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俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜  作者: 鴨山 兄助
第九章:高校生編⑥

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第二百二十六話:真・最悪総理罪臣

「俺のターン、スタートフェイズ!」

「この瞬間、〈ザ・マスターカオス〉第二の効果を発動。場と墓地から全ての感染罪臣(ざいじん)を〈ザ・マスターカオス〉の下に置く」


 墓地から〈【計算感染罪臣】エンヴィ・ブレイン〉と〈【法務感染罪臣】ラス・ジャッジメント〉、場から〈【鎧武感染罪臣】グラトニ・オニマル〉をウイルスに捧げられる。

 すると(まつり)誠司(せいじ)の背後に浮かぶ紋様、そのスリットに3つの光が灯った。


「3枚のカードを置いた事で、僕は3枚のカードをドローする」


 手札を増やし万全を期したつもりの政誠司。

 これで〈ザ・マスターカオス〉の下に置かれたカードは5種類となった。


「ドローフェイズ」


 俺はカードをドローして、次に自分がすべき動きを考える。

 政誠司のデッキに入っている《罪臣》モンスターが各種1枚だと仮定すれば、本当に厄介なカードは残り2枚。

 魔法カードを無効化する【断罪】を持つ〈【交痛罪臣(こうつうざいじん)】サイバーヴァンプ〉。

 そして相手の攻撃に反応して、ターンの残りを飛ばす〈【最悪総理罪臣さいあくそうりざいじん】プライド・デーモン〉。


(目指すべきは残る2枚を〈ザ・マスターカオス〉の下に置いてもらう事。ただ残った2枚はどちらも厄介)


 魔法カードの無効化は言わずもがな。

 ターンを強制終了させ、迂闊なブロックをすると効果ダメージを与えてくる〈プライド・デーモン〉が面倒この上ない。

 俺が一番気にしている事、それは〈プライド・デーモン〉で攻撃を仕掛けられてしまう事だ。


(いくら攻略法を持っているとはいえ、効果ダメージを与えてくるデカブツは面倒……なんだけど、盤面をガラ空きにしたって事は)


 場にモンスターがいない事を条件とする〈プライド・デーモン〉を手札に抱えていると見て良いだろう。

 別にそれは良いけど……そうなれば次は残る1枚を引き摺り出す方法だな。

 慎重に、確実に進めるぞ。


「メインフェイズ。出番だぞ」

『キュプ! ようやくっプイ!』

「奇跡を起こすは紅き宝玉。絶対に勝つぞ、相棒! 〈【紅玉獣(こうぎょくじゅう)】カーバンクル〉召喚!」


 お馴染みの紅玉が場に現れて砕け散る。

 そして中から俺の相棒である、緑色のロップイヤーなウサギが現れた。


〈【紅玉獣】カーバンクル〉P500 ヒット1


「キュプぅ……あなやあなや臭う臭う。是は血と怨念の臭いかや。その幼さで無辜を殺めたとあっては、免罪符も効かんのう?」

「不完全な生命は〈ザ・マスターカオス〉を以て完成した。ならば僕達のこれは善行だよ」

「是非もなし。魂まで畜生に堕ちておるか」


 口調がキレている時のものになっている。

 だがカーバンクルの怒りは理解できるし、政誠司の返しに怒りを覚えているのは俺も同じ。

 ならばこそ、確実にあの男は葬る。

 まずは動いて、相手の手札に何が眠っているのかを探る。


「魔法カード〈夢幻夢想(むげんむそう)大図書(だいとしょかん)〉を発動。デッキを上から7枚オープンして、系統:《夢幻》を持つカードを全て手札に加える」


 前の世界なら制限指定を食らった、強力な手札補充カード。

 魔法カードを発動したわけなんだが……政誠司からカウンターが飛んでくる気配は無さそうだ。

 ここまで露骨に強力な手札補充のカードを安易にスルーする理由は薄い。という事は今の時点で、アイツの手札に〈サイバーヴァンプ〉は無いな。


 オープンしたカード:〈【幻紫公(げんしこう)】カーバンクル・ヴァンプ〉〈【幻婪魔獣(げんらんまじゅう)】カーバンクル・ジョーカー〉〈【幻蒼竜(げんそうりゅう)】カーバンクル・ドラゴン〉〈ジャスパーの竜闘士〉〈ラリマーの海獣〉〈ディスペルイリュージョン〉〈トリックミラージュ〉


