第1巻第2部第2節その15 「馬部屋前の裏庭にて 一同揃い踏み」
【節の表題につきまして若干】
第1巻第2部第2節その15 「炉部屋の風景 続き 嫉妬と欲望の綯い交ぜが・・・ 涙[涎]を流す その8 輪回し虚実 の果てし後・・・ 幕間 それから 」・・・ これが元の表題案でしたが、
種々忖度の末、下記のようになりました
↓
第1巻第2部第2節その15 「馬部屋前の裏庭にて 一同揃い踏み」
* * *
無 無 無 無 無
目の前を小さな甲虫が歩いてく。
これはあれだ、ゴミムシだな、
いや、ちがったかな、んん、なんかのんびりしてる、
キノコとかについてる奴、
そ、そう、ゴミムシダマシだ、前、イヨルカが教えてくれた、
かなりマイペースなやつだ、
やや、なんか追い抜いてった
これはかなりデカイ、緑金に輝いてる、
これはオサムシ、
ゴミムシより大分背が高いな、立派だな、
でも動き方が忙しいな、
む む む むむ
「こいつ、やはり強情だな、うめき声一つださんぞ、」
「手ぬるいんじゃないか?」
「もう一本増やしたらどうだ、」
「いやこれ以上は骨が砕けちまう、」
「おい、おい、グリモー、ちょっとやり過ぎじゃないのか?」
「いえ、まだまだですね、コイツ、まだヨユーってな顔付きですからな、
大殿は甘過ぎますな、」
「しかしこれだけ責めても白状せんってことは嘘は吐いとらんってことじゃないのか、」
「甘いですな、こいつは筋金入りの大噓つきですからな、息を吐くように嘘を吐く、まったく誰に似たのか、なあ、ウェスタ、」
「ヤクザな嘘つきなんてそこらへんにいっぱい転がってるからねえ、一体ダレを真似たのやら、」
ウェスタ姉さんの声がする
相変わらずいい声、それにあれは完全に馬鹿にしてるな、
グリモーのやつ、姉さんにいいとこ見せようって必死だな、
みんなわかってるんだ、あいつ姉さんに気があるんだ、
みな知ってる、さっきも馬部屋でいちゃいちゃしてたもんな、
あの窓から覗き見れたのは超不思議だった、声まで聞こえたんだもん、
時空を超えて覗ける窓・・・
またあの部屋へ行きたいけど
本もいっぱいあるし
でももうムリか
ふふふ
あれ、おもしろかったな、
姉さんは余裕だった、肝心なとこは触らせず、完璧に
焦らしてた、ま、グリモーには無理ね、姉さんの勝ち、
それにギドンがバアァーーンって入ってきた時の顔って
あれは傑作だったな、悔しいのと、恥ずかしいのと、
でも体裁を繕うのが一番さき、よくやるわ、はは、
で、あたしはなんでこんな具合なの?
地べたに這いつくばって、
ああ、いいのよ、地面が目の前ってのは
虫がいっぱい、そして土と草の匂いも、
好き・・・
ずっと見ててもいいくらい、
でも腕が全部背中に回ってて、ガチガチに組まれてナンカ棒がささってる、紐がグルッと、二箇所で、あれ三箇所か、ナンカ多いな、
ネジレてて、あああ、あれか
グリモーの得意なやつ、あっちをひねり、こっちをゆるめ
なんか忙しいやつ、で、もう一本差し込んで、こうグリっと回すと
肩がはずれ、肘がはずれ、それから、えと、それから
棒がまた首の下にきて、ぐいっと、ね、二重の棒がギュルンとね、
あれで何度失神しちゃったことか、
(骨を砕く寸前で止める、超高等技術って自慢してたな)
ああ、胸が痛い(あたし、お乳ちょっと大きくなっちゃったかな、ヤダナ)
みんな笑ってる、楽しそう、
ギドンが一番心配そうにしてる、いつもんことか、
アーモアとグレンゴイールは無表情、
グエンドーはイヤラシそうに舌舐めずってる
いつもどおりだな、
ぜんぜん変わらんな
痛いのは
そう
痛いのは むむむ ずっと痛い
前よりか
そう 前はなんか ひとごとみたいに
指をくわえて見てるだけって感じだったのに
今度は単純に痛くて苦しいな
夢じゃないな
夢じゃあない
死ねるかな
死ねるかな
やっと殺してくれるのか
長かったな
いや短いか
たったの十年
よくやるよ
よくこんなの生かしてたな
やっと死ねる
いつでも
すきなとき
死ねる って 言ったっけ
やっぱり不死身じゃなかったわけね
よかったよかった
不死身なんてまっぴらだもん
でも死んで目覚めたら
む
また別の地獄だったってのもイヤだな
これ ちゃんと ドナドナに聞いとくんだった
ドナドナ?
誰だっけ?
ドナドナ?
ええっ!!
ドナドナ様!!!
