第五話:機械VS幻想獣①
色々なものを賭けた西校と東校のサモンファイト。
その対戦者として選ばれたのは、俺でした。
「……ちょっと胃が痛い」
責任重大すぎて胃痛がする気がする。
というかさっきから後ろの野次馬達がうるさい。
「なぁ、お前天川のデッキって知ってるか?」
「知らない。委員長は?」
「すまない。俺も知らないんだ」
「と言いますか、誰か天川君が戦ってるところ見た事ありますか?」
「ないな」「俺もない」「私もない」
まぁ、言いたい事は分かる。
俺昨日この世界に来たばっかだし、そりゃ戦闘記録なんてないよな。
だがやる事になった以上、全力は出そう。
というか単純にあの柄悪い奴らの奴隷になりたくない。
「よろしく頼むよ、雑魚君」
「まぁその、対戦お願いします」
とりあえず挨拶はカードゲーマーの嗜みだ。
対戦相手の財前とかいう奴は完全に俺を舐め切っているけど……まぁいいだろう。
「(絶対勝ってやる)」
「さぁ、距離を取ろうか」
そう言って俺と財前は校庭に移動して、五メートル程距離をとる。
召喚器を使う場合は距離をとる事。それは説明書にも書いてあった。
準備が整うと、財前は召喚器をこちらに向けてきた。
「ターゲットロック」
その掛け声と共に、俺と財前の召喚器が通信を始める。
そして俺達の目の前には、立体映像で作られた仮想フィールドが出現した。
「おぉ、スゲー」
驚くのもつかの間、個人的に嬉しい事が起きた。
『初回対戦を確認しました。チュートリアルモードを起動します』
チュートリアルモード。なるほど、初心者に優しい仕様なんだな。
流石はサモン至上主義世界。
だが、チュートリアルモードの音声ガイダンスが聞こえた瞬間、周囲は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれた。
「ギャハハハ! マジかよアイツ!」
「チュートリアルモードすらっやってないのかよ!」
「そんなもん小学生で終わらせるもんだぜ!」
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「お、終わった」
「委員長、俺ジャージ用意してくる」
「すまない、俺の分も頼む」
敵側から馬鹿にされるのはともかく、味方から完全に諦められている。
仕方ないだろ、今日が初めてなんだから!
「ハハハ、これは勝負あったね」
「……なんでさ」
「初心者が僕に勝てるわけないだろ」
さも当たり前かのように言う財前。
なるほど、チュートリアルモードは初心者の証みたいなものなのか。
だけど……
「勝ち負けなんか、やってみなくちゃ分からないだろ」
「分かるさ。西校の雑魚が僕に勝てない」
「よし分かった。絶対勝ってやる」
「……減らず口を」
絶対にその天狗っ鼻へし折ってやる。
俺はチュートリアルモードのガイダンスを聴きながら、そう決意した。
対戦相手に敬意を柄得ない奴はカードゲーマーじゃありません!
