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第百五十九話:【無色の】覇仁邏王斬【本気】

「ドローフェイズ。メインフェイズ!」


 ツルギ:手札3枚→4枚


 多人数戦で時間がかかってしまったけど、ようやく俺のターンが回ってきた。

 盤面としては智代(ちよ)ちゃんがモンスター2体でブロッカーも残っている。

 (まい)ちゃんはモンスター3体で同様にブロッカーがいるけど、こちらは【デコレーション】の能力によって互いに強化し合っている。

 となれば先に倒しておきたいのは舞ちゃんだな。


「まずは魔法カード〈ザ・無色スクランブル!〉を発動」

「2枚目あるのー!?」


“うっわ2枚目とマジか”

“まさかとは思うけど他のカードも複数積みとか?”

“↑笑えないジョークだ”


 舞ちゃんと一瞬にリスナーの皆様も似たようなリアクションをしてくる。

 そういえばこの世界って一部の特殊なカードを除くと同名カードの複数積みってあまりしないんだよな。

 カード資産諸々の関係がデカいんだろうけど……前の世界では普通にあったSRカードの3積みとか全く見ないし。

 とりあえずカードをオープンして効果処理を続けるか。


 オープンしたカード:〈ストライク・マイスター〉〈オブシディアンの封印竜〉〈超電磁バトル〉〈フューチャードロー〉


「よし、大当たり2枚! バニラモンスターである〈ストライク・マイスター〉〈オブシディアンの封印竜〉をノーコスト召喚!」


 どちらも召喚コストを要求する大型バニラモンスターだ。

 俺の場に2つの魔法陣が現れ、そこからモンスター達が出現する。

 白衣のようなアーマーに身を包んで、巨大なスパナを抱えた整備士のようなロボット。

 そしてもう1体は巨大な黒曜石を砕いて、その中から現れた黒いドラゴンだ。


〈ストライク・マイスター〉P7000 ヒット2

〈オブシディアンの封印竜〉P9000 ヒット3


「えー!? バニラなのにパワー9000もあるのー!?」

「さっきも言ったけど、召喚コストは効果に含まないからな。こういう奴もいるんだよ」

「あの先生、その〈オブシディアンの封印竜〉の召喚コストって……」

「自分の場のモンスターを2体破壊して召喚です。できれば正規召喚なんて絶対にしたくない」


 ライフ1点の支払いを要求する〈ストライク・マイスター〉ならともかく、自軍モンスター2体をコストにするバニラは重すぎる。

 正直〈ザ・無色スクランブル!〉なんかの踏み倒し系カードで出せなかったら手札でほぼ腐る可能性もあるからな。

 とはいえ〈オブシディアンの封印竜〉自体はバニラの中ではパワーが高い方だし……ギリギリ現実的に正規召喚できそうなカードだから採用しています。


”モンスター2体を犠牲にしてバニラかぁ……“

”↑パワーとヒットはあるけど……バニラなんだよなぁ“

”↑踏み倒せたらデカいけど……コストは払いたくないな“

”ねぇ待って、パワー9000ヒット3のデカブツに破壊耐性が付与されてるとかいう地獄絵図になってるんだけど“

”↑うわマジだふざけんな“


 お気づきになりましたかリスナーの皆様。

 これこそ【バニラコントロール】の目玉のひとつ。

 コストを踏み倒して召喚したデカいバニラに、破壊耐性を与えてついでに魔法もカウンターしていく。

 相手の嫌がる顔を見るために精一杯頑張れる、カードゲーマーの青春を体現したようなデッキだ。


「2枚目があるのはコイツもだ。魔法カード〈バニラドロー!〉を発動!」

「せんせぇー! その2枚目は血も涙も無いとおもいまーす!」


 ダメです舞ちゃん、3枚ドローさせていただきます。


 ツルギ:手札3枚→6枚


「おっ、良いカード引いた。魔法カード〈クイック・アームド〉を発動」

「くいっくあーむど?」

「なんか、名前からしてアームドカードのサポートな気がする……」


 智代ちゃん大正解。


「この魔法カードは自分の場にあるアームドカードを1枚選んで、武装(アームド)条件を満たしている他のモンスターに移すカードだ。俺は〈第十三代スーパー無色無敵セイバー〉を〈見習いナイト〉から〈オブシディアンの封印竜〉に移動武装させる」


 さらにこのカードは1枚ドローのオマケがついている魔法だ。

 こういうオマケの1ドローが嬉しいよね。


 ツルギ:手札5枚→6枚


”ん? これ武装先を変更するメリットってあるのか?“

”というかカード効果で変更してたけど、アームドって付け替えは自由だったような気がするけど“

”↑あれ? そうだっけ?“


 おっとリスナーの皆様から疑問が出ているな。

 それでは解説させていただきましょう。


「確かにアームドカードは、自分のメインフェイズ中であれば自由に武装と武装解除ができる。ただし武装解除をする為には、解除後にアームドカードが存在できる場が必要になるんだ」


