第1巻第2部第2節その13 「炉部屋の風景 続き 嫉妬と欲望の綯い交ぜが・・・ 涙[涎]を流す その7 乱交?寸前」
*
相変わらず蒸し風呂状態の炉部屋の中では、けっこう珍妙な状況が出来しているというべきだった。
つまりおよそ三組の、奇妙な拮抗状態が並存しているのだが、そのそれぞれが互いに完全に没交渉であるにもかかわらず、
イヤそれ故にかえって、他の二組の現状を完全に意識の隅っこで捉え続けている、
イヤ、トゥ・レェースせざるを得ない、そんな状態が何か絶妙に危うい均衡を保っている、
と、言うような・・・
そして物理的な相関に限れば、この炉部屋の適度な広さと狭さ、異常な高温、垂れ流される汗がそのまま部屋の空気を熱帯雨林下の過飽和状態同然(つまり、汗が汗を呼ぶ、即ち大洪水・・・ )に保ち、
それが一種の言うに言われぬ心理的解放=無軌道三昧とも言う=
逸脱状態を導出している・・・?
と、でも言うような・・・
汗が汗を呼び、大洪水が・・・
ビショビショ
イヤイヤ
そうじゃない
*
「もう長いの?」
「なぜそんなことを訊くんです?」
シュリアナはもう何度目かはわからぬけども少しも嫌そうでなく
だが断固たる意志の表示をも兼ねながら
それでもかなり優しくは気遣っているのだろうか
アトゥーラの左手を
やや邪険を装いつつ払いのける。
(だがその右手は、奇妙な、ありえない記号を描くように
その都度震えながら、己のが心臓の真上へと舞い戻るのが
相手の、見た目とは全く違う重さへの直覚から来るものなのか
それとも、もっと異様な内的波動の洗礼によるものなのか
ここでは確定できない・・・)
その奇怪な左手は先ほどからずっと侍女の右耳や鬢の後れ毛、
耳朶の下の凹みなどを撫で回し、軽く押さえ、
時に指先に銀灰色の柔らかな髪をからめたり
また器用にクルクルの、輪っかを作ったりするのである
(その動きの滑らかさは・・・ )
今二人はどこからか出現した※1
眩しいほど純白のタオルケットをすっぽりとかぶり
すっかり そしてほっかりと
お籠りの状態にある。
極薄い布地1枚が作り出す白く明るい閉鎖空間の親密性、そして仮初の隠密性は
その薄明かりを通して
他の五人の様子を影絵のように曖昧に
ただいくぶんギクシャクと
なぜか微かな時間差とともに描き出してはいるのだが
(これが全く奇妙なことであるとは、二人共気付いてはいない)
どこか遠い、何か無害で親和的な、ほとんど絶対的に没交渉な
別世界の消息として二人の意識の内側に
ある種、曖昧な背景放射のように遍在させているかのようだ
「ねえ、シュリアナさん、」
「なんですか」
「あなた平気なの?」
「なんのことですか?」
「ほとんど死にかけだったのよ」
「そうかもしれません」
「あなたって何故そんなに平坦なの?」※2
「さあ」
「さあじゃないでしょ」
「わたしにはわかりかねますね」
この時、二人の間の距離はちょうど林檎一つ分ほどであった。
ほぼ全裸の二人の体は、この微妙な間隔で平衡状態
いや、平行線を維持していた訳である。
(しかし 融合、ではない、密着は時間の問題である、と誰もがそう考える)
だが実際問題として二人共汗みずくであったから
そう簡単にくっつくには心理的かつ生理的な抵抗があったに違いない
(即ち≒性的興奮状態ではない)
その抵抗値に、しかし、お互い変動する絶妙な
変態的な差異があるのは
当然であったし
そして
必然的に
アトゥーラの方が先に手をのばし
その身を寄せる
二人の体が完全に密着した時
突然
間近で
一つの哄笑が沸き起こった。
「なんか賑やかね」
二人はおでこをくっつけあったまま
非対称的・・・
(互いに謎を掛け合うような)
ともいえる互いの瞳に見入っている
鼻先で突っ付き合い
唇で突っ付き合う
「あれは?」
「バスポラね、」
「お聞きしてもいいですか」
「なに?」
