ずっと嘘をついていました
こんにちは。
たらこくちびる毛です。
今日はちょっと大切なお話をしようかと思います。
その前に、私のことについて少しお話ししましょうか。
私は埼玉県生まれ千葉県育ちという、関東第三位を自称する県をまたいで幼少期を過ごしました。
そのため、私の身体には第三位の血が色濃く残されているのです。
例えば運動会。
第三位は譲れませんでした。
かけっこも障害物競争も借り物競争も、必ず第三位になるように調整していました。
あまり足が速くないもので、かけっこが得意な同級生一緒に走ることになった時は死に物狂いで走りました。
逆に頑張りすぎて2位になった時は絶望しましたね。
勉強も第三位を目指しました。
学年第三位は難しいですが、クラス第三位ならギリギリ狙えたので、勉強を頑張りました。
がっ……やはり三位狙いは難しく、15位とか18位のあたりを往ったり来たりしていました。
私は頭があまりよくないのです。
大人になってからというもの、三番目という響きにあまりこだわりがなくなり、のほほんと過ごしていました。
しかし、ある日唐突に私のなかに眠る第三位の血が目覚めたのです。
お前の人生は本当にそれでいいのかと、呼びかけてきました。
すっかり一般人になりきっていた私は、再び第三位を目指すことにしました。
しかし……いったい何で三位を目指せばいいのか、皆目見当もつきません。
そこで思いついたのが、なろうで小説を書くことでした。
なろうにはランキングがありますよね。
マイナージャンルでなら月間三位も夢ではない。
そう思って挑戦したのですが……思った以上に第三位は難しい。
そもそも月間入りがクッソ難しい。
どうしたものかと困り果てました。
そこへ悪魔がやって来たのです。
俺と契約して第三位になってよ……と。
意味が分かりませんでした。
しかし、私の中に眠る埼玉と千葉の血がこういうのです。
第三位を他の奴に譲るなと。
私は自分の血の決意に逆らうことができません。
でも、悪魔と契約したらどうなるかくらい知っています。
だから……悪魔の手の届かない所へと逃げることにしました。
そこは世界で唯一第三位を意識しなくてすむ土地。
茨城県。
茨城に移住することで埼玉の呪いも、千葉の呪いも解けてしまいました。
もう第三位という響きになんの感慨もありません。
私は今、茨城の大洗で暮らしています。
関東の第三位争いにお呼びもかからない茨城であれば、私は平穏に暮らせるのです。
埼玉でも千葉でもなく、多分第四位にもなれない茨城県。
私にとって平穏に過ごせる唯一の場所。
ここはユートピアなのです。
今は大洗の某工場で明太子を製造する仕事をしています。
ラインを流れるたらこを一腹ずつ丁寧に箱に詰め、全国に出荷する仕事をしています。
そして……仕事中に突然、こんなことをひらめいたのです。
たらこに陰毛のような縮れ毛が生えていたら、きっと……人々は大いに混乱するだろうと。
そう、そのひらめきが私に悪魔のような選択をさせたのです。
私はたらこくちびる毛という、ありもしない架空の存在を演じ、エッセイを書いてなろうに投稿しました。
すると……みなさんは疑いもせずに、私のことを意思を持った水産加工食品として受け入れてくれたではありませんか。
最初は罪悪感で胸が痛みました。
しかし……私のくだらない嘘を楽しみにしてくれる読者の方がたくさんいる。
私は腹を決めてたらこくちびる毛なる、存在するはずのない水産加工食品を演じ続けることを決めました。
が……やはり限界があります。
私はもう、嘘をついて皆様を騙し続けることが嫌になりました。
皆様にお詫び申し上げます。
わたくし、たらこくちびる毛は毛の生えた水産加工食品などではなく、れっきとした人間でございます。
毛を動かしてキーボードをタイプしているとか、PCの前に座った水産加工食品とか色々とエッセイで言っていましたが、あれは全て嘘でございます。
このようなくだらない嘘をついて皆様を騙してしまったことを深くお詫び申し上げると同時に、これからは人間としてなろうで活動を続けていきたいと思います。
何卒、ご容赦いただければ幸いです。
たらこ。