モスグリーンの修道服、いや、これは巡礼服か、
酷く草臥れてはいるが明らかに非常に上質な生地、
しかも滑らかな裏地までがついている。
腰帯は、これは深い緑色に染められた三重の革帯で、
絡み合う蛇のように縒り捻じられているし、小さな皮袋が3つ、
銀の金具でパチリと止められている。
非常な長身をも凌ぐ高さの、先端で螺旋を描く金属の杖をつき、
どこからどう見ても、かなり怪しい、いかにも場違いな雰囲気を漂わせ
男は平然と立っている。が、明らかに、非常な高齢であり、
鳩尾近くまで垂れた青緑色の顎髭は、深山幽谷の苔簾然として
かなり非人間的な様相を呈している。
しかし、男の顔は憂慮に満ちていた。
*
男は杖を、デキャンタの如くゆるりと傾け
地面に転がされ押し拉がれている小娘を指し示す。
左手は極自然な仕草で顎髭をしごいている。
「して、この子供は何故このような酷い仕置を受けておるのかな?」
ギドン・オルケンとその幕僚、バイメダリオンの隊士たち、サラザン父娘、そして拷問の執行者たるグリモーは、一瞬のスキを突かれたように、ほぼ全員、全く同時に、硬直したように静止している。
全ての視線は男の顎髭と銀色に輝く杖の間を交互に往復し、
まったく情けないことに全員等しく、ただ只管に世俗的な値踏みの行為に浸っているのだった。そしてそのことに疑問を抱くこともできなかったのである。
そしてそれよりも不思議なことがある。
ギドンを筆頭にいずれ劣らぬ百戦錬磨の古兵、
抜け目のなさではソムドの両替屋をも凌ぐスレッカラシの武装商人どもが、
今の今まで空虚であった地面に、突然生えでた、或いは天から降り下って
ボッサリと突き刺さった木の柱のように現れた、
このひょろ長い、枯れ木のような老人を何の疑惑も抱かずに、
長年の戦役を共に戦ってきた古参の戦友ででもあるかの如く極自然に受け入れ、
滑らかに、実用的に、ありきたりの会話の線に、
ゆるゆると引き込まれようとしていたことである。
「むろん、折檻には必ず正当な理由がある、」
異常に腕の長い、これも相当にヒョロリとした痩せた男が
ヒドイ藪睨みを一層糸のように細めながらツルリと応える。
「ほほう、あんたには、その権利、いや、むしろ義務がある、とでも?」
「当然だ、俺はこの子の父親代理だからな、」
「して、この子は一体何をやらかしたのかな、そんな無惨な刑罰を受けるほどのことなのかな、ほれほれ、息が止まりかけておる」
眇めの男は振り返り主君でもあるギドンをチラリと見た。
大熊の如き巨大な体格の男は、完全武装のままだったが、やや曖昧に首を振るのみ。
「俺が答えよう、少なくとも、直接の当事者だからな、」
一度立ち上がったグリモーだったがすぐにまた膝を突き目にも留まらぬ早業で雁字搦めだったアトゥーラの拷問拘束を解いた。そして酷く咳き込みながらもフラフラに立ち上がろうとする小娘を容赦なく蹴り倒した。
「小休止にしてやる、そこでじっとしてろ!」
同じくギドンの顔色をチラ見してから巡礼の方へと向き直った。
「こいつの罪状はこうだ、まずひとつ、」
「ほう、まず、とな、」
「そう、まずは、だ、最初の罪状は、そう、盗みだ。」
「ほほう、」
「こいつは、俺が預けておいた若い狼の毛皮を盗みおった。」
「なるほど、」
「第二の罪状は、虚言だ、」
「ほう、」
「それも途方も無い大嘘だ、」
「というと?」
「俺がこの手で切り飛ばした狼の首だ、それがひとりでに繋がり、生き返って走り出し、勝手に逃げて行ったと、シャアシャアとぬかしよった、」
「ほほう、それはかなりに大胆な脚色じゃな、」
「冗談じゃねえぜ、」
いかにも酷薄な尖った顎の男は芝居がかった身振りで地団駄を踏む。
「あれはいい毛皮だった、絶対に取り戻す、」
そして油断なく己が装具を引き寄せ、例の銀鞘の打刀を左手に提げる。
「飽くまで白を切るなら、こいつの首を打ち落とし、また繋がって歩き出すかどうか試してやる、」
「それは許可できんな、」
ギドンは馬囲いの柵にもたれ自身の短い顎髭をひねっていたが、ほとんど無意識のように横に立てかけたゲイルギッシュの柄頭に左手を置く。
「その前にオマエの首がとぶことになる」
「冗談でさ、」
薄ら笑いを浮かべた小男(実を言うと、この副隊長はかなり背が低い、というか、まわりの皆が一様に高すぎるとも)は、やや大袈裟に首を竦めながら何気ない動作で辺りを見回した。むろん、十分に離れている。しかし、ゲイルギッシュに間合いが存在しないことは、これまた単純な事実だった。