召喚器の中でオートシャッフルされたデッキから、俺は初期手札五枚を引く。
仮想モニターには初期ライフである10の数字が表示された。
これで準備完了。
「早々に潰してあげるよ、初心者君」
「負けても泣かないでくれよ」
どうやら彼方も準備完了したらしい。
双方の準備完了を確認したシステムが、今度はジャッジシステムへとアクセスする。
『公式ジャッジシステムへと繋がりました』
『対戦可能です』
仮想モニターにそう表示される。
さぁ、初陣だ。
「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」
財前:ライフ10 手札5枚
ツルギ:ライフ10 手札5枚
仮想モニターに先攻後攻の表示が出る。
先攻は財前だ。
「じゃあ先攻を貰うとしよう。僕のターン! スタートフェイズ」
財前のターンが始まる。
「メインフェイズ。〈ディフェンダー・マンモス〉を召喚!」
『バオォォォォォォン!』
財前のフィールドに巨大な機械のマンモスが召喚される。
〈ディフェンダー・マンモス〉P10000 ヒット0
「召喚コストとして、ボクはデッキを上から8枚除外するね」
いきなり出て来たレアカード。
と言ってもパワーが高いだけの大型ブロッカーなのだが。
しかし素のパワーが高いレアカードという事実は、野次馬に大きな衝撃を与えたようだ。
「い、いきなりパワー10000だと!?」
「あんなの勝てるのかよ」
「終わった。今度こそ終わった」
いやお前ら、あのマンモスパワーが高いだけで耐性とか何も持ってないぞ。
そんなに驚かないでくれ。
そして財前君よ、ドヤ顔をやめてくれ。俺が吹き出しそうになる。
「どうだ。これが財前家が誇るレアカードだ!」
「へーそうなんだー。すごいねー」
「驚いてまともに思考も出来ないか。僕はこれでターンエンド!」
財前:ライフ10 手札4枚
先攻1ターン目はドローと攻撃ができない。
だから財前はそのままターンを終了した。
さぁ、俺の番だ
「俺のターン! スタートフェイズ! ドローフェイズ!」
腰に下げている召喚器からカードを1枚ドローする。
これで手札は6枚だ。
「メインフェイズ!」
『メインフェイズではモンスターの召喚ができます。手札からモンスターを召喚してみましょう。ただし場に存在できるモンスターは3体までです』
「言われなくても知ってるさ。俺は〈トリオ・スライム〉を召喚!」
召喚するモンスターカードを仮想モニターに投げ込むと、俺のフィールドに小さくて可愛いスライムが召喚された。
『スララー!』
〈トリオ・スライム〉P1000 ヒット1
召喚されたスライムを見た瞬間、財前は笑い声を上げ始めた。
「ハハハハハ、パワー1000だって? とんでもない雑魚モンスターじゃないか」
「勝手に言ってろ。俺は〈トリオ・スライム〉の召喚時効果発動! デッキから2体目の〈トリオ・スライム〉を手札に加える」
デッキから自動でカードが出てくる。
本当に科学の力ってすごい。
『モンスターの召喚は1ターンに何度でもできます』
「知ってる。俺は2体目の〈トリオ・スライム〉を召喚!」
『スララー!』
《トリオ・スライム(B)》P1000 ヒット1
「そして2体目の〈トリオ・スライム〉の効果で、3体目の〈トリオ・スライム〉を手札に加える。そしてそのまま3体目も召喚だ!」
『スララー!』
〈トリオ・スライム(C)〉P1000 ヒット1
「そんな雑魚を3体も並べたところで、僕の〈ディフェンダー・マンモス〉の敵じゃない」
「確かに、今のスライムは弱い。だけどこれはカードゲームだぜ」
「なに?」
「カードはモンスターだけじゃないんだよ! 俺は手札から魔法カード〈トリニティオーラ〉を発動!」
『発動タイミングが適切であれば、魔法カードはいつでも発動できます』
俺が魔法カードを発動すると、3体の〈トリオ・スライム〉はオーラを纏い始めた。
「〈トリニティオーラ〉は、俺の場のモンスターが3体の時、そのパワーを+4000する魔法カードだ」
「だけど強化されたところで、パワーは5000。パワー10000の〈ディフェンダー・マンモス〉には敵わない」
「それはどうかな? 〈トリニティオーラ〉のもう一つの効果。それは俺の場のモンスターが全て同名カードであった場合、追加でパワーを+5000するんだ!」