「お二人はどういうご関係なんですか」
「まあ」
とアトゥーラはとても微妙な形に唇の端を歪めてみせる
「義兄妹? ってことかしら」
再び哄笑。
「ちょっと興味があります」
「ふふふ、そおお?」
また哄笑。
「あの方の本体、つまり、本質?でしょうか、 要するに正体は、
狼ですよね、」
「そおね、そお、そっか、あなた、ドア開けてくれた時見てたもんね」
「かわいい狼さんでした」
「で、今、あなたのご主人様がアレに言い寄ってるんだけど
やっぱり気になる?」
「まあ、すこしは」
「ふふ、じゃ、ちょおっと聞き耳頭巾ちゃんでいこうか」
「ジーナ様とドゥーナ様もなんかなさってますが」
「まあ、同時観測ってことで、
でね、私達は静かに、静かぁーーーに、ね、」
で、二人はなぜか突然、偶然の共犯関係特有の親密さで
抱き合ったまま、ゆっくりと聞き耳を立ててみる
*
「そんなに可笑しなことですかな?」
グレオファーンは窓を背にしたまま何故かぎこちなく立ち、手には小さな◯◯※3を捧げ持っている。
(どこから出したのだろう)
バスポラは先程より余程背が伸びているが、それでも巨大な男の二分の一にも満たない。
捧げられた◯◯を無視したまま、やや呆れた風に順繰りに視線を巡らせてゆく
その精悍な薄い髭面には嘲笑の色が濃ゆいのだが、どこか面白がっているようでもある
そして
狼少年(文字通り!※4)の肢体は、やや痩せぎすではあるが極限まで撓められた鞭のような強靱さ、
暴悪の爆発力をも秘めるある種剣呑な潜勢力を匂わせつつ
それでいて
堅牢無比の、破壊にも防御にも果てしのない強度を誇る、所謂万能めく、
純粋陸戦兵器の如き煌めきを帯び
鈍く そして淫らで 滑らかな、ほとんど建造直後の機械じみた
ナマメカシイ赤銅色に輝いている
用心深く周囲の状況の要点を経巡っていた視線は、また最初の一点に戻ってくる
なんらの遠慮も、ましてや慎みなんぞも全く無く、凶暴なまでに屹立したソレは高い天井を指したまま微かに、そして一定のリズムを刻みつつ、何やら途方も無い予感に震えるように脈動しているのである。
その先端には透明な雫がひとつ、無垢な朝露の如く輝いている。
それだけを取り出せば、ひどく牧歌的とも言えるのであるが、
ソイツが指向し、内包さえしている一事(特殊作戦遂行能力)を想定できるものにとっては
そうそう暢気に構えていることもできない、とは明白と言えば明白、
ただしこちらの心境の変動次第では、どうとでも解釈、変更可能な
事態であることもまた確かなのであった。
そうしてその横では、まさに同様に魁偉極まるドナドナが不抜※5の切株然となって腰をおろしていた。
その長大な両脚を何か玩具めく簡単さで非常識なまでに小さく折り畳み、
窓台下の腰板(ここには書棚がない)に
ほとんど融合するような形でもたれ掛かかっている
右横に顔を向けグレオファーンの肉体美を嘆賞しているのだが
視界の右隅には窓外の風景をも完全におさめているらしい
だが今その長い右手を伸ばし間近にそそり勃つモノにそっと触れようとしている
「これは・・・ まさに、世界の脅威、イヤ、驚異じゃな」
(どっち? ・・・ と誰かが呟いている、アトゥーラか?)
「それは、つまり、いわゆる求愛ってやつなのか?」
バスポラは鼻先の○○を目を細めて見つめている。
大男は肘を腰骨のやや上に当て、ほぼ水平に前腕を突き出しているから
見ようによっては例の○棒が、小さな花輪を冠として澄ましているようにも見える。
「古式に則ったというわけか、いよいよ滑稽だな」
「誠実の証しだよ、どうだね、受けてくれるかね」
「で、そこで涎を垂らしてるソレは、何を意味しているのかな、」
「見ての通りのモノだがね」
「まさか今すぐソレを受け入れろというわけか」
バスポラは左手だけを出して◯◯を取り花の数を数えた。※6
(ここで、すでに、承諾となる?)