囲いの内側からギドンの愛馬ロクサヌが頭を突き出した。何事か口出ししたそうな、だがまずは撫ぜてほしいとでも言いたげの様子。
ギドンは軽く叩いてやりながら空を見上げる。また喉の赤い雲雀が
ビロビロと上がり歌いだした。
ウラウラの春日は優しく暖かい。まだ昼下がりなのである。
*
「なあ、ギドン、そろそろ飯にしようぜ、スープが煮詰まっちまう、」
「待て待て、こっちを片付けるのが先だ、」
グリモーは、ほとんど意味もなく(としか見えない)何度も立ち上がろうとするアトゥーラの背中に刀のこじりを突き立て地面に縫い止める動作を繰り返す。グエンドーたちは、その度に乱れるスカートや震える腰の辺りの動きに何故か目線を吸い寄せられている。
「で、今更だが、改めて確認させてもらおうか、あんたは一体何の権利があって、このごく内輪の事情に首を突っ込むのかな、って言うか、
そもそもあんたは一体何者なんだ?」
「これは失礼をした、」
青緑色の顎髭の男は、まだそれをしごいている。
再び垂直を取り戻した銀の杖は、このまま手を離しても
頑固に天を指したまま微動だにしないであろう
そんな不可解な勢いを示している。
そしてかろらかな羽ばたきの音がし、その先端に喉赤雲雀が舞い降りた。
さっきまで遥かな上空で歌っていたやつである。
(螺旋の先端は真円を描いて閉じている、つまり水平の輪で、止まり木にはちょうどいい)
一同は呆然とその鳥の偉そうに逆立った冠毛を見つめている。
しかし、巡礼と名乗る男の声に、揃って、はっと目覚めたようだった。
「申し遅れましたな、私の名は、アゥーレーン・グロウフォード、
一介の巡礼者、無限遍歴修行者でもある、」
ドナドナ様、また嘘言ってる
神様は嘘つかないっていってたけど
うそばっかじゃん
てことは神様じゃない?
ああ、せなかいたい
「巡礼っつってもな、ピンキリ(失礼!)だわな、失礼だが
どこの団体に所属しているのかな?」
グエンドーが少し前に出てきた。そのブーツの先がアトゥーラの目の前にやって来る。ほどよく湿った土がグジャジャリと鳴き、タンポポもひとつ踏み潰されているのがわかる。
グエンドー
やなやつ
絶対これ蹴る気だわ
タンポポかわいそ
「残念ながら無所属でしてな、どこの修道会にも属してはおらんのです、」
「最近まわったところは?」
「ミコールパ、 エィアトス、 ザンクトエレガンタ、というところですな、」
「ミコールパのエイ導師はお元気だったかな」
と、グレンゴイールの冷ややかな声。
「もう亡くなられて三年、つい先ごろ法要がありましてな、もちろん、出席させていただいた、ふふふふふ、なにか尋問のようですな、」
「で、こいつの尻拭いにしゃしゃり出ようという魂胆は何かな?」
グリモーがやや苛立たしげに遮った。
「わたしは謝らねばならんのです、」
巡礼は続ける。
「ぜひともに、まったくもって、わたしの落ち度でありましてな、」
「一体誰に、何を謝るというのかな?」
「もちろん、この子、アトゥーラに対してです。」
殿様然と(いや、まさに、お殿様なのだが)奥でゆったりしていたギドン・オルケンが微かに身を乗り出す。
そして呟いた。
「アトゥーラ」
「そう、アトゥーラにです、」
男は垂直のまま杖を突いた。雲雀はちょっと羽ばたいたがそのまま。
「そもそも、その折檻? いや拷問ですな、それは間違っておるのです、
つまりこの子には答えようがない、」
「どういうことだ?」
グリモーは無意識を装い刀を突く。こじりが小娘の背中をえぐる。
あああ
ドナドナ様
ドナドナ様の声だな
なんか
二重に聞こえる
それから
む
グエンドーめ
あたしのあたまを
つまさきで突っ突くのをヤメロ
それからグリモー おまえもだ
「わたしがこの子にでくわしたとき、」
杖の先端がゆるゆると円を描き、雲雀は肩をゆすりながら
なぜかその動きを楽しんでいるようだ。
「どこでだ?」
「まあ、焦るでない、騎士どの、」
老人は髭の中に手を突っ込み顎先を掻いているようだ。
「それはあの不思議の森、その入口前の広場、
そう、あの大石柱の真下のこと。」
「ふん、シルバ・シルバか、」
「あんたがたがアレをどう呼んでいるかは知らんがの、」
老人はニヤリと笑ったようだったが
髭がモサモサ別の生き物のように
何か怪しげに動めいているだけのようにも見える。
「そう、あそこで、」
と、地面に押し付けられ、やや苦しげに喘いている小娘を見やる。
「この子が両手を血の池に浸していた、」
「ふん、それで?」
