ひめ
「なんだって?」
と、突如始まったのは、王様の一言からだった。
「俺は音楽家になりたい!」
王様へ堂々と言った勇者。王様は頭を抱える。なぜなら姫が悪魔に連れ去られたのである。王様は腕に覚えがあるものを賢者に推薦させていた。賢者は失神した。
ところが、一年後、勇者は姫を連れ戻す。楽器だけで、どうなっているのか?
「全く覚えてないわ」
と、姫の供述。
「覚えてない? ならば思い出させてあげます!」
勇者はヴァイオリンを構え、演奏を始めた。ギー、ギギー、なんたる醜悪。ローソクの火が消え、窓が割れ、王様は失神、「やめてー!」と姫の声も虚しく、気絶する者多数、魑魅魍魎達も逃げる。だから姫を連れ戻すことができたのだ。めでたしめでたし。
「つまんなーい」と、子供達からのクレーム。これは紙芝居である。
「そうか? なら、こういうのはどうだ?」
姫が連れ去られて一日目。
「私を拐ってどうするつもりよ?」
「がはは、この大悪魔【コクリカン】の嫁にするのだ!」
「はぁ? 仕方ないわね。お父様から禁じられてたけど、は!」
姫のボディブローがコクリカンにヒットする。
「な、なかなかやるな! 力づくで服從させてやるか!」
姫とコクリカンが殴り合いを始めた! 姫がボディブローで攻めるのは身長差もあるが、ボディブローは地味に苦しいらしい。(あしたのなんたらより)。コクリカンは距離を取り、魔法を使った!
「えー!」「ズルい!!」子供達からブーイングの嵐。
「作り話なんだからいいだろ!」
「じゃあ姫も魔法使えるようにして!」
女の子からの提案。仕方ない。
「ファミ・チキタ・ノム・ノユウキ・イル・ヨネ」
と、姫が唱えるとバリヤーができた!
「なんだと!」
そこへ、勇者が現れる!
「姫と言うのは誰か!?」
ここに魑魅魍魎いれど、人間は一人、わかりそうなものだが。
「面倒だ。俺の演奏を聴け! 【破壊音頭】!」
ギー、ギギ、ギーギギギギ!
「うわっ、何この音!」
姫が混乱。コクリカンは耳がいいので失神、他の悪魔も。
「さ、姫とやらを出せ!」
「私よ!」ボコッ!
「ぐはっ!」
姫は勇者を殴った。
「それより、これからの事だけど、私が格闘していたのは黙っていてよね!」
「なぜだ?」
「はぁ? わからない? 姫っていうのは、可愛く、美しく、儚く、清楚で可憐なイメージなのよ!」
「よくわからんが帰るぞ」
大丈夫か? と、思った姫だが、これは勇者と姫だけの秘め事になりそうだ。