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①-1懐かしさと…

人食いザメが大量に泳ぐ海、怪鳥が襲い来る天空の橋、そして赤いマグマに囲まれた魔王城、そんな危険地帯を仲間を率いて先頭を行く勇者!それが俺だった、そうだった。そしてそんな事はもう忘れていたんだ…。


 目が覚めてからまずすることはカーテンを開けて、窓開けて、そして雨戸を開ける。ガラガラ、キーキーうるさい、それが目覚めの助けになる。今どき雨戸なんてある家の方が少ないよな。


 締め切っていた部屋に風が入ってくると気持ちがいい、天気もいい、ちょっと背伸びをしてから部屋を出る。少し歩くと床が軋む、階段は一歩一歩でキーキー鳴る。古い家だ。


「おはようばーちゃん」


「あぁおはよう健人(けんと)よく眠れたかい?朝ごはん出来てるけど食べるかい?」


俺は高校2年の夏休み、単身でばーちゃんの住んでる田舎に泊まりで遊びに来ている。


「よーく眠れたよ、目覚ましに頼らず起きるなんて久々だったよ。いい匂いするね食べるよありがとう」


「それは良かった。今日はどうするの?遊びに行くならばーちゃん車出してあげようか?」


よっこらしょと言いながら席を立ち味噌汁を温め直すためコンロに火をつけながらばーちゃんが聞いてくれた。

遊びに行くと言ってもそんな場所はなく車で50分くらいの所にショッピングモールがあるくらいだ。


「いやー今日はのんびり過ごしたいし後で散歩にでも行こうかな」


「散歩ったってこの辺何も無いじゃない。退屈でしょう東京から来てるんだし」


そう言いながら用意してくれた、焼き鮭、卵焼き、ご飯、味噌汁、ほうれん草のおひたし、どれも美味しそうだし、味噌汁の匂いで腹が減る日本人のDNAの凄さとゆっくり朝食を取れることに少し感動した。


「ありがとう。いただきます、いやー俺の住んでる周りどこ歩いてもうるさいからさ、静かなところのんびり歩くだけでもリフレッシュになるんだよ」


「なるほどねぇ、お昼ご飯食べる所も無いけど、どこまで行くんだい」


「昨日ばーちゃん言ってたけど、みつ屋がコンビニになっちゃったんでしょ?そこ行っておにぎりでも買ってどっかしらで食べるよ、あっ卵焼き甘くて美味しい。」


「健人は甘いの好きだったよね?おじーちゃんはしょっぱいのが好きだったから久々に作ったけど美味しいなら良かったよ。みつ屋まで行くの?遠くない?」


「あっじーちゃんに朝の挨拶してないや、行く時してこ、まぁ散歩だし」


じーちゃんは去年死んだ、今はばーちゃん1人で田舎のこの家に住んでいる。俺が泊まりに来たことを私のことを心配してるからじゃないかって思ってたみたいだけどそれだけじゃない。あのうるさい自分の街から出て静かに過ごしたかったからだ。元みつ屋のコンビニまでは徒歩1時間かかるかなくらいだ。みつ屋は昔っからある駄菓子屋だったけど今はコンビニになってしまったらしい。


「そうかい、熱中症には気をつけるんだよ、麦茶持ってくかい?水筒あるから、あと帽子、おじーちゃんの麦わらがあるよ」


「ありがとう、麦茶は貰おうかな、帽子は大丈夫。ご馳走様、美味しかったよ」


「あぁお粗末さまでした。置いといて洗っておくから、麦茶用意しとくから健人は顔洗って着替えてきなさい。」


洗い物をしようとする俺にいいからいいからとばーちゃんが変わってくれた。ありがとうと伝えて俺は洗面所で顔洗って部屋に戻って着替えた。スマホを置いていくか迷ったけど、ばーちゃんに連絡する可能性もあるしチラッと時間だけ確認した10時をすぎていてちょっと起きるの遅かったかなんて思いながら機内モードのままポケットに入れた。田舎に来たのはデジタルデトックスをする目的もあるんだ。

仏壇に線香をあげてじーちゃんに挨拶を済ませる。

用意してくれた水筒をショルダーバッグに入れて、家を出る。


「行ってきます、コンビニでなんか買ってくるのもある?」


「行ってらっしゃい。いや大丈夫よ、晩御飯天ぷらのつもりだけど、なんかおかず食べたいのがあったら買ってきなさい。」


そう言って五千円札を渡そうとするばーちゃんに、天ぷらが楽しみだから他はいいと断って俺は家を出た。

家の周りは畑やら田んぼが多く、点々と家があるくらいの本当にド田舎だ。夏なのに風が涼しくていい気持ちだ。


「くぅーーーきが美味い!」


背伸びをしながら深呼吸なんかして俺は歩き始めた。

キョロキョロ辺りを見ながらのんびり歩くと昔小学生の頃にここに来たことを思い出していた。懐かしい気持ちになりながら歩いていると、少し気になるものが見えた。


「どこの子だろ、田舎って感じするな偏見だけど」


1人の女の子が歩いていた、夏休みのはずなのに真っ赤なランドセルを背負っている。この辺に小学校はない、通うためにはバスか家族の送迎が必要なのだ。その子は黄色い帽子を被っているので低学年だろうと思う。


「懐かしい事やってんなぁ」


その子は道路の白い線をはみ出さないように慎重に歩いていた。俺もやった記憶がある。

何となく俺もその子に習って白線に足を乗っけた。

そのまましばらく歩いている時ふと思った。

女の子の後をつけながら、白線渡ってる俺って周りから見たら変質者じゃね?