「なるほど、小さな狼の死体が、いかにも憐れな様子で転がっていたわけですな、」
老巡礼は訝しげに首を振りながら続ける。
「事情を聞くと、これからソイツの皮を剥ぎ、持って帰らねばならんと言う、」
老人の声には一種独特な響きがあり、その場の人間全ての耳に、
なにか粘りつくような、異様に引き伸ばされた、奇妙な感触を与えていた。
「なるほどなるほど、手元には鋭い山刀が光ってい、その子は泣きじゃくりながら解体を始めようとしとった、が、」
うそ、うそ、泣いてなんか
「しかしわたしがそれをとめた、ここで供養してやるから埋葬してやれとな、ちょうどよい墓標もある、」
老人は左手を高々と上げ首を振った。ちょうどカラスが虚空に向かって挨拶するように。但し上下にしゃくるようにではなく、左右に、振り子のようにである。
「余計なお世話だ!」
「確かに、おまえさんが執着するのもわかる、小さいが見事な毛並みの狼じゃった、手袋や煙草入れ、いろいろできそうじゃったしの、それに死んでしまったものは使ってやるのが供養になる、という考え方も一理はある、」
「一理もクソも常識だろ、」
「しかし、修道僧としては、それはできん相談じゃ、」
「勝手な理屈だ!」
グリモーが吐き捨てる。
「まあ、理屈とは勝手なものじゃ、
さて、武人であるおまえさん方にも死は親しいもんじゃろうが、
わしらにとっては、これはもう専売事業、見過ごすことはできん
重要案件じゃ、」
杖をゆすり、雲雀が喜ぶ。
「そして生きるものすべてにとって死はその最たるもの、
それにふさわしい儀礼でもって送ってやらねばならん、
で、ワシが懇ろに経をあげてやり、そしてあの大石柱の根本に
埋葬してやったという訳じゃ。※1
そうしてこの子には狼は生き返って走って逃げてしまったと報告すればよい、といい含めたわけじゃ。」
「おおい、デグリーム、おまえちょっと行って掘り返してこい、」
囲いの中で馬どもの世話をしていた若い従士を呼びつけた。
「俺の馬を使え、急げ!」
グリモー・アナスは振り返り嘲りの笑みを浮かべながらクソ丁寧なお辞儀をしてみせる。
「つまり、おまえさんの案件は無事済んだ、次は既得権益の回復が最重要というわけだ、」
「死者の眠りを妨げることは推奨できんともいいますがな、」
「ちょっといいか、巡礼殿、いや、修行僧殿、」
ギドンが突然口を挟んだ。
「どうぞご自由に、ええいっと、そう、
ギドン・オルケン殿?」
「わたしを知っているようだな、」
「もちろん、存じ上げておる、
ギドン・オルケン辺境伯殿、いな、むしろ
ゲイルギッシュのギドン殿、と言ったほうがよろしいのかな、」
「ギドンでいい、」
巨大な武人は些末な問題には全く興味がなさげに鷹揚に腕を振る。しかし左手は、通り名の由来である長大な魔剣を体の正面へと引き付ける。あたかも正式の紋章を構成する如く垂直に立つそれは、攻防一体の絶対の盾にも見紛う壮麗さだ。※2
「そんなことよりもひとつ聞きたいことがある、」
「なんでしょうな、」
「ご老人、あなたの言い草では人間と、狼などの獣との間に何の区別もつけておられんように聞こえるが、」
「命であることに変わりはありませんからな、」
「しかし、ヒトとケダモノの間には絶対的な隔たりがあるのでは?」
「ありませんな、そう、いま、そこを飛びすぎる小さなスズメバチ、
あのムシケラにさえ、ヒトと全く同等の魂がある、我が法門ではそのように教えておりますのでな、」
親指ほどの大きさのスズメバチは、一直線に飛び去ったはずが、すぐに舞い戻ってきた。そしてアトゥーラを囲むようにして立つ二人、
つまりグエンドー・バガガンスとグリモー・アナスの間を、
なにか胡散臭げに八の字を描いて飛ぶ。そして追い払おうと腕を振り回す二人を尻目に優雅に、しつこく、時にはその顔の正面に定位しつつ穴のあくほど見つめ続けたりという意味不明の曲芸を繰り返しながら、やがて来た時と同じくあっさりと飛び去ってしまう。空を切り続けた自分の手刀を信じられぬ顔つきで見つめているグリモーの阿呆面だけが残る。
「なんなんだ、今の虫は?」
「いやにしつこかったな、」
毒気を抜かれた形の二人は顔を見合わせる。いつの間にかアトゥーラは地面の上に正座し、虫の消えた西の空の方を見つめている。蒼白の頬に微かな赤みが差している。
「本覚法門の教えだな、しかし、証明はできない、」
「証明など必要ありませんな、また、我が宗祖は、
不毛な形而上学的詮索を禁じておられる、」
「賢しいな、」
「同感ですぞ、」
