舞子と鳴海 ③
鳴海の切実な訴えに、舞子は静かに耳を傾けていた。奈緒が再び黒い影に取り憑かれた可能性、そして雫がそれを追っているという事実。事態は想像以上に深刻だった。しかし、舞子たちには、奈緒や雫を追う具体的な手がかりが何もなかった。広大な日本の中で、二人を見つけ出すのは至難の業だ。
舞子は深く息を吐き、鳴海に尋ねた。
「奈緒と雫の行方について、何か手がかりはありませんか? 最後に二人が目撃された場所や、何か変わった様子は…」
鳴海は首を横に振った。
「それが…何も。奈緒は突然いなくなってしまって。雫さんも、私には行き先を告げずに、急いで出て行ってしまって…」
舞子の心に焦りが募る。しかし、焦っても状況は変わらない。彼女は、少しでも情報がないか、別の可能性を探ることにした。
「そういえば、以前、あなたが足の怪我をした時に、狗ヶ岳へ向かっていたと言っていましたよね。あの時、海門の手がかりを探していたと。何か、そこで新たな情報は得られましたか? 奈緒が再び黒い影の影響を受けているのなら、以前にも関係があった場所が、何かを示しているかもしれません。」
舞子の問いに、鳴海ははっとしたように顔を上げた。
「あ…はい、そうなんです。あの時、確かに狗ヶ岳で海門に関する調査をしていました。貞子さんと再会したのも、その時でしたね。」
鳴海は、脳裏に当時の状況を巡らせた。
「私が負傷してしまったので、詳しい調査はできていないんですが…ただ、狗ヶ岳には確かに、強力な霊的なエネルギーが渦巻いているのを感じました。そして、地元の人々の間では、奇妙な『囁き』が聞こえるという噂がまことしやかに囁かれていて…」
鳴海の言葉に、舞子の瞳に鋭い光が宿る。「囁き」という言葉が、黒い影の干渉を思わせたのだ。
「その『囁き』について、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか? どんな内容だったとか、どんな時に聞こえるとか…」
舞子は、かすかな希望を見出したかのように、鳴海の言葉を待った。手掛かりは一つでも多く欲しい。奈緒と雫、そして黒い影の謎を解き明かすために。