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第1巻第2部第2節その26  「終りと始まり その8 」

「な、なあ、大殿様よお、」

ただ一人、平服のまま、後ろ腰の短剣にすら手をかけず

デ・グリームは腕組みをしたまま問い掛ける

目の前の惨状に心動かされる様子もなく

いや、むしろ適度に冷ややかな面持ちで

長年仲間でもあったオトコたちの成れの果てを

そのあまりにも悲惨な、しかしその悲惨の極みをさえ軽々と通り越す

言葉にならぬほどの滑稽さを発散し

いな上手に発揮しているともいえる

サンコクかつサンザンなるアリサマに

妙に納得し、うなずいている風でもある



サテサテ思い出してみよう

ゲイルギッシュの猛攻をほとんど舞うように

軽々と躱し続ける赤の鎧はまったく疲れを知らぬようだ

やがてこの対照的な二者の乱舞は

ひどく冒涜的な淫靡極まる様相を呈し始める

時に一軍団をすら屠るに足る

強力な両腕が徐々に下がり始め

ついに息を切らし魔剣の光すら明滅を始める

そしてその断滅の呼吸に 完全に同調するかのように

赤の鎧は突然動きを止め己が装甲を開放する

瞬時にその裸身を晒したアトゥーラが体を開く

男は同時に魔剣を手放し突進する  が(ゲイルはしかし密やかに追従している)

そこにはいかなる迷いも 疑惑すらも存在せぬかのようだ

巨大なサテュロスが幼いニンフを貫くに等しい

惨酷非情の図式はそのままに

全く不可能なはずの○行為が成立するのは何故か

その胎内と

双方の○器と

未だに不可知の第三項の絡み合い

その変形と相互浸透の複雑極まる連関を想定することはこの若い従士にできるはずもない

男が精力を絞り尽くし 捧げ尽くすその時

なおかつ ある謎の確信の下に少女の首を斬り落とすその時は※1

そう ほとんど重なり

だが瞬時にそのか細い体は赤い霧に包まれ

不可視不可触となり

やがて男の目の前に さらに蠱惑的に

さらに圧倒的に挑発的な肢体でもって再顕現する

(むろん既に赤の鎧をまとっているが、その質感はさらに変化している)

そうして同じ事の繰り返し

男は思いもよらぬ己が深部からさらなるマムナを引き出し

己が剣技の限りを尽くすが鎧の表面にカスリ傷一つつけることができない

終始一貫アトゥーラは無腰であり体捌きと 時にすりあげ

時にははたき落とすような ヌルリとした手の動きのみで

魔剣の刀身をいなし続ける(その刃筋をまともに受けることは決して無い)


どこかで見たような光景だ


男の体力(マムナ)の消尽と魔剣の光の明滅が交互に、あるいは同時に・・・

そして(いざな)うが如きアトゥーラの白き裸身の輝き

ゲイルを押し当て へし切ること三度

己が両手で絞め殺すこと三度

そして七度目 ふたたび いざなわれ・・・

大王熊をも凌駕する握力の締め手の内で

か細い喉首が握り潰され

のけぞる裸身の最後の痙攣が男の精液の最後の一滴を吸い尽くすその瞬間

男は 言語に絶する快楽の果てに

ある ひとつの 幻影(ヴィジョン)をみた




*※2

・・・

長い会話が終わろうとしていた

小さな暖炉の火床では

不思議な形の丸太が左右に

漣のような炎を走らせている

男が二人向き合い

その谷間

炎の正面に赤子が眠っている

片目を(胎内で)

左手を(沼地で)