巡礼はあっさりと認める。
「我が法門は、そうですな、宗教というよりは、むしろ単純な認識論哲学と言うに近い、本来、冷徹無情なものなのです、賢しき、とはむしろ褒め言葉として頂戴、」
「いや、それは違う、」
ギドンが鷹揚に首を振る。
「賢しき蛇ども、あれらと同等の形容よ、」
大領主でもある辺境伯は御機嫌のようだった。
そうして今は起き直り、放心したように老巡礼の顔を凝視している片目の小娘に注意を戻した。
「アトゥーラ、こちらを見よ、」
一瞬ギクリとして肩を震わせたがすぐに、ややぎこちなく振り返る。
乱れた赤髪はやはり左目を隠している。額の端、右の頬、顎先にも土と雑草の切れ端がこびりついている。上半身には縄と締め棒の喰い込んだ痕が無惨に残っているが出血はしていない。
「アトゥーラ、答えよ、このご老人を知っているか?」
「い、いいえ、」
「この方が言われたように狼の子を埋葬したのか?」
「い、いえ、」
声は微かに震えている。右手は、動かすとかなり痛みが走るのか、これも僅かに震えながら、ひどく汚れた、ほとんど穢らしいといってもよい左手の包帯を抑えるように握っている。
「それは誓って真実か?」
数秒の沈黙。
「答えろ、マコトかと聞いておる、嘘は許さん、」
「うう、うそ、うそじゃ、あ、ありません、」
「では、狼の子が生き返り走り去ったというが本当か?」
「ほ、ほおんおう、ほ、ほんとうです、」
「聞こえんぞ、はっきりと、ここまで聞こえるように話せ、」
「ほんとうです」
振り絞るように出された声には、しかし明らかにヤケ糞気味な、
どこか不遜で、挑戦的な響きが含まれていた。
だがそれはカラカラの喉を酷使したが故の、どうしようもない
必死さの裏返しに過ぎなかったのかもしれぬ。
その証拠には、次の瞬間、アトゥーラの体はひどく揺れ始め、
ついには激しく咳き込んで再び突っ伏してしまったからである。
ああーーー、驚いた!
でもこれでいいはずよね
ギドンのゲイルギッシュなら絶対痛くもない
一瞬よ!
ふふ、理想的な、ふふふ、展開のハズ・・・
ゲ、ゲフ、ガフ
「こいつ、やはりどうしようもないな、」
白銀の延べ板を巻き締めた、堅牢極まる拵えの打刀を肩にかつぎ直し
バイメダリオン副隊長グリモー・アナスが真底呆れ返った風に首を振る。
「とんだ茶番だぜ、」
そして唾を吐いた。
「だがどっちかが救いようのない嘘つきだってことは確実だな、
まあそれも直にわかることだ、あと半時もすればデグリームが戻る、」
「なんといっても、掘り返すことは推奨できませんがな、」
アゥーレーン・グロウフォードと名乗った老巡礼がひどく呑気な調子で引き取った。
*
副隊長付きの従士が戻るまでの間、一同は遅い昼食を済ませておくことにした。ギドンと副官たちは中へ、その他の騎士たちは馬囲いの傍にウェスタが出したテーブルにとりついた。セルフサービス仕様のスープ鍋、ありあわせの堅パンやらチーズ、干し肉、そして取皿などが所狭しと載っている。
アトゥーラは、何故か屋内へ運び込まれるのを嫌がったので、好都合とばかりにその場に放置される形となった。申し訳に竹製の巻ベッドが敷かれた。なぜかグエンドーがいそいそと手伝い、ボロボロな小娘を横たえる。
「なあ、グリモー、俺が見張っといてもいいんだぜ、」
「それには及ばん、けっこう締め上げたからな、しばらく身動きできんさ、さあ行くぞ、」
「ふふん、」※3
男はスカートからのぞく足首と泥だらけの足の裏に目をやりながら、
幾分気遣わし気に、だがワザトラシイ横柄さで声をかけた。
「よお、アトゥーラ、おまえもなんか喰うか?」
「い、いらない、」
「なに、なんだって? きこえんぞ、」
苛立たしげに投げ出された足の裏を蹴る。小娘は顔をしかめた。
「イラナイ!」
「ほっとけ、ほっとけ、俺たちも行くぞ、」
首脳たちの会話が気になるらしいグリモーは、せっつきながらもアトゥーラの表情と身動きの様子に鋭い一瞥を投げる。そして唾を吐いた。
「ちっ! ちょっと手加減しすぎたか、」※4
二人はやや慌てた風に食堂へ向かう。馬どもの世話を焼きながら立ち食いする従士たち、柵にもたれ、あるいは胡座をかいて思い思いに食欲を満たす騎士たち、その喧騒の一団からは少し距離を置き、枯れ木のような老巡礼とボロ布のような片目の小娘が、今ようやく、なぜか初めて出会ったばかりといった妙な顔つきで目を見合わせている。
春風がはるかな森の香りを運んで来る。
*
ー うそつきかみさま、こんにちわ、ー
