!最後の口でたべちゃうんだからぁ!』


なーんて勝手に設定作ってたなぁ。

過去の事を呑気に思い出して現実逃避をしている俺の目の前には、ダラダラヨダレを垂らしている首、垂れ落ちた先の地面はジュゥッと音を立てながら溶けている。

口に炎を蓄えてハッハッという息とともにボッボッと炎が漏れている。そしてもう1つの首はじっと静かに俺を睨んでいた。


「あなた!?また余計な事を思い出したわね?ケルベロスが強化されて言ってるじゃない!もう素数でも数えて大人しくして!」


お姉さんは焦っている。まぁそうだよなこんな化け物に襲われたら焦るよなぁ。


「あのーー、あれってゲンキですかね?流石にもうゲンキは亡くなってると思うんだけど?」


そう、ゲンキは俺が子どもの頃には成犬だった寿命を考えると生きているはずが無い。


「まって、あと少しだから、あと少しで花園に!!」


俺を担いだままで全力で走る、お姉さんの言葉、花園。あーまた思い出した。花園はみつ屋の事だ。みつ屋は店主のじぃさんが大切にしてた花が沢山飾っていた。それをセーブポイントって言ってたんだよなぁ。


「あと少し!ケルベロスには効果は薄いけど足止めにはなるでしょ!」


お姉さんはそう言うと左腕を天にかざした。


「お願い!力を貸して、妖火獣(ようかじゅう)双子狐(ふたごぎつね)!」


お姉さんの手のひらに野球ボールくらいの火が2つ現れた、


「イナリ!おあげ!足下を狙って」


そう言いながらお姉さん地面に火球を投げた。

投げられた火球はボッ!と弾け狐の形になりコーン!と雄叫びを上げるとケルベロスの足に向かって走り出し噛み付いた。


「えぇぇえ!何それかっこいい!」


魔法だ!召喚獣だ!凄い!かっこいい!感動した!


「あなた、ちょっと余裕過ぎないかしら!?」


ケルベロスは噛み付いた狐なんて全く気にもとめずに走りを止めない。


「イナリ、おあげ、お願い!」


お姉さんの声に反応したようにイナリとおあげは爆ぜた!!

ドン!大きな火柱がケルベロスを包む。


「すげぇ」


大迫力の爆発に口をぽけーっと開けて見ていた


ガオォォォォウ!!

ケルベロスの叫びが聞こえた。そして土煙が晴れると現れた真ん中の首と目が合った。


「あれでもダメなのか、そうかケルベロスは火属性だから同じ火属性は効果ないって事ですか!?お姉さん!?」


俺の問いかけを無視してお姉さんは速度を上げた。


ぱっとフラッシュを焚かれた様に一瞬視界が塞がれた。


「ぐぇ!」


また、投げ捨てられた。でもさっきよりは痛くない。地面が柔らかかった。


「おぉー綺麗」


そこは見事な花畑だった。

俺が投げ捨てられた場所も満開に何かしらの花が咲いていた。潰してしまって申し訳ない。


「あなた、駄犬…真田健人なのね?」


お姉さんに話しかけられた。


「あぁそうですよ。あのーその呼び方するの1人しか心当たりがないんですけどお姉さんもしかして昔一緒に遊んだ事ありますか?お名前聞いてもいいでしょうか?あと、今この状況って」


「待って、健人くんこの事は忘れてこの町から出ていきなさい。」


俺の問いかけを遮ってお姉さんは俺の両肩に手を置いて言った。


「忘れろって言われても…それに俺は」


「忘れなさい夢と思いなさい、そろそろ戻るわあなたの世界に、もうこの世界には踏み込まないでね。」


そう言って俺の肩から手を離すとお姉さんの体が炎に包まれ一瞬で消えた。


「え?」


またぱっとフラッシュが…


「ここは…」


目が見えるようになるとそこはコンビニの前だった。見慣れた大手チェーンのコンビニの前、舗装されたアスファルトの道。

俺は白線の上から降りていた。


「なんだったんだ今のは…わかんないけど、凄い体験しちゃったなぁ。」


白昼夢だったのだろうか、久々の田舎道で巻き込まれた不思議な出来事に理解は出来ないけどとりあえず戻った現実に俺は1回考えることをやめた。


「いらっしゃいませー」


店内に入ると冷房が効いていて気持ちよかった。


「ありがとうございましたー」


コンビニで昼ごはんを買う予定だったけどそんな気にもならず、チューブに入ったタイプのアイスだけ買って店を出た。

それから少しずつ手で揉んで溶かして食べながらぽてぽてと家に向かって歩き出した。


「麦わら借りてくればよかったかな」


夏の陽射しを浴びた頭が暑かった。

水筒を取り出して飲むとアイスで冷えた口が氷を入れてなかった麦茶の温さで気持ち悪い。けど甘まったるさは無くなってちょっとスッキリした。


「ばーちゃんに色々聞いて見ようかな」


ぼーっと歩いていると白川さんの家が見えてきた。

色の違う石垣の石に手を触れてみたけど何も起こらなかった。

横断歩道の剥がれかけの白い部分を跳び移って見たけど何も起こらなかった。

あの昼の出来事は本当になんだったんだろう。

空は少しオレンジ色に染まり始めていた。

蝉の鳴き声が少し静かになった気がする。


「ただいまー」


「あらおかえりなさーい」


ばぁちゃんの声が奥の台所から聞こえた。

油の匂いがする。お腹、空いたな。


「ばーちゃんただいま」


台所に顔を出してもう一度声をかけた


「今揚げてるから先にシャワー浴びてきなさい?暑かったでしょー汗、流しちゃいなさい」


「うんありがとう、いい匂いだねお腹すいたよ」


「あら、どうしたの?元気ない?熱中症になっちゃった?」


「ううん、久しぶりに沢山歩いたからちょっと疲れちゃっただけだよ大丈夫、お腹すいたもん」


笑顔でそう伝えた。


「そう?ならいいんだけど、ほらシャワー浴びてきちゃいなさい」


着替えを取りに行って、シャワーを浴びに風呂場へ、お湯に変わる前の冷水を頭から浴びながら昼の事を思い出す。わからない事だらけだったけど、楽しかったなぁと1人で笑った。

それにあのお姉さん、袴姿に明るい髪色が似合うってすごいなぁ美人ってすげぇなんて思った。あんな事があったのに思い出すのがこれってどうなんだ?顔にお湯を浴びて頭を晩御飯楽しみーって感情に切り替えて風呂を出た。

天ぷらはめちゃくちゃ美味しかった。揚げたて最高。特にしそ!庭で育ててるやつらしい。しそうまかったぁ!

部屋に戻ってガラガラと雨戸を閉めて布団に入った。最後にスマホを充電器に指すと21時だった。田舎の夜は早く寝るに限るな。

俺は目を閉じながらまた昼の事を思い出していた。

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