弱いさかな
弱魚イワシ
「魚」に「弱」と書いてイワシと読む。そんな屈辱的な字をあてがわれていることを知り、憤慨したイワシの群れがあった。
「確かに我々イワシは魚類の中では食物連鎖の最下層に位置する。この状況を打開すべく、より大きく、強くならなければならない。」
群れのリーダーの呼びかけに対し多くのイワシが共鳴した。それからというもののイワシたちは意識的に泳ぐ距離を伸ばしてみたり、エサを大量に食べたりしてみたり、強くなるための努力を続けてきた。
その甲斐あってイワシたちの体は従来より大きくなり、泳ぐスピードも飛躍的に上昇した。イワシは魚類食物連鎖の中間層にまで昇格し、海の世界でも一目置かれる存在となった。
近年、茨城県の海岸沿いの市町村では、身の締まった大きなイワシが食べられることで観光客が微増している。
イワシが「強魚」になれる日はくるのだろうか。