ー 気分はどうかな、アトゥーラ、ー
あおのけに、手を胸前に組み(というか、左手首を握ったまま)、
ひどく気難し気に空を見つめている。というか睨んでいる。
今は雲ひとつ見当たらない。
服は泥だらけだが不思議と破れてはいない。ただし、スカートはもうほとんど限界に近い。
ー 悪くはないわ、あちこち痛いだけ、グリモーのやつ、いつもより力入ってた、ほとんど殺す気みたいに、でも、ギドンをチラ見しては、いやらしく緩めてた、ほんと変態だわ、ー
ー 余裕だな、ー
ー 余裕? そうかな、ヨ、ユーなんかな、わかんない、でもまえよりも痛いし、苦しいし、ああ、あれ、イヨルカがなんか言ってたな、あれ、イヨルカ? 寝てる? ー
ー 起きてるわよ! ー
ー ねえ、アレ、なんつったかな、い、位相変換、転換、え、いや、なんとか膜? あれ? ー
ー そんなことより大丈夫なの、だいぶキツかったんじゃない? ー
ー 死ぬかとおもったわ、ー
ー 本望じゃない、ー
ー でもなんとなくあいつに絞め殺されるのはヤだったな、ー
ー そおいうもんなの? ー
ー そおいうもんよ、ー
アトゥーラは左手首を持ち上げてみる。古い包帯で巻き直され、もう泥々になり、ひどい有様だが何の違和感もない、しかしそれがおかいしのである。
ー ねえ、イヨルカ、手がないんだけど、ー
ー いきなり手が生えてたら怪しいでしょ、ちょいとひっこめてあるのよ、朝より5セカントくらいは伸びてるけどまあちょっと見わからないはずよね、ー
(ちょいっとって、そんなカンタンに・・・)
ー ねえ、ドナドナ様、ー
ー なにかな、アトゥーラ、ー
ー なんであんな嘘をつくの? それにアゥーレーン・グロウフォードなんて変な名前、聞こえたとき、吹きそうになっちゃった、ー
ー 別にうそではないぞ、あれもワシの名前のひとつじゃからな、
まったく、しょうしんしょうめい、ウソ、ではない、ー
ー あやしすぎるわ ー
ー それよりもアトゥーラ、このままではおまえさん、かなりヤバイことになるぞ、ー
ー なんで? ー
ー もうすぐ、おまえのウソがばれる、それにギドンは嘘つきは絶対に容赦しない、子飼いの部下でさえ断罪するに躊躇はしない、ましてや、ー
ー ゲイルギッシュ、あの剣は素晴らしいわ、あたしが生まれて初めて見た剣もゲイルギッシュだった、はず(それかあたしの首をちょん切ろうとしてたあの青い剣!)
あのときはまだ銘も、使手も、なんもわからんかったけど、
でもあの肌の輝き、あの動き、まるで舞いのよう、ああ、あの剣と踊れたら・・・
ふふふ、そうよ、あの剣が人の首をまるでキュウリみたく切り飛ばすのを何度も見たわ、
もちろん、容赦ないわ、一瞬の躊躇もない、物凄い切れ味、ふふふふふ・・・ ー
ー こいつ、もう酔っ払っとる、さすが、というべきか! ー
アトゥーラは首を動かすと痛いので妙な上目遣いだけで杖の先を見上げた。
喉赤雲雀がかわゆらしく首を傾げ見下ろしている。小さな肩をちょいと聳やかしている。
ー バスポラ!? バスポラじゃない! ー
「ピチリ ピチリ ビロロロロロ!」
ー ナニ小鳥のマネしてんのよ、体はどうしたの? ー
ー そりゃお前、今ごろ土ん中で虫どものオカズになっとるんだな、これが、ー
ー そんなわけないじゃない、あたしがくっつけてあげたのに! ー
ー まあ、そこはほれ、ドナドナがああ言ったら、ああなる、で、ああなっとる、というわけだな、ー
ー さっぱりわかんない ー
ー まあいいさ、それよりいよいよおまえの本望達成が近づいとるんだ、うれしいだろ、ー
ー ま、まあね、ー
ー ふふん、俺が言ったとおり、一度味わってみればいいさ、ー
ー 味わうねえ、それがほんとなら、半々ってところになるのかな、ー
ー また、なにか変なこと考えてるだろ、ー
ー だって味わうってことは、死んでないってことじゃない、ー
ー ま、まあ、おまえの場合はイロイロあるってことさ、ー
ー なにそれ?! ー
ー 味わう時間は十分にあるってことだな、まあ考えてみな、斬首されたあと
首だけになって転がってもなんかしゃべったり、呪ったり、歯軋りしたり、
ほんでもって泣いてみたり、あげくに噛み付いたり、そんな例はゴマンとある、ー
ー 泣くのだけは無いわ ー
ー ま、そういうことだな、さっきだってホレ、おまえ首だけでウダウダ理屈をこねてたじゃねえか ー
ー あ、あれは、あ、あれ、夢みたいなもんじゃない、
あっ! 思い出した、あんた一度しらばっくれてたけど
ど、どおなのよ、あたしの体、美味しかったの? ー