匂いを嗅ぎ首を振った。
そうして右手へと持ち替えるとソレにかぶせてしまう。
鮮血が後追いの雫となり滴り落ちる。
◯◯は変容して文字通り「茨冠」と変わっていた。
(上書きされたのである という注釈があるが意味不明)
「ちょっと痛いですな、」
しかし傷はすぐに塞がり怒張の度合いはさらに増大したようだ。
グレオファーンは空いた両手を窓台に、ゆったりと後ろ手につき
悠然と腰を突き出した
亀○(ソレ)を飾る花冠は間をおかず萎れて行き
凶悪に、赤黒い、粘膜へと吸収されてもはや跡形もない
何事もなかったように脈打つそれはさらに長さを増したようだ
ドナドナの右手がさらに伸び一層強度を増したようにも見える肉の棒をしっかりと握る
長く長い右腕の全自重をかけるが小揺るぎも無し
「大きければいいってもんじゃないな」
「こうなった以上もうおさまりがつきませんな」
「どういう理屈だ」
「理屈ではありませんな」
「まあいいさ」
バスポラは視線を巡らせ、すぐ後ろ、ベッドの上の巨大な、純白に輝く繭玉(何か時々モゾモゾ動いている)と
そのはるか後方、同じベッドの端近く、奇妙な格好で
半ば挑み合うように絡み合っている
金色と白銀、
二人の、
真っ裸の少女を見た。
(あんなに喜んでいた折角の真新しい下着、
寝間着代わりのシュミーズはホンの一瞬でお役御免となったわけである、どちらもクシャクシャになり、1枚はベッドの裾からずり落ちかけている)
「どうだね、もう我慢の限界も近づいているのだが・・・ 」
グレオファーンの端正な美しい顔が、陽炎のように歪み
果ては周囲の空間がごくごく微かに、揺らいでいるように見える
「それはそうと、」
しかしバスポラは相手の焦燥をよそにワザトラシイ暢気な口調を続ける。
「あくまで奥床しい、古式に則るというのなら、」
少年の鼻面が少しく前方に迫り出し髭の一部がかなり濃ゆくなる
嘲笑めく口元はさらに切れ上がり耳の横にまで近づく
「あんたは、俺に、何をくれるというのかな、」
「な、なにとは?」
「それを受け入れるということで、一体俺には何んのオトクがあるのかなということさ」
「オトク?」
「そう、オトクさ、だが、尋常一様のモンでは話にならんぞ」
「じ、じんじょういち・・・ 」
「俺を子供扱いして馬鹿にしてもらっては困る、
少女には少女にふさわしい
少年には少年向きの、とくるのだろうが
そんじょそこいらに転がっているモノでは埒が明かん」
「うーーーむ(難しいな)、 そうだな、
形而上学の全否定でもある全く新しい第一哲学の綱要では?」
「話にならん」
「近接格闘技の全く新しい受け手は?」
「間に合っているな」
「鳥と蝙蝠に次ぐ全く新しい飛行術」
「興味ないね」
「海淵の底まで極めうる全く新しい潜水術」
「あいにく水界は管轄外だ」
「占星術と夢の解釈の理法を合わせて解いた新奇な学説がある」
「そんな寝言みたいなマヤカシに興味はないな」
「うーーーむ(困ったぞ)」
*
「バスポラのやつ、なかなかやるわね、」
「ご主人さまがちょっとでも困ってるふうなのは、
うん、わたくしの記憶にあるかぎりでは初めてですね」
「そなの?」
「そです」
「でね、ついでだから聞きたいんだけど、」
「どうぞ」
「この部屋、壁じゅう本だらけじゃない、」
「そうみえますね」
「あなた、あれ全部読んだの?」
「すこしだけです、ほんのすこし、わたくし忙しいので・・・
でも、あれを集めてくるのはわたくしの仕事ですから、
道すがら、ちょっとだけ覗き読みくらいはまあ、」
「てことは、あなた、その格好で町へ買い物なんかに行くの?」
「それは無理ですね、わたしの足では町までは、まあ無理です」※虚言であろう
「そりゃそうか、一番近くてもアレだ、馬でも結構しんどい距離だしね、
つーーか何日もかかる、あたしたちでは無理だよね、」
「ここは行商人もあんまり来ませんしね、」
「うーーーん」
「一番いいのはアムドラーシュの隊商が気まぐれか、何かの裏事情か、
いずれにせよロクでもない理由でこっちを通ってくれたりすると・・・」
「すると?」
「たまーーにですが、結構珍しいものを落としてくれたりするんです」
「その中には本もあると?」
「そう、ほんとにたまにですが、」
「でもまさかここでってことは・・・
ねえ、あたし何年もこの森通ってるけどこの岩に、
っていうか、ここの大楠にさえ気付いたことないもん、」
「そりゃそうです、ここは人間には感知できないですから」
「ふうぅーーーん、で、なら、ソムドの隊商とはどこで落ち合う(商売する)の?