焦って降りて追い越そうと思っていたら女の子が立ち止まった。やっべ気付かれたかな。


「あー懐かしい魔王城前か」


女の子が立ち止まったのは、魔王城と呼んでいたこの辺の地主の家の前だった。古い日本家屋で周りは石垣で囲われたでかい家、確か白川(しらかわ)さんだったかな。

その家の前には横断歩道があるけど古いからか車通りも少ないのにボロボロになって消えかかっている。白線を歩くためには飛び移ら無きゃだけどこれがなかなか難しい。だからこんな設定があった。


「ここは俺達が子どもの頃は魔王城って呼んでてさ飛び移って向こうに行って秘密のボタンを押すと橋が出てきて誰でも渡れるようになるって言ってたんだよ」


女の子に話しかけてみた。夏休みの高揚からか、ちょっといい所見せてお兄さんムーブをかましたくなってしまった。懐かしかったし。

女の子は急に話しかけられて振り返り俺の顔を見た。少し驚いた様な表情にやっちまったと思いながら、俺は先に行くねと伝えて横断歩道の途切れ途切れにある白い部分を跳びながら家の前までたどり着いた。


「ボタン押すからーそしたら自由に渡れるよ、君のルールと違ったらごめんねー」


そう伝えながら石垣の一つだけ色の違う石を探した。

本当に懐かしいな。押したら直ぐにここから去ろうと思いながら、見つけたオレンジっぽい石に手を添えると、


「だめ!それは罠だから!」


女の子がそう叫んだ。


「へ?」


女の子の叫びを聞いて振り返ろうと思っていたら手の触れていた石がガコッと沈んだ。


「はぁ!?」


ありえない!意味がわからない!俺はフリーズした。そして暑い!夏だからとか関係ない。今俺の目の前に広がる世界が、赤い。


「なんだぁこれーー!?」


ボコボコボコっと音がする。そう俺の目の前さっきまでアスファルト出できていた道路は無くなり、マグマの海が広がっていた。飛び移っていた点々とした白線は岩でできた足場に変わっていた。

そして…ゴゴゴと大きな音がした、溶岩の下から大きな石造りの橋が伸びてきた。


「どうなってるんだよ!これ!ドゥウェ!!」


混乱して頭を抱え叫んでいる俺に衝撃が襲った。

急に腹を殴られたような、


「なに?なに?え?誰?」


「うるさい舌噛むから黙ってなさい!」


俺は女性の肩に担がれていた。そして彼女はすごいスピードで走っている。景色がどんどん流れている。

そして目に入ったのは大きな黒い城、誰が見ても魔王城と答えそうな城だ。


「誰ですかあなたは!どこですかここ!降ろしてください!」


「うるさい!黙ってなさいって言ったでしょあんたが勝手な事するせいで面倒な事になってるのよ!」


彼女の叫びで焦りが伝わってくるが状況がなにもわからない!そもそもこの人が誰なのかも、急に異世界っぽい所に来た事も、担がれ遠ざかる魔王城をボーッと見ているしかない。


「なぜあいつが来ない?条件が整っていないのか?」


急に止まった彼女は1人で呟いて何かを考え始めた。

俺はボーッとするしか無かった、


「ぐえっ」


投げ捨てられた。


「何するんですか!!もうなんなんですかこの状況は!?」


「はぁ、あなたは何者なの?なぜ魔王城の事を知っているの?」


あら。美人。投げ捨てた俺に質問をする彼女は綺麗な顔をしていた、ワンレンの長髪は金にも見える茶色で担がれている時ふっと香ったいい匂いはきっとこの髪からだ、んー変態っぽいこれを考えるのはやめよう。


「黙ってないで、答えなさい!」


さっきまで黙ってろって言ってたのにな、


「わからないんだよ!何もかも、ここはどこであんた誰なんですか!?、魔王城って子どもの頃の妄想の話ですよ!」


「子どもの頃?」


彼女は顎に手を添えて考え始めた。


「あなたの名前は?」


「健人です、真田(さなだ)健人」


「まさか!あなた駄犬の健人!?」


駄犬だぁ?酷くない?急に……そういえば昔もこの名前で呼ばれたことあったな、確かあれは、小学生のころ遊びに来てて仲良くなった女の子に、


「なんでその呼び方を?あんたは一体」


思い出した、その子は俺達の遊びに着いてきて、


『ほら、ぼたんおしてやっから来いよ』


『うるさい駄犬!!それは罠なのよ!それは押したら魔王の手下が出てくるのよ!』


俺の優しさを無下にするやつだったなぁ。

あれ?名前…なんだっけ?


わおぉぉぉおん!

急に響き出す犬の遠吠え、


「急に、なんだ?」


「あなた思い出したのね!?余計な事を!」


急に焦りだした彼女にまた担がれた。


「なにをするんですか!?まだですか!?」


「お願いだから黙って!余計な事を考えないで!思い出さないで!」


そう言って走り出した、彼女の肩の上で迫り来る奴の顔を見て、思い出してしまった…余計な事を。

魔王こと白川さんの家にはペットのゲンキが居たんだ。名前を思い出せないあの子にはよく懐き、俺には吠え続けていた。思い出してしまったそいつの事を俺は呼んでいた。


「魔王の番犬、ケルベロスだぁぁぁぁあ!」


みつ首の犬がヨダレをダラダラ零しながら追いかけてきていた。


「だから!余計な事を思い出すなっていってるでしょお!」


彼女の叫びがこだました。

真田健人

17歳の高校2年生

身長177cm

体重68キロ

黒髪短髪

同級生の女の子10人に聞きました健人の顔はどうですか?

A.まぁイケメンと言えなくもない?

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