 サモンはルール上、モンスターとアームドは合わせて3枚までしか場に出せない。

 モンスターに武装してしまえばアームドは武装先と1つの場を共有できるが、解除する場合は解除後の場を確保しないといけない。


「だから基本ルールを使ってモンスターにアームドを付け替えようとすると、モンスターは2体までしか出せないんだ」


 モンスターAの武装を解除して、そこからモンスターBに移すという手順になるからな。


「あっそっか! せんせぇは〈バニラドロー!〉を使いたかったから、モンスターを3体出したかったんだ!」

「舞ちゃん大正解。しかも〈クイック・アームド〉があれば、相手ターン中に武装先を変えたりもできるからな。〈無色無敵セイバー〉の効果も最大限活用しやすいってわけだ」

「へー、すごーい……でも今相手してるのあたし達だー!?」


”へー、ためになるなぁ“

”なるほど、アームドの運用って癖あるから困ってたんよね“

”舞ちゃんのリアクション可愛い“

”でも舞ちゃんもCHIYOちゃんもブロッカーはいるから大丈夫やろ“

”↑おいコラそれフラグって言うんだよ“


 リスナーさん、フラグ立てご苦労様です。

 じゃあ今から回収しますね。


「コントロールというデッキタイプの本領は色々とあるけど、基本となる考え方は相手の動きを阻害する事にある」

「えっと……カード効果の無効化や、盤面除去ですね」

「CHIYOちゃんその通り。俺は〈無色無敵セイバー〉で魔法の無効化は使ったから……次は除去の出番だ」


 そう言ってから俺は、1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。

 これが【バニラコントロール】最強の除去魔法!


「魔法カード〈無色無敵奥義・覇仁邏王斬(バニラおうざん)〉を発動!」

「先生、カード名がバニラ過ぎます」


 仕方ないじゃん、そういうカードなんだし。

 とりあえず発動コストで俺はバニラモンスターである〈見習いナイト〉と〈ストライク・マイスター〉を墓地に送ります。


”無職無敵奥義……だとッ!?“

”俺らの必殺技が実装されていたとは“

”↑勝手に仲間に入れるな“


 だから無職じゃなくて無色だと言ってるだろリスナーよ。

 気を取り直して効果処理を始めよう。


「〈無色無敵奥義・覇仁邏王斬〉は発動コストで墓地に送ったモンスターの数だけ、相手モンスターを墓地に送れる。俺が墓地に送るのは 〈キャラメルハッド〉と〈タピオカ・バエケイ〉だ!」

「あたしのモンスターだけー!? でもせんせぇ〈キャラメルハッド〉の【デコレーション】で、あたしの系統:《星菓》を持つモンスターが破壊される時、代わりに自分破壊できるんだよ!」


 ドヤ顔で能力を発動しようとする舞ちゃん。

 【デコレーション】によって能力は他のモンスターにも与えられているから、舞ちゃんは〈タピオカ・バエケイ〉を身代わりで破壊しようとする。

 だけど残念ながらそれはできない。


「悪いけど、効果は発動する事なく墓地に行ってもらいます」


 魔法効果によって飛んできた斬撃を食らって、見事に爆散してしまう舞ちゃんのモンスター2体。

 身代わり効果が発動しなかった事に驚いたのか、舞ちゃんはポカンとした表情を浮かべている。


「え〜、なんで効果が発動しなかったの〜!?」

「〈キャラメルハッド〉の身代わり効果が使えるのは、モンスターが破壊される時だろ?」

「うん。だから今――」

「この魔法、破壊じゃなくて墓地に送る効果だからな」


 同じに見えるだろ? 全く違うんだよ。

 墓地に送る効果って通用しやすいから便利なんだよな。


”破壊じゃなくて墓地に送るって……“

”↑同じじゃないですかー“

”↑違うのだ……違うのか?“

”あっ、このルールは知ってる。『破壊』と『墓地に送る』は似ているけど別物だぞ“

”↑うわサモンむずかしい”


 リスナーも混乱しているけど、舞ちゃんも頭から煙吹き出しているな。

 気持ちはわかるぞ、俺も最初は意味不明だった。

 でもこの魔法はこれで終わらない。


「〈無色無敵奥義・覇仁邏王斬〉の追加効果を発動。自分の場に〈第十三代スーパー無色無敵セイバー〉を武装しているモンスターがいれば、そいつに発動コストで墓地に送ったモンスターにヒット数を加算して【2回攻撃】を与える」