ー うぅーーーむ ー
ー な、なによ ー
ー ウム ー
ー なによハッキリ言いなさいよ ー
ー まあまあ、かな? ー
ー ナニソレ ー
ー 美味しいと言えばだな、さっきのアレ、アッチのほうが俺としてはー
ー 言うなぁーーー! 恥ずかしいわ!ー
ー なに言ってる、ノリノリだったじゃねえか ー
ー 言うなぁーーー! ー
ー うん、うん、最初はこうだったかな、俺の後ろからヤツが、俺がお前の後ろに、
お前はジーナに、ジーナはあの金色のちっさいのに、それからあの侍女ちゃんが
バラバラバラっとトランプみたいに増えて、ありゃ凄かったな、さすがのおれも
びびったぜ、で、最後!のシュリちゃんがドナドナにグサリとな、爺さん、
女の子みたいな声上げてたな、まったく! よくやるぜ ー
ー あ、あれ、最後はドナドナ様がまたグレオファーンさんを、う、うしろから、犯してたのよね ー
ー ま、そういうことになるわな、それで一周、完成だな、しかし、ひとつ聞きたいんだがおまえらはどうやって繋がってたんだ? 体の構造的にムリだろうが ー
ー そ、そんなこと、言えるかあ! ー
ー いや、ここはちゃんと確かめておきたい、今後のこともあるしな ー
鳥は目をパチクリさせ何か意味ありげな表情を作ったつもりらしいが小さすぎてよくわからない。
ー 今後ってなによ、ま、まさか ー
ー おまえたち、技術的な問題にばかりかまけるのはよくないぞ、そんなことより、アレの完成が意味することをちょっとは考えてみよ ー
老巡礼の姿で直立し今は何食わぬ顔付きで向こうのロクサヌと見合いをしている体のドナドナである。巨大な軍馬の頭の下で、柵に凭れながらソーセージを一本、美味そうに頬張っていた従士が、時々怪訝そうに顔を上げ馬と老人の無言の見つめ合いを眺めている。
「おおい、ローハード、そっちのスープも一杯まわしてくれよ、」
極若い、非常に精悍な顔つきの呼ばれた従士が物色中のテーブルから顔を上げた。
「へいへい、ちょっと待ちな、」
そして老人とその杖、その杖の上の小鳥を不思議そうに、いかにも無邪気な顔付きで一瞥してからスープをよそいにかかった。時々少し首を動かす以外、全く動きのない、棒のような小娘の体には敢えて注意を払わない、といった風情である。
ー なあ、ドナドナ爺さんよ、アレって御大層な名前がついてるがそんな大したもんだとも思えねえがな、それよか完全な輪になってから3回グルグルし、お前さんとグレオファーンとで何かブツブツ唱えてたが、ありゃなんだ? ー
ー そうよ、あれからなんかおかしくなった、世界全体がグルグル回り始めて円盤みたくなった
これは夢、うんにゃ、夢の中の夢、夢の夢
夢なら別におかしくない、で、また、バラバラになったり、また繋がったり
またバラバラに、乱れ、乱れに
あっちでも、こっちでもまぐわった、まぐわって、またまぐわった
体が溶ける、ああ溶けて、流れて
またまぐわう、そして溶けて流れたシュリアナをみんなで食べた
口から流れ込んでくるシュリアナ、あれは、あああ、あなた
あなた、シュリアナ、あんたのすべてがわかる、そんな気がした
あたしも溶ける、溶けて流れて誰かの口に入る、そんな気がした
あれは ー
ー まあ、要するに、変態趣味の極みだな、そうとしか言えん。
で、気がつくと俺たちはあの磐座の外にいた、元の、まっとうな姿でな、そうだろ、ー
ー そういうことだ ー
ー 結局、グレオファーンって奴の正体はわからんかったな、人間ではないことは確かだが、ー
ー そうね、ジーナは知ってるんだろうけど、教えてくれないし、ー
アトゥーラは身じろぎし、顔を顰める。熱も出てきたようだ。思ったよりも体の損傷はひどいらしい。
そして、無意識に大地の気配をさぐる。
まだ、はるかに、かすかだが、覚えのある、
あの臆病な、馬の蹄が大地を穿つ勢いで近づいてくる・・・
【原注】
※1 寂滅空無経
※2 この曖昧な描写でもギドンの大剣の異様な幅広さがわかる
※3 表面的には放置の形をとるがこれは別命によるのであろう、独断ではないと思われる
※4 実際はほぼ3倍の強度で締め上げたのである、もちろん、本人に自覚はない、いつものように反応を見ながら調整したつもりだったのだろうが、いかんせん、相手が悪かったのである
後書き
「ついに戻ってまいりました!」
「なにが!」
「ですから、月一回の更新に、です!」
「まだ一回やっただけやがな」
「やっぱり、姉様がそばにいてはると、モチベが違います!