「該当するカード3枚を手札に加えて、残りは除外する」


 魔法無効を持っていないなら、好きに動ける。

 次は手札交換と墓地肥やしだ。


「魔法カード〈ミステリー・ギフト〉を発動。手札から〈カーバンクル・ヴァンプ〉を捨てて、自分のデッキを上から4枚破棄する」


 今のうちに墓地へ『カーバンクル』と名のつくモンスターを送っておく。

 そうでなければ最後に繋げられない。


「墓地に送ったカードの中に系統:《幻想獣》を持つカードがあったので1枚ドロー。さらに俺の場にカーバンクルが存在するので、追加で1枚ドロー」


 ドローしたカードを確認し、既に手札にあったカード達との組み合わせを考える。

 下準備そのものは可能……となれば必要になるのは、相手の手札情報。

 今、政誠司が持つ5枚の手札には〈サイバーヴァンプ〉が無く〈プライド・デーモン〉がある状態だろう。


(なら問題は〈プライド・デーモン〉を除く4枚の手札……その中にあのカードがあれば)


 確実に政誠司のプライドを刺激しながら、流れを掌握できる。

 となれば発動すべきタイミングは、今だ。


「俺は魔法カード――〈冤罪給付金(えんざいきゅうふきん)〉を発動!」

「なんだとッ!? そのカードは」

「アンタはよく知ってるよな? 相手に無理矢理カードを使わせる為に、自分のデッキに入れてるんだからな」


 これが政誠司のプライドを刺激する、俺の用意した最高の一手。

 相手の手札を全て確認して、カードを強制発動させる……政誠司も愛用している魔法カードだ。


「効果で俺はカードを1枚ドローする。そして相手は任意でカードを2枚ドローできるけど……どうする?」

「不遜極まる。誰を愚弄しているのか理解しているのかな?」

「盤面ガラ空き野郎だよ。ほら、選べ」


 明らかに眉をピクピクとさせている政誠司。

 そのまま2枚のドローを選んでくれた……それでいい。

 手札が多い方が、俺が狙っているカードを引いてもらえる確率が上がるからな。


「〈冤罪給付金〉の効果で、相手の手札を全て確認する」

「咎人は罪を重ねる事を厭わないものだね」

「アンタにだけは言われたくない」


 政誠司の手札を全て確認する。

 7枚の中に眠っているのは、案の定〈【最悪総理罪臣】プライド・デーモン〉。

 他にはデッキから系統:《罪臣》のモンスターを手札に加える〈無法選挙〉。場の《罪臣》を効果破壊から守る〈独裁政令〉。

 そして……俺が狙っていた1枚があった。


「俺はお前の手札から〈カオスフォール・マニフェスト〉を選択して、強制発動させる」

「〈カオスフォール・マニフェスト〉を……だとッ!?」

「アンタなら分かるだろ? そのカードでできる事をよぉ」

「天川ツルギ、貴様どこまで知っているッ!?」

「ほとんどだよ。『本気出せ』って最初に言ったよなぁ? 手伝ってやるから出せよ、テメェの切り札――〈セブンシンズ・デーモン〉をよぉ」


 俺の挑発は相当効いたらしい。

 政誠司は怒りで顔を赤くすると同時に、得体の知れない存在を見るかのような視線を向けてくる。

 そりゃあそうだろうな。今まで一度も公のファイトで使った事のない切り札を名指しされたんだからな。


「ほら、効果処理に入れよ」

「ッ……〈カオスフォール・マニフェスト〉の効果。手札またはデッキから系統:《罪臣》を持つモンスターを1枚除外する事で、ゲーム外部から対応する感染モンスター1体を、〈ザ・マスターカオス〉の下に置く」