 今武装しているのは〈オブシディアンの封印竜〉なので、ヒット数はこうなる。


〈オブシディアンの封印竜〉ヒット3→8


“ヒット8の【2回攻撃】wwwwww“

”もう数字がバカすぎて笑うしかないwwwwww“

”対戦相手にこんなん出されたら漏らすわ! 漏れたわ!“

”やべぇ、舞ちゃんが真顔というかチベットスナギツネくらい虚無顔だ“

”↑これもう配信事故だろ“

”流石は蛇姫のお兄さん。加減を知らなさ過ぎるたすけて“


「まだ手心ある方だからアタックフェイズ! 〈オブシディアンの封印竜〉で舞ちゃんに攻撃!」


 攻撃宣言で我に返ってのか、舞ちゃんは慌ててカードを手札から使う。


「魔法カード〈ディフェンスシフト〉を発動しまーす! 効果であたしのモンスターを回復。せんせぇの攻撃は〈チョコペンドラゴン〉でブロック!」


 魔法効果で回復してブロックをしてきた〈チョコペンドラゴン〉。

 ここで他のカードを使っても良かったけど、ここは通しておこうか。

 そして〈オブシディアンの封印竜〉は手にした剣……を使わずに、素手で〈チョコペンドラゴン〉の首を鷲掴みにする。

 剣、使えよ。


「ブロック後に魔法カード〈ギャンビットドロー!〉を発動しまーす! 〈チョコペンドラゴン〉を破壊して2枚ドロー!」


 舞:手札0枚→2枚


 ブロック宣言自体は成功しているから、攻撃は防げている。

 その上で倒されるモンスターをコストにして手札に変換したわけだから、上手いプレイングだな。


「だけどまだ【2回攻撃】がある。いけ〈オブシディアンの封印竜〉!」

「手札から〈マーマレッド〉の効果を発動! このカードを捨ててモンスターの攻撃を無効化、あたしはライフを1点回復!」


 2枚目を引いていたのか。

 舞ちゃんが使ったモンスターの効果によって、マーマレード塗れになってしまう〈オブシディアンの封印竜〉。

 ベトベトで粘性があるのか、動けなくなって攻撃をやめてしまった。

 ……アレこういう演出の効果だったんだな。


 舞:ライフ5→6


「ふぇ〜、これでせんせぇから生き残れた〜」

「魔法カード〈ホワイトリボン〉を発動」

「もう嫌な予感しかしないよー!」


 でしょうね。こういう追撃したい場面の為に温存しておいたカードだからな。


「墓地から重複する系統を持たないバニラモンスターを2体復活させる」


 もちろん召喚コストも踏み倒すぞ。


「来い〈見習いナイト〉〈オブシディアンの封印竜〉2体目!」


 先程コストで墓地に送られた騎士と、さっき墓地に送っておいたドラゴンが俺の場に復活する。


「これでヒット数は合計6。トドメにいくぞ〈見習いナイト〉で攻撃!」

「びゃぁぁぁ!? 魔法カード〈スウィーティー・キャメロット〉を発動ー! 墓地の〈キャラメルハッド〉を除外して、せんせぇのアタックフェイズを強制終了――」

「〈無色無敵セイバー〉の効果で、武装している〈オブシディアンの封印竜〉自身を破壊して、魔法を無効に!」

「そうだったー!」


 テキスト的に武装している自身をコストにできる事を失念していた舞ちゃん。

 これでもう防御手段はないだろう。

 俺がそう思った次の瞬間――


「手札を1枚捨てて〈左龍院(さりゅういん)アオ〉の効果を発動! 回復状態の〈オブシディアンの封印竜〉を疲労させます!」


 智代ちゃんのモンスターの効果で、今蘇生した〈オブシディアンの封印竜〉が疲労してしまった。

 なるほど。俺を倒すという勝利条件を達成する為なら、良いサポートとプレイングだ。

 とはいえ追撃は防げても、今攻撃している〈見習いナイト〉は止まらない。


「びゃあッ!?」


 舞:ライフ6→3


「残りライフほとんど残ってないよ〜」

「でも流石に先生はもう攻撃でき――」

「魔法カード〈リブート〉を発動。〈オブシディアンの封印竜〉を回復させて舞ちゃんに攻撃」


 俺が最後の一撃に繋がる魔法を使った瞬間、舞ちゃんの顔が真っ青になった。

 だがすまない、これが今の最善手なんだ。


“鬼、悪魔、殺戮兵器!”

“アレだけ防いでもまだ追撃くるんですか(震え声)?”

“確か蛇姫のお兄さんって、JMSカップで無限攻撃とかしてなかった?”

“↑有限なら有情か(感覚麻痺)“


「も、もう防御できませーん!」


 そして黒いドラゴンの口から放たれたビームを正面から受けてしまう舞ちゃん。

 残っていたライフもそれで吹き飛んでしまった。


 舞:ライフ3→0(脱落)


「流石にもう動けないからな……ターンエンド」


 ツルギ:ライフ7 手札2枚

 場:〈オブシディアンの封印竜〉〈見習いナイト〉


 舞ちゃんが脱落した事で、次は智代ちゃんのターンになる。

 まだ智代ちゃんの場には【バズドライブ!】を持つモンスターがいるので、俺のデッキトップは表になったままだ。


(今のデッキトップは……〈ストライク・マイスター〉か)


 ヒット2のモンスターカード。【バズドライブ!】は2回発動できる状態か。

 今俺の手札には……そういえばさっき〈バニラドロー!〉で引いたコレがあったな。

 せっかくの配信なんだし、ちょっと映えそうな動きでもしてみるか。


「舞ちゃんの犠牲、無駄にはしないッ! 私のターン!」


 そして智代ちゃんのターンが始まる。

 ファイトももうすぐ終わりそうだな。

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