あっと驚く更新スピード&分量でっす!」
「息切れすんで、目に見えとる、」
「そんときは、やさしく、抱き締めて、○ッスしてくださると
一発、超回復です!」
「あほらし、寝言は起きてから言いなはれ、」
「起きてたら寝言やおまへん、」
「おまえは、アトゥーラか?! 屁理屈ばっかこねやがって!」
「おおっと、姉上様、いいところに話題を!
そうです、アトゥーラです、やっとお話が進み出しました!」
「ちゅうか、いろいろハショリすぎやろ、」
「いいんです、いいんです、事実は事実として、確固としてあるんです、
起きてしまったことは神様にも変えられません、あとは追々、小出しに云々・・・」
「まあええわ、それで、これからはジェットコースター並みの展開が待ってるって?」
「それは、まあ、その、そです、
例の瑠璃色の髪の仙女さんの、
あのカタツムリさんが、滑り降りてくるよな、そんな感じで、」
「あんた、ジェットって意味わかってるんか?」
「す、滑り、降りる? 落ちる?」
「もおええわ、ほんで、例の、コオロギ君はどこ?」
「ちょっと、取材旅行に、とか言うてはりました」
「また、おらんのかいな、」
「そんなことより、あねさま、」
「な、なんよ、」
「わたし、すごく寂しかったです、」
「そりゃすまんかった」
「あねさま」
「な、なに」
「あねさま」
「だからなに、こら、寄るな、ひっつくな、」
「あねさま、あねさまも寂しかったですか」
「あほか、そんな感傷に浸ってる暇はない」
「あたしのこと、ちょっとくらい、思い出してくれたりは してくれはれへんかったんですか」
「全然」
「ほんとに?」
「カケラもない」
「うそ」
「おまえ、ええかげんにせんとおこるぞ」
「うそはいけません」
「お、おまえ、朝っぱらから飲んどるな」
「なにをおっしゃる、ここ、アルコール類ご法度ですやん、」
「いや、酔うとる、まちがいない」
「あたし、訳してて思いました、これ、あたしたちに子供ができたら絶対読ませられん、あかんなって」
「いや、女同士、子供はできんから」
「そんなこと、やってみんとわからへん」
「こらこら、どこさわっ こら! やめい!」
ザ、ザザァーーーーー
臨時テロップ
「暫くお待ち下さい、◯◯機器の技術的問題により現在中継が不可能となっております、
ご迷惑をおかけいたしますが今しばらく云々・・・」
お見苦しいところを・・・ 誠に申し訳ございません
何か変なテンションに入ってましたが、これみんなシャリーどんが悪いのです
なるべく穏便に、直接的かつ解剖学的描写を避けて、と申し入れはしましたが
別の意味でよりヒドイ、ああ、いえ、ミナまでは申しますまい
・・・ ・・・ ・・・
ですがこれを、アダルト版として、克明な実況中継風に、完全描写の上、再現することは、今のアタクシの腕では大変難しく、特に、
途中にはさまる、アトゥーラの、妄想と区別のつかない、宇宙的な渦動体験を言語化することはまことにもって至難の業、公開できる可能性はゼロではありませんが、限りなく不透明な、はい、ブルーな気分なんであります。(けど、綿密に描写してみたい、というインビなヨクボウのございますことは、ナイショです)
あーーー、おほん、
で、
いろいろハショられたその後のシチュ、
磐座の外での、別れの場面、
泥炭積みの場面、
再び森を抜け、家へと帰る、その珍道中、
その他モロモロは、これはこれでおもしろいのですが、
あまりにもお話が進みませんので一旦保留という形で
飛ばしてしまいました。
で、ここからが、この第1巻の最大の山場、
というか、お話の転換点にさしかかる訳でございますが、
これがまた、難物でございます。
どうか、みなさま、お心を、海のように、
ゆったり、まったり、とお持ちいただきまして、
「あんた、いちいち、クドイ! 誰も待ってへんから安心してノタノタ、
いや、サクサク行きなはれ、」
「誰も待ってへんから、というのは違うぞ、少なくとも、3人はおられるのだからな、心してかかるのだ、」
「シャリーどん、いつもどったん?」
「わしはいつでもここにおる、イツにしてゼン、ありといえばなし、ないといえばある、よーするに」
「はいはい、それではみなさま、ごきげんよろしゅう〜」
「姉様、それあたしのセリフ!」
202507290929〜1631