「手札にある〈プライド・デーモン〉は選ぶ事ができない。なら選ぶカードは必然的に、デッキに眠る〈サイバーヴァンプ〉になるよな?」

「クッ、その通り、だッ!」


 強制発動させた魔法カードの効果により、政誠司は〈サイバーヴァンプ〉をデッキから除外。

 そして対応する感染モンスター〈【交痛感染罪臣】ラスト・ヴァンパイア〉を〈ザ・マスターカオス〉の下に置いた。


「〈カオスフォール・マニフェスト〉のデメリット効果により、僕は手札を1枚捨てる」

「これで〈ザ・マスターカオス〉の下にカードが6枚。あと1枚だな」

「なにを……企んでいる」

「勝利と明日。それとも自分の中にあった確信が崩れたか?」


 こう言われると反射的に強がってしまう。

 自分が追い詰められているという事実は、何であろうと受け入れられない。

 何故なら政誠司という男は『最強』という称号を欲しいがままにしてきたと同時に、それ故に育ててしまった傲慢を併せ持つ。

 想定していないんだ、自分が負ける可能性を。

 自分が一年生に追い詰められるという可能性を、ただの一片も想像したくないんだ。


「追い、つめたと……? 君は錯覚でもしているのかな」

「震えが隠せてないぞ()最強。他人が持つ可能性を、もう少し考えるべきだったな」

「空想は可能性に足り得ない。存在しない虚構に縋るだけで、僕に勝ったつもりかい?」

「フィクションじゃない、リアルだ」


 あと少しってところかな。

 そのまま手のひらの上で踊っていろよ。


「俺はライフを2点支払って、〈ジェット・デリーター〉を召喚!」


 場に出てきたのは黒い毛皮に覆われた、一つ目の牛型モンスター。

 コイツも【カーバンクル】デッキでは頼もしい《眷属》の1体だ。

 とはいえ、やっぱりライフコストでもそれなりに痛みは走る……大した問題ではないけどな。


 ツルギ:ライフ7→5

〈ジェット・デリーター〉P6000 ヒット0


「〈ジェット・デリーター〉の召喚時効果を発動! 手札からモンスターカードを1枚捨てて、自分のデッキを上から5枚破棄する」


 俺は手札から〈カーバンクル・ドラゴン〉を捨てて、墓地にカードを溜め込む。

 一度墓地のカードを確認して……必要なパーツが揃った事を把握できた。


「よし。さらに俺の場に『カーバンクル』と名のつくモンスターが存在する場合、手札から捨てたモンスターのヒット分のダメージを相手に与える!」

「ドラゴンなボクはヒット3! 一発痛い目をみるっプイ!」


 牛型眷属の一つ目に〈カーバンクル・ドラゴン〉の姿が浮かび上がる。

 そして〈ジェット・デリーター〉はその大きな目から、一本のビームを撃ち出した。


「ッ! このッ!」


 誠司:ライフ10→7


 ビームは政誠司のライフを確かに傷つけた。

 だがあの男の身体にはダメージが入っていない。

 それもそうだろうな。アイツは自分が傷つくより先に、実体化するはずのダメージを全て〈ザ・マスターカオス〉の中に転送しているからな。


「賊がァ、よくも……」

「他人の血は平気で流す癖に、自分の血は流したくないんだな」

「黙れ、下郎が」

「それにライフダメージ与えられたんだから、世話ないよなぁ? 政帝さんよ」


 ほら、額に血管浮き上がらせてきた。

