語る半生
君に話しかけると君はふふッと微笑み返す。
ちょっと太ったんじゃない?と聞くとそんなことないよ!って、笑い返す。
お祭りに行くと必ず腕いっぱいに食べ物を抱えてむふぅっと焼きそばを啜っている。
君が僕の妻なってくれますかと聞くと、俯いていた顔をすっと上げてくれて君と顔が合う。
私が幸せにしてあげるっっ!ってそう、答えてくれる。
君はアサガオみたいだねって、そう言うと君はふふっ、なにそれ?って、おもしろそうに笑う。
君の肌とローズの香水に触れた時、君の全てが欲しいって言う。
そう言う時、君は私の全てもらってくれる?小悪魔的に笑う。
初めて触れた人肌は想像してたよりもぬるくて、でも今まで触れた事のない様な鼓動がそこにあった。
もし、君が死んでしまったら、どうする?ってそう聞く。
そしたら決まってこう言う。蘇って君の事を幸せにしてあげるよ。
そして今、椅子に座って君を見ている。
違う、見惚れている。
心臓に触れてみる。
気温の体温だ。
10月の体温。
かつて触れた温もりはもう二度と触れることは出来ないと体で理解した。
君が死んでしまったら、どうする?って彼女がそう聞いてくる。
だから、決まってこう言う。君を幸せにするために君に会いに行くよ。
………だから、会いに来たよ。
………だから、僕を幸せにしてよ。
君にまた会うために最後に一つだけ。
君の好きだった香水を纏って。
「君の体温の気温に香水を。」