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7. 認知

俺は認知されているのか?

エルナの配信を見て、「いつもありがとう」と言われたことで、俺は戸惑っていた。

ありがとうではなく、「いつも」である。


確かに既に何百回となくメッセージを送ってるし、同様に投げ銭も幾度となく繰り返しているはずだが、

他にも同様の人がいるはずだ。

みんな覚えていてくれるのか?

それとも俺だから覚えてくれているのか?

後者だと本当に嬉しい。

呼んでもらえたことを思い出し、ほくそ笑む。


そこからしばらく日が過ぎていった。

そして久しぶりのエルナとサーラのコラボ配信が始まった。

今回は二人でサーラがやりたかったという数時間程度の感動するシナリオのゲームを実況するという内容だった。


俺は開始から投げ銭メッセージを送る。

「今日はどんなストーリかほんと楽しみ」というコラボ時にはいつも送る内容だ。


そして二人はゲームを進めて行った。

エルナがゲームを操作して、エルナとサーラが会話しながらゲームが進んでいく。

ゲームのストーリは、過去にゲームか何かで見た感じのする既視感があるものではあるが、

俺はのめり込むように見ていた。

そして、最後のエンディングを迎える。

ヒロインは救われるが、主人公が死んでしまうという悲しい話ではあるが、感動のフィナレーレだった。


「このゲーム、最後に主人公がヒロインのために身を投げ出したのは悲しかった。」

サーラがそう言った。

「確かに悲しいけど、それでヒロインが救われたんだし、これで良かったんじゃないかな。

 ほら主人公も満足そうな顔してるし。」

エルナが画面をさして、茶化したように少し笑いながら言った。

画面には、空の上から満足げにヒロインを眺めている体が透けた主人公が移っていた。

主人公からすれば、自分が死んでしまっても、ヒロインを救えたから満足ということなのだろう。


「主人公は自分勝手」

苛立ちが感じ取れる声でサーラが言った。エルナは真面目な表情に戻る。

普段は絶対に怒ったりしないサーラにしては珍しい声だった。

「ヒロインからすれば、大切な人が死んじゃったんだよ。もう側にいないんだよ。

 嬉しいわけがないよ。」

サーラがそう言った後に気まずい空気が流れた。

エルナは場の雰囲気を変えようと笑顔を見せる。


「もう、むくれてかわいいんだから。」

エルナはサーラの頬を突くような素振りをして、言った。

いつもの空気に戻った気がした。


俺は思ったことをメッセージとして出すことにした。

"エルナちゃんはサーラちゃんのためなら、自分の身を投げ出して守りそう"


「守る。守る、サーラちゃんは身を投げ出しても守るよ。」

エルナが元気良くそう言うと、サーラが悲しそうに呟いた。

「恋人のためといって、自分を投げ出す人は好きじゃないかも。」


"何かあったの?"

「何かあった?」

俺がメッセージを送るのと同時にエルナがそう言った。


「別に。そう思っただけ。」

サーラが悲しそうに言った。

そして、ゲーム実況は終わり、最後の締めの雑談タイムとなった。

何気ない会話に安らぎを得た俺はいつものように投げ銭を入れる。

"今日の配信も楽しかったよ。また二人のコラボみたいな"


「このカフェオレさん、よくメッセージ送ってくれるね。」

サーラが呟くように言った。俺はドキリとした。

コラボ配信中にメッセージ内容への返信ではなく、急に名前で呼ばれたからだ。


「ああ、メン限でもよく送ってくれてるよね。長いからオレさんって呼びたくなる。

オレさん、いつもありがとう。」

エルナがそう言うのを聞きながら、俺は不思議と懐かしさを覚えた。


オレ?

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