ふつうこのちかくならウチを使うわよね、っていうか、ウチしかないでしょ、
でもさいきんは全然来ないって姉さんは怒ってたけど」
「アムドラーシュは基本夜旅をかけて強行突破して行きますね、野営には都合のいい河原がすぐそこですけど滅多にやりません、何か人間的には支障があるんでしょうね」
「どゆこと?」
「あなたはよくご存知のはずです」
「ああ、アレか」
「そう、アレです」
「うん、でも今は前ほど恐くないかも」
「それはすごいかも」
「あのお鍋の底にいったい何があるのか、
なにか生きてるものがいるのか、あなた知ってるの?」
「わかりません、というか調べようがないんです」
「どういうこと?」
「わたくしがご主人さまのメイで調べた限りでは何重もの魔法がかかってるみたいですね」
「そなの」
「この磐座が発している認識阻害能とは全く違う感じですけど、
そうですね、二重か、三重、それ以上でしょうか」
「たとえば?」
「ひとくちには言いにくいんですけど、そう、まず、関心のない者にはなんの影響も与えずすぐ横の尾根道を素通りさせたり、」
「ふんふん」
「ちょっとでも気にして下へ向かう道をさがそうとするとナンカ気分が悪くなる、天候が悪化する、偶発的な、っていうかそう見える偶然的に?
地崩れなんかが起きて道が塞がり明後日の方角へ向かわせる、」
「うん、そおいうこともあったかも」
「そして本格的に侵入しようとするヤカラ、たとえば、冒険家、山岳技師、山師、博物学者、植物学者、動物学者、みたいなヤツラには」
「ヤツラ・・・」
「それぞれ完全に固有の、その人が一番恐れているものが具象化して迫ってくる、っていうような段階もあるみたいで、」
「なんとなくわかるわ」
「でも、発狂寸前まで追い詰めたりはしないんです、」
「かんたんにデキルのにねえ、」
「ええ、そして肝心なのは、道を逸れ、遠ざかりつつ行くと
次第にその記憶そのものが薄れてゆく、でも完全に忘れるわけではない、イヤーーーな感じだけはウッスラと残るので二度と近づくことは、
意識的にはできない、そんな感じでしょうか」
「なんかミョオーーに慣れ切った感じ、人の心を舐めきった感じがするわ」
「でも稀に、そういった手順を全部踏み越えて核心に肉迫できそうな、
例外的に(イレギュラとしても)とても強力な人間もやってくることがあると」
「あると?」
「すると、ほんとマレですが、あっさり通してしまったり、
なんかよっぽど虫の居所が悪かったんでしょうか
瞬間的に塵も残らないくらいに分解しちゃったりもするんですよねえ、」
「キマグレの極みね」
「ええ、でも、とほうもない力です、」
シュリアナは小さな額にひどく複雑なシワを寄せ、しかし自身の長広舌にも嫌気がさしたようにやや自嘲的な微笑みを浮かべた。
「絶対に関わり合いにならないほうがよい、そういう存在かもしれません」
「アソコを覗きに行くなんてあたしだって金輪際ゴメンだわ」
アトゥーラは相槌を打ちながら、しかし全く反対のことを考えていたらしい、そのことを隠したい一心か突然、髪の上から左目を押さえ今この瞬間気付いた風に実況を伝え始める。
「わかる? なんか変なことになってきてる、」
「完全に見えるんですか?」
「うん、今こっちの方の目に見えてきた」
左の赤眼は開いていた。しかし、赤毛が覆いかぶさり外目にはわからない。シュリアナが再び震え始めた。