 それで良い。俺が望む通りに切り札を使ってこい。


「どうやら僕が甘かったようだ……天川ツルギ、君に安易な死は与えない。高濃度のウイルスに侵されて、永遠に己の所業を後悔させてあげよう」

「怖い怖い。その言葉そっくりそのまま熨斗つけて返すぞ」


 いいぞ、そのまま本気を出せ。

 俺も最後の下準備をするからよ。


「魔法カード〈トリックシード〉を発動。デッキからカードを1枚選んで、それをデッキの一番上に置く」


 もう無駄にデッキを掘る必要もない。ならば残るパーツを予約するに限る。

 俺は魔法カードの効果で、〈セブンソウル・リバース〉をデッキの上に置いた。

 これで布石は整った。あとは政誠司から必要なカードを引き摺り出すのみ。


「アタックフェイズ! 頼むぞ、〈オブシディアン・ソード・ドラゴン〉で攻撃!」


 俺の指示で黒曜石の竜は、盤面がガラ空きの政誠司に攻撃を仕掛ける。

 アイツの墓地には、感染化の際に送られた系統:《罪臣》を持つモンスターカードが3種類以上ある。

 そして手札にソレがある事も確認済み。となればあの男は間違いなく――


「罪は裁く、この僕がッ! 相手モンスターの攻撃を引き金にして、手札から〈【最悪総理罪臣】プライド・デーモン〉の【大断罪】を発動ォ!」


 ――使って、くれたな。

 周囲の空間が灰色に染まり上がる。

 アニメでも見た時を止める演出。つまり〈プライド・デーモン〉がくるという予告だ。


「真なる為政者はただ一人。時も世界も、その威を以て弄ぶといい。汝は七つの頂点に君臨する魔神なり!」


 政誠司の背後に浮かぶ〈ザ・マスターカオス〉の紋様から、巨大な扉が出現する。

 その扉を強引に開いて、向こう側から貌の無い悪魔が姿を現した。


「降臨せよォ! 〈【最悪総理罪臣】プライド・デーモン〉!」


 貌は無く不気味。

 異様に長く大きな腕に、巨大なコウモリの羽根。

 まさに悪魔と呼んで差し支えなく、コイツは生命を弄ぶ悪意の具現化のようにも見えた。

 

〈【最悪総理罪臣】プライド・デーモン〉P25000 ヒット4


「〈プライド・デーモン〉の効果により、君のターンは強制終了する」

「知ってる」


 無貌の悪魔が空間を砕いて、時間を歪める。

 すると俺のターンは強制終了させられてしまった。


 ツルギ:ライフ5 手札3枚

 場:〈【天地開闢竜】オブシディアン・ソード・ドラゴン〉 〈【紅玉獣】カーバンクル〉〈ジェット・デリーター〉


「見た目は派手な効果っプイ」

「だな。ターンを消し飛ばしても、自分が勝てるかどうかは別問題なのにな」

「キュプププ、それはその通りっプイ。だからこそボク達はパートナーに背中を預けられる」


 ふと、カーバンクルが俺の方へと振り向いてきた。


「パートナーが冷静に戦ってくれる内は、ボク達も道を間違えない。だからこそボクは、今のツルギを信じていられるっプイ」

「……そっか。なら俺も期待に応えなきゃな」


 後ろにいる人達や化神達がいる。

 血と虚構で塗り潰されたアイツとは違う。

 たとえそれが独善的で、偽善と言われようとも、俺はこの道の果てを信じたい。


「僕の……ターン」


 狂気が眼にも、纏う空気からも滲み出ている。

 そんな状態で政誠司は自身のターンを開始した。


(さぁ、賭けだ)