「なんだって!?」
合計9000のパワープラス。それにより貧弱だったスライム達のパワーは――
〈トリオ・スライム(A)〉P1000→P10000
〈トリオ・スライム(B)〉P1000→P10000
〈トリオ・スライム(C)〉P1000→P10000
「馬鹿な! 〈ディフェンダー・マンモス〉に並んだだと!?」
後方から歓声が上がる。コモンカードがレアカードに匹敵するパワー得た事が湧かせたのだろう。
でもこんな簡単コンボで驚かれても正直困るのだがなぁ。
「俺は更に魔法カード〈フューチャードロー〉を発動。ライフを2点払って、2ターン後のスタートフェイズにカードを2枚ドローする」
ツルギ:ライフ10→8
「さぁ行くぜ、アタックフェイズ! まずは〈トリオ・スライム(A)〉で攻撃!」
「くっ。ライフで受ける」
ブロック宣言をしなかった事で、一体目の〈トリオ・スライム〉が、財前に体当たりをする。
すると財前のライフは〈トリオ・スライム〉のヒット数、1のダメージを受けた。
財前:ライフ10→9
「続いて〈トリオ・スライム(B)〉で攻撃!」
「それもライフだ」
財前:ライフ9→8
「最後! 〈トリオ・スライム(C)〉で攻撃」
「その攻撃は〈ディフェンダー・マンモス〉でブロックする」
スライムの前に立ち塞がる巨大な機械マンモス。
だが現在のパワーが互角。
スライムがマンモスに体当たりすると、双方大爆発を起こして破壊された。
「相打ちか。だけど〈ディフェンダー・マンモス〉には」
「どうやら知ってるようだな。破壊された〈ディフェンダー・マンモス〉の効果発動! 僕はカードを1枚ドローする!」
財前:手札4枚→5枚
『攻撃可能なモンスターがいません。ターンエンドをしましょう』
「ターンエンド」
ツルギ:ライフ8 手札3枚
場:〈トリオ・スライム〉〈トリオ・スライム〉
「どうやら少し君を侮りすぎてたみたいだ。僕のターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ!」
財前:手札5枚→6枚
「メインフェイズ。喜べ初心者君。君に僕のデッキの本領というものを見せてあげよう」
「まぁ、そうこなくっちゃな」
でも〈ディフェンダー・マンモス〉が見えた時点で、なんとなく相手のデッキ読めちゃったんだよなぁ。
口には出さないけど。
「僕は〈メカゴブリン〉を召喚!」
財前の場に、鉄の棍棒を持った機械ゴブリンが召喚される。
〈メカゴブリン〉P6000 ヒット1
「(やっぱり【機械】のデッキだったか)」
【機械】デッキ。
系統:〈機械〉のカードでまとめた、パワー型のデッキだ。
最大の売りは高い素のパワーと、攻撃的な能力。
そして系統が持つ固有能力だ。
「さぁ見るがいい! 〈メカゴブリン〉の召喚時に手札を1枚捨てる事で【オーバーロード】を発動!」
「やっぱり使ってきたか」
「初心者君の為に説明してやるよ。【オーバーロード】は機械モンスターだけが持つ固有能力。その効果は召喚時に手札を1枚捨てる事で、このターンの間パワーとヒットを2倍にする!」
財前:手札5枚→4枚
〈メカゴブリン〉P6000→12000 ヒット1→2
「パワー12000だと!?」
「あんな強力な能力を持ってたなんて」
「ダメだ負けた。勝てるわけない」
だからギャラリーうるさい。
確かに【オーバーロード】は強力だが、分かりやすい弱点もある。
「(まぁ流石にこのターンすぐには何も出来ないんだけどな)」
「更に僕は〈ダブルランサーロボ〉を召喚! こいつも【オーバーロード】持ちだ。手札を1枚捨てさせてもらおう!」
財前のフィールドに二本の槍を持った人型ロボットが召喚される。
財前:手札3枚→2枚
〈ダブルランサーロボ〉P6500→13000 ヒット2→4
また厄介なモンスターが召喚された。
だけど同時に、財前は【オーバーロード】の弱点にもハマった。
【オーバーロード】は手札消費が激しすぎるんだ。
「フフフ。僕の手札が心配かい?」
「一応ね。大丈夫なのかなーとは思うよ」
「心配は無用だ。機械デッキにはこういうカードもある。魔法カード〈オイルチャージ〉を発動!」
「機械デッキ専用のドローカードか」
