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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

高校時代の、忘れられない出来事

作者: 城河 ゆう

 あれは、私がまだ17歳――高校2年生の頃の出来事です。



 田舎の山奥にある、全寮制の高校に通っていた私は、後輩との2人部屋だった自室で、夜中にふと目が覚めて、枕元の携帯電話で時間の確認をしました。



 時刻は夜中の1時過ぎ。



 先生の巡回が終わったのを見計らって、友人の部屋でお菓子やジュースを片手にお喋りしていたので、この部屋に戻って来てベッドに入ったのが、0時の少し前。


 なので、まだ1時間くらいしか経っていない事になります。



「(明日も授業あるし、早く寝よう。)」



 そう思って、口元まで布団を引き上げようとした瞬間。

 突然、ゾクッと寒気が走りました。



「(さっき、かなりジュース飲んだから、冷えたかな? ……仕方ない。)」



 トイレに行っておこうと、まだボーッとする目をこすり、あくびを噛み殺しながら、もぞもぞと布団から這い出して、後輩を起こさないように、そーっと部屋を出ます。


 私達の部屋は、1階の1番奥。


 トイレがあるのは中央ロビーの手前なので、そこまで40メートル程と言ったところでしょうか。


 ロビーの方へと歩きながら、ふと右手の窓から外を見ると、チラチラと白い雪が舞っているようでした。 


 

「(どおりで冷えるわけだ……)」



 首をすくめながら、スリッパをパタパタ鳴らして歩いていきます。



 そして、あと15メートル程で到着、と言う所まで来た時の事――


 窓も全部閉まっていたハズなのに、急に背後から、冷たい風が廊下を吹き抜けていったように感じたのです。




 不思議に思って立ち止まり、後ろを振り返った私は、聞いてしまいました……。




 1番奥、私達の部屋の前にある窓が、ガタガタと音を立てているのを……。



 風だろうか?



 一瞬、そう思ったものの、それにしては他の窓は静かです。



 「(もしかして、不審者?)」



 なんとなく気味が悪くなり、さっきまでいた友人の部屋に行って、一緒に見て貰おうか――




 そう考えて、ロビーの方に視線を戻そうとした――瞬間。




 ガタッ



 ガタガタッ



 ガタガタガタガタガタガタガタガタ




 1番奥で揺れていた窓が一際大きな音を立てた後、凄い勢いで“窓の揺れ”が近付いて来たのです。



 それがまるで、窓のすぐ側を“何か”が猛スピードで走ってくるようで――



「ひぃっ!!」



 全身に走った悪寒に急かされるように、咄嗟に身を翻して走り出す私。


 

 たかだか十数メートルが、異様に長く感じました。



 そんな私を嘲笑うかのように、あっという間に迫ってくる“窓の揺れ”。




 

 それが、丁度すぐ後ろまで来た所で、つい、窓の方を振り向いてしまった私は、その直後――見てしまったのです……。





 窓ガラスに写った、恐怖に顔を歪め、涙を浮かべた私の顔と――





 ――そんな私に食らい付こうとするかのように、大きく口を開け、血走った目をした――





 ――血塗れの、牛の生首を。

 



「――――っ!!!?」



 悲鳴も上げられず、ひきつった様な音を喉から漏らしながらも、必死に逃げようとした私は、足をもつれさせ転倒してしまいます。


 そんな私の耳に、ヴモォォォォオ――と言う唸り声のようなものを残しながら、そのまま通りすぎて行った“窓の揺れ”とそこに写った牛の生首は、そのまま廊下の終わりにあるロビー――その手前のトイレの壁へと入って行くようにして消えていきました。



 さっきまでが嘘のように静まり返る廊下。



 早鐘を打つ心臓と、それによって荒れる呼吸をなんとか抑え込みながら、半ば這うようにして、急いで自分の部屋の方へと戻った私は、しっかりと鍵をかけてから、壁に寄りかかりながら息を整えたあと、布団へと潜り込みました。


 しばらくは、目を閉じるとさっきの光景が目に浮かび、今日はもう寝られないかも、とも思いましたが、恐らく精神的な疲れのためか、いつの間にか眠りに落ちていたようです。







 翌日の昼休み、食堂で仲の良い友人にその事を話していると、近くを通りかかった先輩が、こんな事を教えてくれました。










 曰く、この学校と、寮が建っている敷地は、大昔、牛を育てている牧場だったらしい、と。









 曰く、たちの悪い感染症が流行り、牛達が半減したらしい、と。








 曰く、残った健康な牛達を守りながら、牧場を続けようとしていた牧場主だったが、感染症を撒き散らす悪魔だと思い込んだ地域の住民達によって、“夜中”に牛達の大虐殺が起こったらしい、と。







 曰く、その時に火を付けた人がいて、最後には、逃げ遅れた牧場主諸共に、全てが灰になったらしい、と。







「それ以来、毎年○○月△△日の、それくらいの時間になると、牛の生首とか、逆に首無しの牛の胴体とかが、敷地内を走り回るようになったんだって。 自分達を殺した奴らを探してるのかもね」







「――だから」







「その日の、その時間帯には、絶対に、何があっても、部屋から出たらダメだよ。 建物内には入って来ないらしいけど、見つかったら、何が起こるかわからないから……」







「あ、そうだ! 今回はアナタが牛の生首を見ただけで――」






 ――焼け死んだ牧場主に、顔、見られてないよね……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)オチがいいですね。すごいパンチ効いている。ラストの一文は内容をしっかりくみ取った人ほどトラウマになる文言。 [気になる点] A・)そういや~この作品が投稿されたときに家紋さんの牛の首…
[良い点] 最後怖い! こーわい! ホラーお上手です! ドキドキ。 ((( ;゜Д゜)))
[一言] こわいです(>_<) 焼け死んだ牧場主に顔をみられたらどうなったんでしょうか? 牛さんたちのご冥福をお祈りします(。-ω-)
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