 俺にできる事は全てやった。

 あとは政誠司が切り札を出すか、それともこのまま戦うと判断するか。

 このターンで、全てが決まる。


「メインフェイズ……僕は〈ザ・マスターカオス〉第二の効果を発動。場の〈プライド・デーモン〉を〈ザ・マスターカオス〉の下に置いて、1枚ドロー」


 政誠司の背後に浮かぶ〈ザ・マスターカオス〉に吸い込まれる無貌の悪魔。

 すると紋様にある7つのスリット、その最後の一つが灯った。

 そして俺は――賭けに勝った。


「魔法カード〈無法選挙〉を発動。デッキから系統:《罪臣》を持つモンスターを1体、手札に加える」

「待ってたぞ、そいつが来るのを」

「天川ツルギ、君には絶望を知ってもらおう。絶対に越えられない壁という存在を以ってだッ!」


 そのカードを手札に加えると、政誠司の背後に浮かんでいた紋様が妖しい光を放ち始めた。


「カードが7種類置かれている〈ザ・マスターカオス〉除外する事で、このカードの【シン・断罪】は発動できる!」


 紋様のスリットに閉じ込められていた7つの魂が中央に集まって、一つの怪物へと変化していく。

 中央に位置するのは〈プライド・デーモン〉。

 七つの大罪は底なしの闇と化して、悪魔をさらに悍ましい厄災へと変貌させていった。


「七つの闇を今一つに。世界を弄ぶ絶対の為政者よ、我が意に従って目覚めよォ!」


 紋様そのものが召喚用のゲートと化す。

 そして最強最悪のウイルスを喰らって、そのモンスターは政誠司の場に降臨した。


「来たれ〈【(シン)最悪総理罪臣さいあくそうりざいじん】セブンシンズ・デーモン〉ッ!」


 ファイトステージに、鋭い金属製の脚が食い込む。

 蜘蛛のような脚を持つが、その中央には巨大な獅子の身体がある。

 尾はまるで無機質な鞭のようにも見える。

 だが注目すべきは、獅子の上に在る巨大な悪魔の上半身。

 一見すると進化した〈プライド・デーモン〉のようだが、注意深く見れば7体の《罪臣》全ての特徴がついていた。


「これが、君の望んだ結末。僕の切り札だ」


〈【真・最悪総理罪臣】セブンシンズ・デーモン〉P77777 ヒット7


「キュプイ……ツルギ、ちょっとこれは想定外のステータスっプイ」

「大丈夫だ。俺達なら大丈夫」

「その楽観もいつまで続くかな? 〈セブンシンズ・デーモン〉の【シン・断罪】の効果によって、僕は自分のデッキを全て破棄する」


 政誠司の召喚器から、全てのカードが墓地へと散っていく。

 恐らく普通の人が見たら心底驚く光景だろう。

 実際、見た目だけなら自殺行為だからな。


「キュプッ!? ツルギ、アイツ自爆でもする気っプイ!?」

「違う。アイツは場に存在する限り、持ち主のデッキアウトによる敗北を無効化するんだ」

「その通り。そして【シン・断罪】の効果によって、デッキを全て破棄した後、墓地から系統:《罪臣》を持つカードを1枚手札に加える事ができる。僕は〈カオスフォール・マニフェスト〉手札に加えよう」


 だろうな。それがお約束の動きだ。

 魔法カード〈カオスフォール・マニフェスト〉の効果は〈ザ・マスターカオス〉の下にカードを置くだけじゃない。

 自分の場に【シン・断罪】を持つモンスターが存在する場合、ゲーム中1度だけ使える効果がある。


「僕は今手札に加えた〈カオスフォール・マニフェスト〉を発動。ライフを20点回復する」

「キュッ!? 20点の回復なんてインチキ過ぎるっプイ!」


 分かりやすく驚くカーバンクル。

 だけど俺らは今更、相手のライフ量で苦労する側じゃないだろ。


 誠司:ライフ7→27


「帝王は剣を執るもの。咎人よ、我らの前に首を捧げるがいい! アームドカード〈シン・ルーラーセイバー〉を顕現!」


 続けて政誠司が使ったカードは、実質〈セブンシンズ・デーモン〉専用のアームドカード。

 空間を切り裂いて、一振りの巨大な剣がその姿を現した。

 白く美しい剣にも見えるが、俺には外面だけで血の臭いが染み付いた呪物にしか見えない。


「これが君を葬る刃だ。僕は〈セブンシンズ・デーモン〉に〈シン・ルーラーセイバー〉を武装(アームド)!」


 獅子の背から生えている無貌の悪魔の上半身。

 その長く大きな右手が伸びて、剣を抜く――のではなく右腕に取り込んで一体化させた。

 そういえばアニメでもそんな演出だったな。


「念には念を入れておこうか。手札を1枚捨てて、魔法カード〈弾丸偽印〉を発動」


 へぇ、マジで念入りにしてくるじゃん。

 手札1枚捨てれば、デッキか墓地から〈バレッドギイン〉というモンスターを最大で2体召喚できる【7型罪臣】ならとりあえずで採用したい便利カード。


「僕の場に【シン・断罪】を持つモンスターが存在する事で、墓地から〈バレッドギイン〉を2体召喚する!」


 そして政誠司の場に2体のモンスターが召喚される。

 それは真っ白な皮膚に覆われた人型モンスター。

 生気は一切感じず、まるで支配者の言いなりにしかなれない人形のようにも見えた。


〈バレッドギイン〉P? ヒット2


「自分の場に【シン・断罪】を持つモンスターが存在する場合、〈バレッドギイン〉のパワーは15000となる」


〈バレッドギイン〉P?→15000


「見えるかい? これが僕と君の絶対的な差だ」


 偉そうに言う政誠司……だけど俺としては「ふーん」としか言いようがない。

 そりゃあトンデモ数値なステータスのモンスターが3体も並んだら、普通は脅威だと思うよ。

 だけどそういうのは、不意打ちでやるのが一番効果が高いんだ。

 未知は恐ろしくても、既知は対策ができる。

 ならばそれを過剰に恐れる理由はどこにも無い。


(なによりお前は、俺に乗せられてミスをした)


 下手に〈セブンシンズ・デーモン〉を出すよりも、〈プライド・デーモン〉と〈バレッドギイン〉を使って攻撃し続けた方が、まだ俺に勝てる可能性が少しはあったんだぞ。

 それを手放した今、お前が俺に勝つ可能性は0に近くなった。


「おい、勝ちに来いよ」

「この期に及んで、まだそんな事を」

「俺は確かに言ったからな? このターンで勝てよ」


 できないなら……お前の負けだ。

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