失い

幾重もの縛鎖(ウンメイ)を纏い

何も知らぬ気に

穏やかに眠っている

左側、赤子の頭の前の男はひどく小柄だが

痩せ細ってはいるが輝かしい筋肉をもっている

右側、赤子の足先の男は大王熊に見紛う体格

しかし緩んだ筋肉は一筋とてない

そう、その通り

三者三様、等しく全裸である

そしてもう一人

いや一振か

巨大な剣が暖炉の炎を受け

無限の色彩変化を漣のように纏い

男二人と赤子を守るように

床に横たわっている

この床は築き固められた大地そのものだが

炎と地熱によって暖かい

剣の柄は大男の左膝頭近くにある

そして男は深く 深く ため息をつく

「信じられん」

「まさに」

小柄な男は応えそして微笑んだ

穏やかな

晴朗極まる笑顔だった※3




さてさて、ようやく帰ってきたぞ

「な、なあ、大殿様よお、」

そう 魔剣とその使い手

その双方が同時に

お互い 仮初めの休息の必要であることを認めたか

やおら距離をとり 肩をすぼめ 魔光をもおさめる

追撃はない

全裸の大男は無意識にだろうか

一人平然と佇んでいる部下の横へと身を移す

そして何事かを問い掛けられたにもかかわらず

約30秒、呼吸を整えるために無言のまま

ただ視線は

じっと 蘇った己が養女がまとう

この世のものとも思えぬ赤の輝きを放つ

異形の鎧を捉え続けながら

辛うじて

「ん、な、なに、なんだって?」

「おおどのざまよ」

平服の従士は主君の息切れなどまったく気にせず

淀みなく言葉をつなぐ

「あんだはまだまだヤル気なのがいね」

「どういうことだ?」

「どおいうもくそも、ほれ、それはまだ ヤル気満々にみえるんがね」

デ・グリームは隣の大男の股間へと目線を送る

なるほどソレはまだ猛々しく赤黒く光り

少女の胎内の分泌物らしき

薄いヌメリをまとい

屹立したままである

男は右手でソレを

しごくように拭いとると

そのベトリとした定かならぬ代物を一口に呑み込んでしまう

「アレのナカはそんなによがっだんだがね」

「あああ、ううむ、うぬ、そ、それはとても口ではゆえぬ」

「みながみな、きちがいじみてアレに執著じち、おぞいつづけ

犯しづづげたのはそでのぜいでが?」

「わ、わからん、そうかもしれん、が」

「が?」

「それだけではない」

「どお考えても」

従士は続ける

「ソ、ソレがあの子の(アソコ)に入るとは信じれん

ど、どおなんんだが

あんの子は痛がってはいなかったんだが?」

「わからん、いや、そんな気配はなかった」

「んども、まだ続けるがな?」

「おまえはどうなんだ、アレを見て何も思わんのか

いまのあの状態でさえ、あの鎧でさえ

アレの体の形を完璧に写している

あの神々(コオゴオ)しいまでの

あり得ぬナマメカシサをなんとも思わんのか」

「逆に不思議だども、あれは、ナカミは、どうしたって、まだ10かそこらの子供だぞい

しかも大殿にとては養い子ででもありざあ、なぜに抱く気になぞなるんだぞい」

「デ・グリーム、俺はゆかねばならん」

男は魔剣を引き寄せる

「あの鎧を開き、もう一度アレを抱く

いや、何度でもだ

そのためにはこの身が引き裂かれてもよい」

「どう見ても勝目(キリ)はねえだし、殺されますぞい」

「いや、俺とゲイルギッシュならやれる」

「お、おれにあんだを止める力はねえだども、や、やはり、あんだには死んでほしくはねえだぞ」

「死にはせん」

デ・グリームは何故か悲しげに主君の顔を見上げ、そしていささか疎ましげに反り返ったままのイチ○ツをも

一瞬だけ視界に入れる

しかしその意識は今は指呼の間に佇む赤の鎧

じっと次の動きを待つかのように

水鏡の如き平静さを湛えたまま

この世のものとも思えぬ肢体の完璧さと言い様のない不気味さを漂わせ

命あるものとも思えぬ不動の姿勢を保つそのスガタを

一種諦めの境地に近い、いやほとんど絶望と紙一重の心持で

しかし髪の毛一筋ほどの微動をも見逃さぬ

極度の細心さで捉え続けている



裾の長い平服、スカートに等しい優美なシルエットは

この若い従士を歴戦の勇士では無く

高貴な婦人にかしずき機敏(コマメ)に立ち回る

可愛いく可憐な小間使いのように見せている

(ヒゲひとつない小さな瓜実顔は実に少女にも見紛う美しさ

しかも精悍この上ない厳しさをも漂わせている)

