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【三話】『憑乃宮少女と座敷童子』

座敷童子(ざしきわらし)



主に東北地方に分布していて、私は妖怪の類かと思っていたがた、どうやら精霊的な存在らしい。


主な特徴は、座敷童子を見た者には幸福が訪れたり、家に富をもたらすとも言われていてる。


一般的には、赤面垂髪の5、6歳くらいの小童というが、年恰好は住み着く家ごとに異なるともいい、下は3歳程度、上は15歳程度の例もある。髪はおかっぱ、またはざんぎり頭。赤いちゃんちゃんこや小袖、ときには振袖を着ているという。


しかし、私が出会った座敷童子は、私が思っていた座敷童子とはまったくもって違う存在だった。







「ねぇ、お昼ご飯は屋上にでも行って食べない?」


「うー、私はパスするわ。私は昼休み机にかじりついてなきゃいけないからさ・・・・」


3時限目から極度の疲労感が霞ちゃんの席からヒシヒシと伝わり、4時限目が終了し待望のお昼に突入したので、気分転換に屋上で昼食をとろうと誘おうとしたのだが、どうやら逆効果だったらしく、霞ちゃんはさらに元気がなくなってしまった。


「私には気をつかわないで行ってきなさいよ。どうやら以外にもあんたが一番閂さんと仲良さそうだしさ。屋上でさらに親睦を深めて来なさい・・・・・・」


弱弱しい笑みを浮かべながら、霞ちゃんは私たちを屋上へと促した。


霞ちゃんは同情されるのが嫌いだからなぁ・・・・・。


しょうがないか。このまま隣にいて楽しくおしゃべりなんか出来ないし、お言葉に甘えて行くとしよう。


「わかったよ。ありがとうね霞ちゃん。それじゃ閂さん、行こっか」


「あ、はい分かりました。霞さんありがとうございます、頑張ってくださいね」


反省文と書かれた紙が、何枚も散乱した机に突っ伏している霞ちゃんに、私と閂さんはお礼を言い、教室を後にした。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


昼休みも半分終わり、お昼ご飯もお互い食べ終わった。


5時限目を告げる余令が鳴るまで、私たちは屋上で話している事にした。


「あのー、憑乃宮さん」


「ん、なーに?」


「いきなりですみませんが、ちょっと答えにくい事を御訊きしたいんですが、いいでしょうか?」


「え、何々~?」


閂さんがいきなり堅苦しい面持ちで、私に質問の両諾を得る質問して来た事に対し、私は半笑いで軽~く返した。


「大丈夫だよ!私、スリーサイズとか訊かれても簡単に答えちゃうよ!あっはっは」


シーーーーン。


冗談のつもりで言ったのだが、閂さんは依然として重々しい表情のままだった。


お、面白くなかったのかな・・・・。あ!それとも本当にスリーサイズだったり!? え、うそ・・・どうしよ・・・・あんまり言いたくないなぁ、とゆうより言えない・・・・・・。


それもそのはず、相手は閂さんなんです!?


真っ白で透き通るような肌に、綺麗なストレートの髪の毛。出るとこはちゃんと出ていて、それでいて細身で長身だ。比べて私は、あまりにもの平凡な体つき。食べた分ちゃんと太る体質で、身長も中途半端な高さである。はっきり言ってまったく目立たない。そして肝心の胸囲は、親友の霞ちゃんにさえ-


『ロードローラで平らにしても、ここまではならない』


とまで絶賛された折り紙つきだ。出る涙も枯れてしまった。


「よかった・・・・。あまり深く考えずお答えになって下さいね」


「は、はい」


以前測ったスリーサイズの悪夢が脳裏をよぎり、思わず声が少し甲高くなってしまった。


そして、ゆっくりと閂さんの口が開いた。


「憑乃宮さんは座敷童子に対して、どうゆう見解を持っていますか?」



へ? なぜにいきなり座敷童子? 今日を振り返っても、閂さんと座敷童子に触れた会話などした覚えはない。


「え、えっとぉ?」


「すみません、いきなりじゃ戸惑いますよね。なら、座敷童子に、いや、そのような類の存在を信じていますか?」


「ん、んーー」


どうしよう、何て答えようか。閂さんの顔はさらにも増して真剣な顔つきで、冗談やギャグを言ってるようにも見えない。例えこれがギャグでも、私には高度過ぎて笑えないだろう。


つまりこれは、本気で私に質問しているのだろうか?


それとも、何かしらの心理テストや占いの類なのだろうか?


一体何て答えようか・・・・・・必死に返しの言葉を頭の中で紡いでいた、その時。


キーンコーン、カーンコーン。


5時限目の始めを告げようとする余令が、校舎に力強く鳴り響いた。


「あ・・・・そろそろ戻らないと授業に遅れちゃいますね。お答えは放課後にでもいいので、その時聞かせて下さい。では、お先に失礼します」


早口でそう言い終わると、ペコリとお辞儀して閂さんは屋上の鉄製の扉を開け、そそくさと一人で行ってしまった。


扉がバタンッと大きな音を立てて閉まり、その瞬間私ははっと我に返った。


「あ、私も戻らなきゃ」


今考えていた事が完全に消し飛んでしまい、とりあえず最優先事項の教室へ戻るとゆう答えが頭に浮かび行動した。


小走りで扉に近寄り、若干静電気を帯びたスチール製のドアノブを手に取り、重々しい扉を開け校舎の中に入った。


階段上の踊り場に、扉が閉まる大きな音と閂さんの足音が木霊する音を聞きながら、私は階段を下って行った。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


放課後。


時刻は16時30分を回り、気付いたころには、クラスには私と閂さんしか残っていなかった。


あれ? おかしいな・・・・いつもはみんなすぐ帰らない筈なのに・・・・・。


いや、それ以前に私と閂さん以外残っていない!?