「その通りだ。このカードは僕の場に系統:〈機械〉を持つモンスターが2体以上存在する時、カードを2枚ドローできる」
財前:手札1枚→3枚
手札補充をする財前。だがそれでも手札は2枚だ。
「これで終わりじゃないよ。僕は更に魔法カード《スペルコピー》を発動。ライフを2点払って、墓地の魔法カード《オイルチャージ》の効果をコピーするよ」
ドロー効果がコピーされて発動。財前の手札が更に増える。
上手いプレイングだな。
財前:手札2枚→4枚
「へぇ。やるじゃん」
「これでも未来のプロなんでね」
「へいへい(自意識高いなコイツ)」
しかし機械デッキで手札を増やされるのは少し厄介だな。
考えてプレイしないと負けてしまうかもしれない。
「まだまだ僕の進撃は止まらないよ。魔法カード〈追尾ミサイル〉を発動!」
「げっ、そのカードは」
「〈追尾ミサイル〉の効果で、このターンの間、僕の機械モンスターは【指定アタック】を得る」
【指定アタック】。その名の通り、相手モンスターを指定して攻撃する能力だ。
何が厄介って、モンスターを殲滅される事もだが、奴の〈メカゴブリン〉との相性が良すぎるんだ。
「アタックフェイズ。〈メカゴブリン〉で〈トリオ・スライム〉に指定アタックだ!」
鉄の棍棒を構えて、スライムに攻撃を仕掛けるゴブリン。
今の手札と、先のターンの事も考えれば……ここはライフ調節に徹するか。
「すまない、スライム」
ゴブリンの振り下ろした棍棒によって潰される〈トリオ・スライム〉の一体。
だがゴブリンの攻撃はこれで終わらなかった。
「〈メカゴブリン〉の効果発動! このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、僕の場にパワー10000以上のモンスターがいれば、相手に2点のダメージを与える!」
効果が発動すると、ゴブリンは此方に向けて爆弾を投げてきた。
「うわッ!?」
爆風と衝撃波が実際に伝わってくる。
ツルギ:ライフ8→6
「ひゃあ、スゲーな召喚器システム。本当に衝撃波がきた」
「のんびりしている暇なんてあるのかい? ここで〈ダブルランサーロボ〉の効果発動! このカードのパワーが13000以上の時、僕の【オーバーロード】を持つモンスターは全て【2回攻撃】を得る!」
「つまり〈メカゴブリン〉はもう一度攻撃できると」
「そういうことだ。行け〈メカゴブリン〉! 最後の〈トリオ・スライム〉を攻撃しろ!」
最後のスライムに襲い掛かるゴブリン。
ここで防御をしたい気持ちがあるが、ここはあえてゴブリンの効果ダメージを受けよう。
棍棒で潰されるスライム。
そしてゴブリンは再び爆弾を俺に投げてきた。
「ぐッ!」
ツルギ;ライフ6→4
「これでもう君の場にモンスターはいない。〈ダブルランサーロボ〉で止めだ!」
ヒット数4の〈ダブルランサーロボ〉が俺を直接攻撃してこようとする。
これを受ければ敗北する。
後ろのギャラリーもそれを悟ったのか、悲鳴を上げているが……
「ここで終わらせるわけないだろ! 魔法カード〈トリックゲート〉を発動!」
俺に攻撃を仕掛けていた〈ダブルランサーロボ〉は、突如開いたゲートにその身体が飲み込まれた。
「〈トリックゲート〉は、モンスターの攻撃対象を移し替える。お前が攻撃するのは〈メカゴブリン〉だ!」
再びゲートが開く。ただしそれは〈メカゴブリン〉の目の前であった。
ゲートから出てきた〈ダブルランサーロボ〉は、そのまま〈メカゴブリン〉を戦闘破壊してしまった。
「くっ、雑魚の分際で。だけど〈ダブルランサーロボ〉は【2回攻撃】の効果で回復する! 今度こそ止めだ!」
「魔法カード〈グラビトントラップ〉を発動。回復した〈ダブルランサーロボ〉を疲労させる」
凄まじい重力エネルギーが発生し、〈ダブルランサーロボ〉は押しつぶされてしまう。
「疲労状態になったモンスターは攻撃できない。だろ? ベテランファイターさん?」
「こ、この野郎……ターンエンドだ!」
財前;ライフ6 手札3枚
場:〈ダブルランサーロボ〉
素早く止めを刺せなかったのが相当悔しいのか、財前は顔を真っ赤にしてターン終了の宣言をした。
さて、機械モンスターの猛攻から生き残ったは良いが、これからどうしようか?
「まぁドローしてから考えるか。俺のターン!」