第49章:ヘヨン
自分の居住区に戻ると、私はそのまま寝台に崩れ落ちた。
嗚咽が止まらない。
——抑えようとしても、抑えきれなかった。
彼の唇の感触が、あの瞬間に呼び起こされたすべての記憶が、私を締めつける。
どれだけ振り払おうとしても、消えない。
マンチュンの前では、確信に満ちたように振る舞った。
だが——
私は、今、この疑念に蝕まれている。
心の奥底では、確信している。彼が、あの人であると。
しかし、理性はそれを否定しようとする。
彼とテウォン——本当に愛したのは、どちらなの?
心が導く答えと、理性が突きつける疑問——どちらも正しく、どちらも間違っているように思えた。
こんなにも、すべてが曖昧で、不確かで——
けれど、あの瞬間に感じたもの、あの絆、あの懐かしく、失われたはずの何かに触れた感覚……それが嘘だったなんて、あり得る?
でも、もしそうなら——
「テウォンは?」
この違和感は、ずっと彼に対して抱いていたもの。
一緒にいるときも、どこかで心が警戒し、完全に気を許せない。
彼もまた——私に嘘をついている?
もしそうなら、何のために?
「そんなはずない……。」
私はそう呟きながら、自分の胸に手を当てる。
心臓の鼓動が、掌に伝わる。
そして——
思考が混乱し、答えを見つけられずにいる私のもとに、扉を叩く音が響いた。
私は身を起こし、息を飲む。
——マンチュン?
彼が謝りに来たのか?
そう思い、私は急いで扉を開ける。
しかし——
そこに立っていたのは、彼ではなかった。
躊躇いがちな笑みを浮かべる、彼の兄——
「……テウォン?」
私はその場で固まり、彼がここにいることに安堵しながらも、同時に居心地の悪さを覚える。
「どうした?」
彼はすぐにそう尋ね、そっと手を伸ばして私の頬をかすめる。
「泣いていたみたいだな。」
私は反射的に身を引き、彼の手から逃れようとする。
彼は眉をひそめ、私が握っていた扉を取ると、大きく開け放ち、そのまま部屋の中へと入ってきた。
「ここにいるべきじゃないわ。もし誰かに——」
「兄の副官が来て、監禁が解かれたと伝えた。これで砦のどこへでも自由に行ける。」
彼の言葉に、さらに困惑する。
マンチュンはこの数週間、彼を厳しく監視していた。それなのに、突然考えを変え、彼の行動を自由にする?これは新たな罠? それとも、私が砦を去る前の最後の試練?
テウォンはそっと私の額に手の甲を当てた。
「なんだか様子がおかしい。旅の疲れで体調を崩したか? それとも——妊娠の影響か?」
彼は最後の言葉を、慎重に選んだかのような優しい声音で囁く。
しかし、それが余計に不自然に感じられた。
彼の瞳には心配の色が浮かんでいる。
それなのに——私の全身の毛が逆立つほどの違和感を覚える。
——どうして?
なぜ、こんなにも彼の存在が息苦しく感じるの?
私は彼の誤解を解き、事情を説明しようとする。
だが、そうすれば、私が盗み出した地図のことを話さなければならない。
その考えが頭をよぎると、さらに居心地の悪さが増した。
「……疲れているの。」
結局、そう告げて彼から距離を取る。
彼の表情に一瞬影が落ち、私を見つめる視線が鋭くなる。
「何かあったな。」
彼は確信に満ちた声で言う。
「お前は変わった。何があった?」
そう言いながら、彼は一歩踏み出し、私の腕を掴む。
——近い。
彼の距離が、私を圧迫する。
「……私自身も、自分が自分ではないような気がする。」
私は作り笑いを浮かべ、できるだけ穏やかに言う。
その言葉に、彼はわずかに表情を緩め、安堵のため息をついた。
「この砦の空気が悪いせいだろう。」
そう断じると、彼は続ける。
「だからこそ、お前をここに残しておけない。お前がこんな場所で苦しむのは耐えられない。今はまだ何も言えないが、必ず解決策を見つけてやる。」
私は彼の目を見ることができなかった。
——二日後には、砦を離れる予定なのだとは、言えなかった。
沈黙を続ける私の手を、彼がそっと取る。
「子供のことを考えろ。」
彼は指を絡めながら、静かに言う。
「ここは危険すぎる。もう少し時間をくれれば、俺は兄には絶対にできない方法で、お前を守ることができる。」
——彼は私を心配している。
理性がそう囁く。
正直に話すべきでは?
だが、何かが——得体の知れない何かが、私の口を封じていた。
「……でも、その話をしに来たわけじゃない。」
そう言いながら、彼は私の指を優しく撫でる。
私は黙ったまま、彼の言葉を待つ。
「ボクドク王子が殺された夜のことを調べていた。」
——息が詰まる。
この話題には、今は触れたくなかった。
「何か、わかったの?」
自分の声がかすれていることに気づく。
「確信はないが——偽装工作の可能性がある。」
彼の瞳が静かに私を見つめる。
「遺体があるのは、乱戦のあとにできた屍の山だけ。つまり、今わかっていることは、すべて兄の報告に基づいているに過ぎない。」
「……つまり?」
「お前の兄は、まだ生きている可能性がある。」
私は息を飲む。
「……どうやって、それを?」
気づけば、私は問い詰めるような口調になっていた。
——この数日間、彼はずっと自室に閉じ込められていたはず。外部との接触もなかった。
彼は、一瞬言葉を止めた後、静かに微笑む。
「方法なんて、どうでもいい。大切なのは事実だ。」
彼の親指が、私の手の甲を撫でる。
——寒い。
耐えられないほど、寒い——。
「姫君、もし彼が生きているのなら、必ず見つけ出す手助けをすることを約束する。」
私は、言葉を発することもできず、ただ小さく頷いた。
「それと……指揮所では、何か見つかったか?」
テウォンが問いかける。
——それが、本当の目的。
彼がここに来た理由を、私はようやく理解した。
「……何も。」
私は静かに首を振る。
彼の口元に、一瞬だけ、かすかな不満の色が浮かぶ。
「……そうか。」
彼は私を安心させるように言ったが、その声はどこか冷たく響く。
「きっと、何もなかったのかもしれないな。」
——「芝居はやめろ、お前の演技には誰も騙されない。」
マンチュンの言葉が、脳裏に蘇る。
そう——まさに、彼の言う通り。
扉を開けた瞬間から、テウォンは何かを演じている。
私は、その違和感を押し殺し、自分もまた演じることを選んだ。
「もし彼が何かを隠しているのなら……私たちが真実を見つけ出すはずよ。」
そう言った瞬間、テウォンの表情が変わる。
今度の笑みは、目元にまで届いている。
まるで——私が彼の求めていた答えを、ようやく口にしたかのように。
「もう長居はできない。」
彼はそう言い、私の指を強く握りしめた。
「君には休息が必要だ。」
次の瞬間、彼は私の腰に腕を回し、そっと引き寄せる。
——わかっている。彼が何をしようとしているのか。
私はわずかに顔を背けた。
——祈るような気持ちで。
この仕草が、ただの恥じらいに見えることを願いながら。
一瞬、彼の身体が強張るのを感じた。
そして、彼は理解したのだろう——
私が彼の口づけを受け入れるつもりがないことを。
だが、彼は離れなかった。
それどころか、さらに強く抱き寄せ、私の耳元に唇を寄せて囁いた。
「もうすぐだ。もうすぐ、お前をここから出してやる。」
「……信じているわ。」
そう答えた言葉ほど、私の心から遠いものはなかった。




