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第二百十一話:嵐神の感染

「アタックフェイズ! 〈シルバリオン・ドラゴン〉で攻撃!」

「我が威光の前に砕け散るがいい!」


 白銀の巨竜は翼を広げて咆哮を上げる。

 現在(なぎ)の場には疲労状態の〈ディザスター・ネルガル〉が1体のみ。

 ブロックはできず、〈エグゼキューター〉の効果でパワーも下がっている。


「攻撃時に〈シルバリオン・ドラゴン〉の【王波】を発動。〈【災禍(さいか)嵐神(らんしん)】ディザスター・ネルガル〉を破壊!」

「消え失せろ邪神!」


 雄々しき竜の王は、その口から凄まじい衝撃波を放つ。

 〈シルバリオン・ドラゴン〉の【王波】は自身よりもパワーが低いモンスターを1体破壊できる。

 進化した事で〈シルバリオン・ドラゴン〉のパワーは14000。さらにパワーダウンしている〈ディザスター・ネルガル〉はパワー12000となっている。

 白銀の竜が放つ咆哮は、冥府の神であろうとも容赦なく粉砕した。


「これで貴様の切り札は破壊した。次はそのライフを貰うぞ!」

「仕方ありません、ライフで受けましょう」


 巨大な竜の尻尾が、凪の身体に叩きつけられる。

 一撃は確実にライフを削り、ウイルスは平等に痛みを与えてくる。


「ぐっ、うぅ」


 凪:ライフ10→7


「まだ……続ける! 〈シルバリオン・ドラゴン〉で2回攻撃!」

「その痛みを刻み込む事だな。貴様らが撒いてきた厄災の痛みを!」


 声に怒りが乗る〈シルバリオン・ドラゴン〉。

 そのまま防御をする様子がない凪へ、鋭い爪を振りかざした。


 凪:ライフ7→4


「ッ! 流石にこれは痛みますね。ですが残りのモンスターの攻撃なら――」

「〈シルバリオン・ドラゴン〉で攻撃」

「なっ!? まだ攻撃可能だったのですか」


 通常モンスター・サモナーでは【2回攻撃】というキーワード能力を使って連続行動を行う。

 その他にも攻撃回数を増やす効果を持つカードは存在するが、基本的に3回以上の行動には何かしらのの発動条件がつく。

 真波(まなみ)が使う〈シルドラ〉も相手モンスターを2回以上破壊する事で、初めて2回目の攻撃が可能になっていた。

 だが〈シルバリオン・ドラゴン〉は違う。条件らしいものを満たした形跡はない。


「甘く見るなよ雑種。我の能力は無条件の【3回攻撃】だ」

「3回攻撃、無条件の!?」


 真波の最後の切り札〈【銀嶺王竜(ぎんれいおうりゅう)】シルバリオン・ドラゴン〉の最大の強み。

 それはモンスター・サモナー史上初の【3回攻撃】を持つモンスターである事。

 流石にここまでの能力は想定していなかった凪は、僅かに表情から余裕が消える。


「いって〈シルバリオン・ドラゴン〉」

「覚悟は出来ただろうな……下種よ」


 口の中に白銀の光を集めながら、〈シルバリオン・ドラゴン〉は凪に言い放つ。

 この一撃に己の怒りを、真波の意思を、そして死した者達の嘆きと無念を乗せる。


「喰らえ。ラスタァァァストリィィィィィィム!」


 白銀の光は破壊エネルギーと化して、〈シルバリオン・ドラゴン〉の口から凄まじい勢いで解き放たれる。

 ウイルスの影響が出ている今、まともに喰らえばただでは済まない。

 だが凪は落ち着いた様子で、手札から1枚のカード発動した。


「魔法カード〈天地反転の烈風〉を発動」


 発動された魔法カードが新たな風を巻き起こす。

 風は光すらも歪曲させて、〈シルバリオン・ドラゴン〉が放った攻撃をあらぬ方向へと捻じ曲げてしまった。


「なんだと!?」

「〈天地反転の烈風〉の効果。このターン私が受けたダメージと同じ枚数分、自分のデッキを破棄します」


 このターン凪が受けたダメージは6点。

 よって凪は自分のデッキを6枚破棄する。


「そして破棄した枚数と同じ数値分、このターン私が受けるダメージを減らします」

「クッ。6点もダメージを減らすとはな」

「さらにデッキから墓地へ送られた〈宝玉簒奪(ほうぎょくさんだつ)颶風(ぐふう)〉を発動。【禍風(まがつかぜ):5】を行って2枚ドローします」


 攻撃を防がれただけでなく、手札まで増やされてしまう。

 これ以上は攻撃を仕掛けても無駄なので、真波は静かに悔しさを堪えながらターンを終えた。


「……ターンエンド」


 真波:ライフ7 手札3枚

 場: 〈【銀嶺王竜】シルバリオン・ドラゴン〉 〈【輝士団長(きしだんちょう)】エグゼキューター〉〈シルバーナイト〉


 ライフは削りきれなかったが、ブロック可能なモンスターは残っている。

 真波はひとまずの防御はできると踏んで、凪の行動を注視するが、当の凪は冷静さを取り戻したのか既に落ち着いている。


「流石に少し驚きましたが、防いでしまえばどうという事ありません」

「貴女も政帝も、一連の騒動の果てにどこを見ているんですか」

「理想と幸福。本当にささやかなものですよ」


 見つめる場所は遥か遠く。

 ただの一点すら曇りなく、自分の選んだ道を進む。

 その過程には一切の関心を向けない。あるのは正しく進めたか否かという結果のみ。

 それが今、真波の前に立っている風祭凪という人間であった。


「私のターン。スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 止まれない場所まできた。止まる理由もない。

