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動き出した影





鳴海の報告は、舞子の不安を確信へと変えた。


「奈緒は…数日前から連絡が取れなくて。雫さんも、どこかへ行ってしまって…」


鳴海の電話越しの声は、疲労と焦燥に満ちていた。


「私の足がまだこんなだから、探しにも行けなくて…でも、奈緒が前に言ってたんです。『貞子さんの抜け殻の力を利用する』って。あの時は、何を考えているのか分からなかったけど…まさか、本当に何か…」


舞子の脳裏に、かつてサービスエリアで鳴海たちが話していたことが鮮明に蘇る。あの時、彼女たちは「この地に蔓延る負の連鎖を断ち切りたい」と言っていた。そして、そのためには「貞子の抜け殻の力を利用する」と。奈緒は、抜け殻に残る悲しい記憶に共鳴し、自身の過去と向き合うきっかけにしたいとも語っていた。


「鳴海さん、落ち着いて。足は大丈夫ですか? まずは、あなた自身の安全を確保してください。奈緒さんと雫さんのこと、もう少し詳しく教えてもらえますか?」


舞子は、自分を落ち着かせるように、そして鳴海にも冷静さを促すように言葉を選んだ。


「奈緒は最近、少し様子がおかしかったんです。特に、サービスエリアで貞子さんの抜け殻と再会してからは…まるで何かに憑かれたみたいに、抜け殻のことばかり考えているように見えました。そして、数日前から…家に戻らなくなって…」


鳴海の言葉は、舞子の心にさらなる衝撃を与えた。奈緒が抜け殻に蝕まれて冷酷な存在へと変貌した経緯は、舞子も目の当たりにしたはずだ。しかし、奈緒は雫と舞子、そして古の巫女たちの力によって、影から解放されたはずではなかったのか?


「そして、雫さんですが…奈緒がいなくなってすぐに、何かを追うように出て行ってしまって。連絡も取れないんです。雫さんは、貞子さんの抜け殻自体は消滅したけれど、それを操ろうとしている黒い影の存在をずっと警戒していましたから…もしかしたら、その影を追って…」


舞子は、雫が貞子の怨念の抜け殻を追うために一人旅立つと言っていたことを思い出した。まさか、雫は奈緒が再び黒い影の影響を受けていることを察知し、それを追っていったのだろうか。それとも、水野姉妹が企てていた何らかの計画に、雫も関わっているのか?


舞子は、頭の中で情報を整理しようと試みた。奈緒が再び黒い影の影響を受けている可能性。雫がその影を追っている可能性。そして、水野姉妹が貞子の抜け殻について語っていた「利用する」という言葉の真意。貞子の抜け殻は消滅したはずだが、もしそれを操っていた黒い影がまだ存在し、奈緒を再び利用しようとしているのだとしたら…?


「鳴海さん、あなたは今どこにいますか? 私はすぐにそちらに向かいます。何か手がかりがあるかもしれません。」


舞子はそう告げ、電話を切った。胸騒ぎが止まらない。この失踪は、単なる偶然ではない。貞子の抜け殻が消滅した後もなお暗躍する黒い影の存在。そして、それに巻き込まれたかのような奈緒と雫。舞子の心には、新たな戦いの予感がひたひたと迫っていた。

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