いつもなら少なからず、男子も女子も、特に理由がなくても残っているものだ。なのに今日に限って誰もいない。さっきまでいたはずの霞ちゃんもいなくなっている。


霞ちゃんどこ行っちゃったんだろ・・・・鞄はあるから帰ったわけではなさそうだけど、職員室とかかな?


そして隣の閂さんは、未だに屋上の時と同じ雰囲気が漂わせていた。昼休み以来、授業中や休み時間もどうも上手く話しかけられず、あちらも話しかけてこないので、まだ一言も会話していない。


う。ただでさえ気まずいのに、さらに二人っきりだなんて・・・・・。


「憑乃宮さん」


心臓と体が飛びあがる。閂さんの一言一挙に、無意識に体が反応してしまい、嫌な汗が流れる。何で私はこんなにも閂さんに怯えているの?


私はなるべく平然を装いながら、ゆっくりと答えた。


「な、なに?」


「そろそろ、お答えを御聞きしていいですか?」


こ、ここはなるべく、正直に答えた方がいいと思うから、私の思った通り正直に言おう。


「んー・・・・・私はそうゆう非現実(オカルト)的なものは、あんまり信じてないかなぁ・・・・あ、でも!座敷童子とかサンタさんとか、私はこの世界にいてもいいと思うし!素敵だなーって思う。いるなら会ってみたいとも思ってるよ?」


思いのすべての事を言い、教室に沈黙が流れる。


恐る恐る閂さんの方を見る。そこには今まで見た事のない、笑みのような戸惑いのような、そんな微妙な顔をしていた閂さんがいた。


そしておもむろに私に一歩近づき。


「なら。もし憑乃宮さんの前に座敷童子が現れても、憑乃宮さんは嫌がったり怖がったりしないんですか!?」


また一歩私に詰め寄りながら、かなり興奮気味に私に訊いてきた。


「う・・・うん。多分大丈夫だよ・・・・?」


閂さんの気迫にうろたえつつ、私は大丈夫と言った。


この答えは、別にこの場しのぎの嘘でもないし、虚勢でもない。おそらく私は本当にソレらに会ったとしても、大丈夫だと思う。この場合の大丈夫は、怯えたり、存在をあくまで否定したりはしない。とゆう意味である。会えるなら、会ってみたいと思うのも事実だ。



「それはよかった・・・・。本当によかったです。私は安心してこれからも憑乃宮さんと友達でいられます・・・・」


そう言って、閂さんはぺたんと自分の席に座り込んだ。


「ん?ん?」


言っている意味が分からない。まるで自分がその、非現実(オカルト)的な存在であるかのような口ぶりである。


閂さんは見た所は、かなりスタイルのいい美人女子高校生と言ったところだ。食べる物もごく普通の物だし、今日一日見ててもおかしな点はなかっ・・・・・た・・よね?


ここで、私の頭で何か引っかかる点に気付いた。


それは言うまでもなく、いきなり訊かれた謎の質問。そして私が非現実(オカルト)的な事は大丈夫と言った時の、大いに喜んでいた閂さんの過剰のような反応。


そして、最初に何故か限定的に訊いてきた。




座敷童子。




待てよ待てよ・・・・・確か座敷童子って子供の体格だったよね? そんで女の子で、ぱっつんの髪型に、昭和に出てくるような古い格好。そして座敷童子を見たものには幸福が訪れる。


いくらオカルトに疎い私でも、ここまでは一般的に知りうる情報だ。付け足すなら、東北のどっかの県の宿によく出るって聞いた事がある。


まさか閂さんがその座敷童子? いやいやいや、まさかまさか。特に理屈はないが、ありえない。だって私の知っている座敷童子とは、女の子の部分しかあっていない。


仮に閂さんが座敷童子としたら、この謎の質問や、過剰な反応も筋が通るが、でもあり得ない事である。私はこの二つの目で見た物以外、信じないのだ(今考えた設定)


きっと閂さんは、そういったオカルトに、そう特に座敷童子に興味がある、ちょっと意外な一面を持っていた女子高校生なんだ!きっとそう!だから私になんかの拍子で素性がばれて、嫌われたりしないかが気になっていたんだね!閂さん!?


そんな素敵な答えを導き出して、キラキラと目を輝かせながら私は閂さんを見つめた。


そんな私の熱い視線を感じて、閂さんも私の意思を理解してくれたのか、清々しい笑顔で私に言い放った。




「私、その座敷童子なんです!!」



私の儚い想いは、完膚なきまで粉々に打ち砕かれていた。


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