 凪は道に転がる石を排除するために、ファイトを進める。


「メインフェイズ。召喚コストで【禍風:3】を行い〈タービュランス・スペクター〉を召喚します」


 召喚コストによって凪の墓地から1枚、真波の墓地から2枚のカードがデッキに戻る。

 そして召喚されたのは、如何にもなボロ布を被ったオバケ。

 布の下からは風が漏れ出ているモンスターであった。


〈タービュランス・スペクター〉P5000 ヒット1


「ボクの墓地にまで干渉できたの……!?」

「そうです。【禍風】によってデッキに戻すカードは、私の墓地である必要はありません。必要に応じて自由に割り振れます」


 予想外な動きを見せてきた凪に、真波は少し驚くが……まだ大丈夫だと考える。

 凪の切り札は既に墓地へ送った。仮に蘇生するにしても〈ディザスター・ネルガル〉の召喚コストは重くて簡単には払えない。

 墓地にカードがあるとはいえ、蘇生できるような状態とは思えないので、真波は他のモンスターで攻めてくると考えていた。


「仮にも評議会に入るファイター。流石に普通のやり方では厳しそうですね……魔法カード〈冥府壊門(めいふかいもん)の暴風〉を発動」


 凪が魔法カードを発動した瞬間、フィールドに凄まじい暴風が巻き起こる。

 同時に暴風は空間を破壊して、墓地とフィールドを繋げてしまった。


「【禍風:10】を行う事で、私は墓地から系統:《嵐牙(らんが)》を持つモンスターを1体復活させます」

「だけどそんなに墓地のカードを戻せば、〈ディザスター・ネルガル〉は出せない」

「何を勘違いしているんですか? 貴女のおかげでコストは消えるのですよ」


 凪の墓地から10枚のカードが暴風に巻き上げられてデッキへと戻る。

 真波は凪の言葉の意味が分からず困惑していた。


「〈冥府壊門の暴風〉の効果。墓地のカードが0枚のプレイヤーが存在するなら、復活させるモンスターの召喚コストを無視できる」

「なっ! それじゃあ」

「蘇りなさい〈【災禍の嵐神】ディザスター・ネルガル〉」


 破壊された空間を通り抜けて、冥府の神が再びフィールドへと舞い戻る。


〈【災禍の嵐神】ディザスター・ネルガル〉P15000 ヒット2


 お互いに墓地のカードは少なく、仮に攻撃しても〈ディザスター・ネルガル〉は効果でヒットを上げられない。

 仮に頑丈な壁役として運用しようにも、真波には〈シルバリオン・ドラゴン〉がいる。

 パワーを操作できれば耐性を無視して破壊できる以上、ただ復活させるだけでは意味が薄い。


「まさか」


 真波の中に浮かび上がる一つの可能性。

 ウイルスカードのオリジナルを持つという彼らだからこそできる、最大の脅威。

 その予想に当たりだと言わんばかりに、凪は手札から1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。


「魔法カード〈【暗黒感染】カオスプラグイン〉を発動します」

「やっぱりウイルスカード」

「どうせいつか感染するんです。それが早いか遅いかの違い」


 だが次の瞬間、凪の身体からパチパチと電気が弾けるような音が聞こえてくる。

 苦悶の声が漏れ出る中、凪の肌には黒い痣のようなものが広がり始めていた。

 黒い痣からは、黒く禍々しい電気のようなものが弾ける音を立てている。


「ぐっ、あァァァァァァァァァッ!」

「あれは、全てウイルスか……あの女、自らの身体にどれだけのウイルスを流し込んでいるのだ!?」

「この生命も、この身体も、あの人の理想を叶える為なら惜しくない」


 苦痛に耐えながら顔を上げて言葉を紡ぐ凪。

 その目はウイルスの影響で赤く染まっており、まるで彼女の中で蠢いている狂気を表しているようであった。


「私は〈カオスプラグイン〉の効果で〈ディザスター・ネルガル〉を除外ッ!」


 ウイルスの力によって、フィールドにドス黒い魔法陣が出現する。

 魔法陣は冥府の神を引き摺り込み、より邪悪な存在へと書き換え始めた。


「闇に染まりて今こそ目覚めよ! ()が使命は世界の終焉なり!」


 そして魔法陣は内側から何かの牙で喰い破られる。

 冥府の神は邪悪に飲まれて、より闇に塗れた姿でフィールドに舞い戻ってきた。


「カオスライズッ! 来なさい〈【嵐神の感染】カオスヘイトレッド・ネルガル〉!」


 現れたのは黒を主体として、青と金の色が混じった体毛を持つ巨大な獅子。

