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蔵の奥に眠る力





大島の羽田家に戻った舞子は、すぐさま蔵へと向かった。埃っぽい蔵の中には、古びた家具や道具が所狭しと並べられている。曾祖母が使っていたという巫女の道具がどこにあるのか、見当もつかない。


舞子は、壁際の一角に積み上げられた木箱の山に目を留めた。その中の一つに、見慣れない文様が彫られているのを見つけた。手を伸ばし、蓋を開けると、中には年代物の布に包まれた、いくつかの品々が収められていた。


恐る恐る布を広げると、そこには古びた鈴が姿を現した。それは、真鍮製で、幾つもの小さな鈴が連なり、独特の音色を奏でるように作られている。手に取ると、ひんやりとした感触が舞子の掌に伝わってきた。これが、鳴海が言っていた**「鎮魂の鈴」**なのだろうか。


鈴の他に、いくつかの木製の護符らしきものと、古びた巻物も入っていた。巻物を開くと、そこには達筆な文字で、巫女の心得や、怨念を鎮めるための術が記されている。そして、その中には、**「黒い影」**に関する記述もわずかながら見られた。


『黒き影は、海門の淵より現れし、人の負の感情を食らいし存在なり。その姿を持たず、人の心に巣食い、歪んだ囁きをもって魂を惑わす。鎮魂の鈴と護符を以て、その力を弱め、真なる名を呼び覚ますべし。』


真なる名…。舞子は、その言葉に引っかかりを覚えた。黒い影に名前があるのだろうか?


さらに読み進めると、巻物の最後には、一枚の地図のようなものが挟まれていた。それは、狗ヶ岳の簡易的な地図で、特定の場所に手書きの印がつけられている。その印のある場所には、「神隠しの森」と読み取れるような古めかしい文字が添えられていた。


舞子は、これらの品々が、曾祖母が黒い影の存在を知り、それに対抗するために用意していたものだと直感した。そして、この「鎮魂の鈴」と「護符」、そして巻物に記された知識が、これから狗ヶ岳で直面するであろう困難な戦いを乗り越えるための重要な鍵となるだろう。


舞子は、これらの道具を丁寧に風呂敷に包み、携帯しやすいようにリュックに詰めた。そして、スマートフォンを取り出し、鳴海に連絡を入れた。


「鳴海さん、準備ができました。狗ヶ岳へ向かいましょう。」


舞子の声には、確かな決意と、巫女としての使命感が宿っていた。黒い影との最終決戦の時が、刻一刻と迫っていた。

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