デ・グリームは唯一の武張った装備、腰の剣帯を外し

今さらのように四囲(あたり)を見回した

そして黒い柩の如き箱車が

野辺に打ち捨てられたままであることに気づくと

スタスタと近付いてゆく

ギドンは尋常の間合いまであと少しというところ

魔剣はまだ光を納めたままであり

赤の鎧は何かを待つようにまだ少しも揺らがない

従士デ・グリームは剣帯を箱車の角にひっかけおき

ほんの一瞬だけ中を覗き込む

が予想とは違い内部は掃き清められたように清潔で

チリ一つ見当たらないことに首をひねる

がその意味を深く追求することはせず

すぐに取って返す

そしてまったく遠慮のない足取りで二人の間合いの真ん中へと

ゆるく不思議な弧をえがき

じっとりと踏み込んでゆく



赤の鎧の肩がかすかに揺らぐ

右肩先の狼は目を閉じ澄ましている

左のロバは微かに顎骨をきしらせる

やや不審げに目で追うギドンをよそに

デ・グリームは

二人をつなぐ中心点に陣取りほんの一瞬

来し方を振り返る

その視界の奥中央、約100歩ほど離れた

例の古い墓石、真っ二つに割れた火山弾のそばには

あの長身の老巡礼が石神(セキジン)のように

あたかもあの銀の杖を呑み込んだかのように

妙な具合に突っ張り 一本の棒きれ然と突っ立っている

巡礼の衣の裾だけが優雅に棚引いている

そして墓穴の後方やや離れ

藪睨みのウェスタが

茫然と立ち尽くしている

頬には涙の涸れた痕がある

従士は軽く肩を竦め首を振る

そしてゆっくりとアトゥーラへと向き直る

「なんのマネだデグ」

無腰の従士は後ろ手を軽くヒラヒラさせるのみ

その視線はピタリと鎧の頭部に

ノッペラボウの

不気味極まる筒形兜に向いている

「よ、よお、アトゥーラちゃんよお、」

およそ場違いな、暢気な声が響く

「き、聞こえてるよな、返事で、ででぎるがいのお」

赤い鎧は微動だにせず

ほぼ石像の如し

「口もないんけんどよお、お、は、話はでぎる、よ、おな」

「そこどいて、デ・グリームさん」

アトゥーラの声だった

「いんやどかね」

従士は驚いたような顔も見せず

しかし微かに微笑んだけれども

目は笑っていない

「すこし話がしち、い、いや、したいんが」

「アタシ、イソガシイの」

「も、もう、あらかた片付いてるがにめ、みえるが」

「これからよ、やっとあの子とお話できる

ゆっくりと、あの太陽が沈み切るまで」

そう、確かに、この草原(くさはら)には皆の長い影が

黒々と伸びている

全裸の大男は全神経が

真向いの赤い肢体の発する波動に

あたかも当てられたかのように感応し震えていること

手の内の柄も震え、鞘の中からは

魔光の発動が始まりかけていることも感じている

「余計なことをするな、デ・グリーム、邪魔だ」

「な、なにもぞ、ぞなに急いで(ごろ)し合うごだあねいぞ」

「殺し合いじゃないわ、相仕合う、それだけのことよ」

「アイシアウ?」

「そう、アタシとギドン様の、そしてゲイルギッシュとの」




【原注】


※1 ある謎の確信  もちろんギドンはこの陵辱と復活の無限反復の行程を味わい尽くしていたのだが、その意味を考えることはお留守になっていたようだ


※2 ここは本来なら* * * の三連記号が適用されるところ、だがギドンの見る現在進行形の記憶の再現とするならば、これでよい


※3 ここの会話、大地を一周するほどの長たらしい会話は、非常に重要なので必ず再現し、どこかに組み込む予定ですが、場所は未定です

ここに挿入する手もあったのですが、場面が場面だけに差し控えることといたしました 実はSBどんはヤル気満々だったんですがアタクシとアネサマとでなんとか説得いたしました フウウ・・・ です



【後書き】

今月はここまでです

疲れました やはり息切れです


ナレイタアの変換、地の文の継ぎ目、

自由間接話法の乱用・誤用

いろいろおかしなことになっております

時系列もズレまくっております

SB曰く

この節全体がひとつの地、

などとイミフなことを口走っております

ほんとに読みにくいことこの上ないのですが

どうかお許しくださいませ

アネサマの体調がすぐれず

あまりお話もできておりません

ほんとならココにお呼びしたかったんですが

遠慮しております

途方もなく前途遼遠の春霞

三姉妹揃い踏みの日がいつになるのか

まったくもって五里霧中

序文にチラと書きました

華麗なる宮廷絵巻に

いつになったら突入できるのか

訳者の心も千々に乱れまくっているのでございます



20260211


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