 背中からは鳥類のような翼が生えているが、それ以上に悍ましいのは身体のあちこちから生えている鎌だろう。

 もはや理性もなく獣同然に堕ちたような変化だが……真波と〈シルバリオン・ドラゴン〉が最も言葉を失ったのは、そのモンスターのパワーであった。


〈【嵐神の感染】カオスヘイトレッド・ネルガル〉P30000 ヒット4


「バカな、パワー30000だとッ!?」

「元のパワーの倍。これがオリジナルのウイルスの力」

「ここまで使ってあげたのです。流石にこれで落ちてくださいね。アタックフェイズ!」


 黒い痣から与えられる痛みに耐えながら、凪は叫ぶように攻撃開始を宣言する。


「〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉で攻撃!」


 攻撃宣言と同時に、黒い獅子の咆哮でフィールドに暴風が発生する。

 今までの比でない激しい風が、墓地のカードを巻き上げてデッキへと戻す。


「攻撃時効果で【禍風:∞】を発動! お互いの墓地からカードを好きなだけデッキに戻す」

「好きなだけ!? まさか」

「私は墓地のカードを全て持ち主のデッキへ!」


 暴風によってカードを巻き上げられた事により、2人の墓地は0枚になる。

 これこそが凪の狙い。

 嵐牙の風は禍いを呼び起こす。〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は風を黒く染めて、更なる能力を発揮した。


「〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉のメイン効果。墓地にカードが存在しないプレイヤーの数だけ、相手のモンスターを墓地へ送る」

「お互いの墓地が0枚になったから、2体……!?」

「私は〈シルバーナイト〉と〈【輝士団長】エグゼキューター〉を墓地へ!」


 黒い獅子が巻き起こした風は災禍を招く。

 一度咆哮上げると、風が死を乗せてやってくる。

 効果の対象となった騎士は瞬時に腐食していき、ボロボロと崩れ去ってしまう。


「〈エグゼキューター〉の【ライフガード】発動! 回復状態で場に残す」


 どうにか〈エグゼキューター〉は助かったが、〈シルバーナイト〉は腐食に抗えずグズグズに崩れて消滅してしまった。

 そして〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉の攻撃は続いている。


「〈エグゼキューター〉でブロック!」


 流石にヒット4の攻撃をまともに受けるわけにはいかないので、真波はやむを得ず輝士団長で防ぐ事にした。

 黒い獅子の鎌で引き裂かれ、〈エグゼキューター〉はその身体を喰らい尽くされてしまう。

 ひとまずダメージは免れたと真波は思ったが……


「〈タービュランス・スペクター〉の効果。私のライフが5以下で私の墓地が0枚なら、系統:《嵐牙》を持つ他のモンスターに【貫通】を与えます」

「貫通、最初からそれを狙って墓地を空にしてきた……!?」

「言ったはずです、早急に済ませると」


 黒い獅子の身体から幾つもの鎌が射出される。

 防御の術はなく、それらは容赦なく真波へと襲いかかってきた。


「マナミィィィ!」

「きゃぁぁぁ!」


 真波:ライフ7→3


 ダメージが実際に身体を傷つける。

 真波の腕や足、頬は切りつけられて血を垂れ流している。

 今までのウイルス戦とは比較にならない痛み。

 何より異質だったのは、傷口から徐々に黒い痣のようなものが広がっている事である。


「これ、嵐帝と同じ」

「バカなッ、もう感染し始めているだと!」


 傷の痛み、感染の痛み。

 流れる血を気にする間もなく、真波は凪による追撃を相手する事になった。


「〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は1ターンに1度回復できます。もう一度攻撃! そして効果発動!」


 二度目の攻撃時効果は避けられない。

 今度は〈シルバリオン・ドラゴン〉が墓地へと送られてしまう。


「させない! 〈シルバリオン・ドラゴン〉の【ライフガード】を発動! 回復状態で場に残す。そしてブロック!」


 どうにか生き残ってブロックも行えたが、このままパワー勝負に負ければ【貫通】によるダメージが入ってしまう。

 そうなれば真波の負けだ。〈シルバリオン・ドラゴン〉は振り返って自分の相棒に叫ぶ。

 

「これを喰らえば後がない、マナミッ!」

「魔法カード〈キングオーラ!〉を発動! ライフを1点支払い、ボクの場のモンスターはパワーが+3000される!」


〈【銀嶺王竜】シルバリオン・ドラゴン〉P14000→P17000


 ライフコストの痛みが走るものの、真波はどうにか立ち続ける。

 だがまだまだパワーは足りない。


「その程度のパワー上昇では防げません」

「こっちが本命。〈キングオーラ!〉の【ロードストライク】を発動! バトルしている相手モンスターのパワー分の数値を、〈シルバリオン・ドラゴン〉のパワーに加算するッ」


 つまりどれだけ相手のパワーが高くとも、確実に戦闘破壊をする能力。

 たとえ規格外のパワーを持つ〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉といえども、純粋なパワー勝負に勝てるなら道は拓ける。


〈【銀嶺王竜】シルバリオン・ドラゴン〉P17000→P47000


「これでパワーは我が上だッ! 王の前から疾く失せろ、獣がァァァァァァ!」


 絶叫しながら、〈シルバリオン・ドラゴン〉は黒い獅子の翼を鷲掴む。

 そして抵抗が難しい至近距離まで顔を近づけると、そのまま必殺の一撃を叩き込んだ。


「ラスタァァァストリィィィィィィム!」


 白銀の光が噴流となり、黒い獅子を飲み込む。

 圧倒的なパワー差を前にして、〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は返り討ちにあってしまった。

 敵の切り札を蹴散らし、息を荒くする〈シルバリオン・ドラゴン〉。

 残りのモンスターではライフを削り切る事はできない……真波達はそう思っていたが。


「何故だ……何故、まだ場に残っている」


 声を震わせる〈シルバリオン・ドラゴン〉。

 確かに破壊したはずであった。

 しかし凪の場には何故か、〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉が回復状態で場に残っていたのだ。


「なんで、倒したはずなのに」

「〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉の効果です。墓地のカードが0枚のプレイヤーが存在する限り、このカードは破壊されても回復状態で場に残る」


 効果を聞いた瞬間、真波は理解してしまった。

 現在凪の墓地にはカードが存在しない。

 このターン中に倒そうとするなら、最低でも凪の墓地にカードを置いた上で除去しなければ……〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は無限に蘇り続ける。


「倒せ、ない……」


 突破できない壁を前にして、真波の心が絶望に染まる。

 そして回復状態になったという事は、もう一度攻撃が可能という事でもあった。


「これで最後です。〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉で攻撃ッ! そのドラゴンには今度こそ退場してもらいます!」


 悍ましい咆哮を上げて、黒い獅子は白銀の竜へと飛びかかる。

 必死に抵抗を試みるも、既に【ライフガード】を使ってしまった以上〈シルバリオン・ドラゴン〉に耐性は残っていない。


「グっ、このッ! マナミ、防御を!」


 それだけを言い残して、〈シルバリオン・ドラゴン〉は墓地へと葬られてしまった。

 もう真波にブロック可能なモンスターは残っていない。

 残りライフ2という絶体絶命の状況だが……まだ真波の目には光が残っていた。


「諦めない。ボクはまだ諦められない! 魔法カード〈キングダムウォール!〉を発動!」


 藍もツルギも、きっと今のように困難な状況に陥っても決して諦めないだろう。

 ならば自分はせめて、彼らの前に立つ帝王として、ここで諦めるわけにはいかない。


「相手モンスター1体の攻撃を無効にする! これで――」


 このターンは凌げる。

 そう、確信した瞬間であった。

 魔法効果で真波を守るように展開されていた光の壁が、ガラスのようにひび割れて、砕け散ってしまった。


「魔法カード〈タイムバインド〉。貴女の策は私達に届かない」


 凪の発動した魔法カードによって〈キングダムウォール!〉は無効化されてしまう。

 砕け散る光の壁はまるで真波の心のようでもあった。

 全てを断たれてしまった真波に、もう反撃の手段は残されていない。


「今度こそ終わりです……さようなら九頭竜(くずりゅう)真波」


 放心状態の真波に、黒い獅子は前足を上げる。

 そして最後の生命を叩き潰すように、獅子は真波に向けてその爪を振り下ろした。


 真波:ライフ2→0

 凪:WIN


 衝撃と共に真波の身体は後方へと吹き飛ばされる。

 召喚器からはカードが飛び散り、中からシルドラが叫びを上げた。


「マナミィィィィィィ!」


 黒い痣は広がり、血は飛び散る。

 相棒が名を叫んでも、真波の返事は無かった。

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