「ア、アトゥーラ様、こっちを見ないでください!」
「なんで?」
「丸裸にされそうな感じです、」
「もう裸でしょ」
「そうではなく、内蔵まで丸見えって感じです」
「ああ、それで思い出した、あなた、」
「はい」
「もう何日も、っていうか、それ以上、へたすると何年も
なんも食べてないでしょ」
「そんなことありません」
「うそ」
「なにか証拠でも?」
「あるわ」
「おっしゃってみてください」
「いいかげんその言葉使いやめて! それから様付けもね」
「ではいいかえます、証拠があるなら見せてください」
「見せることはできないわ、でも感覚なんだから絶対確実よ、」
「どうぞ」
「さっきあなたの○○○を舐めた時」
「いや、それは証拠では」
「黙って、あたし、出てきたものをすっかり飲み込んだけど消化物の気配が全然なかったわ」
シュリアナの蒼白の頬に微かに赤みがさした。
「反論できるの?」
碧の目の小娘はたたみかける。
「あなたがそう感じるのならそうなんでしょう」
「答えになってない」
「それではこうしましょう、」
「なに?」
「そういう体質なんでしょうか、なにも食べなくても平気なんです、
事実なんですからそうとしか言いようがないんです」
「まあいいわ、それはまたゆっくり追求するとして」
「あ、あの、アトゥーラさ、いえ、ま、
あ、アトゥーラ」
「ん?」
「そんなことよりも、おきき、いえ、聞きたいことがあるんです」
「どーぞ」
「さっきのあなたのなさりよ、じゃなく、やり方についてです」
「だからなに?」
「なぜ飲み込んじゃったんです? わたくしの状態から逆算すれば、
あそこは吐き出して処理するのが当然」
「逆算って、あーーた」
「完全に有毒な液体だったはずです、誰が見ても自殺行為です」
「おいしかったわ」
(ええええーー、ああ、凄まじい変態だわ、この人、)
「でも、自暴自棄って感じではなかった、あなたは冷静でした、
あれは、わたくしが推察いたしますに、あなたの心理状態が一種、」
「あっ! 待って、いまいいところ!」
「なんなんです?!」
アトゥーラは、無意識にだろうか話をそらし実況解説を再開しようとする。
「ごまかさないでください!」
「あなたのご主人様のことよ、ききなさい」
「それはずるい」
「あなたとは、これから、なんどでも、ゆっくりお話するつもりよ、
だからききなさい、いま、これは、とてもへんてこで、きみょうな、
ありえない状況なんだから、注意を集中すべきなのよ」
「わかりました、では、で、じゃあ、その目はそっちの方へはずしてください、ああ、あまり見ないで」
アトゥーラは自身のおでこを軽くぶっつけると窓側の
明るい方へと顎を向け直した。
(軽くコツンとやったつもりだったのだが、シュリアナにはかなり痛かったらしい、すこし涙目になっている)
「ほらほら、あなただって気配は追えるでしょ、前見て!
ふたり、いえ、さんにんの姿がみえる」
「影はわかりますが、いったいなにがなにやら、ドナドナ様はどこに?」
「あなたのご主人の横に座ってる、で、あなたのご主人様のを
ゆっくりしごきながら自分のもいじ・・・ あれ かわいい、
あれ、あんなに小さかったかしらん、」
「ち、ちいさいとは?」
「わかってるくせにきかないの、
ただ、体格的にだいたい同じなのにあの極端な差は不思議っていうか、」
「ああそれなら、ここは理想が反映する場所ですから、それもありうるかも、」
「やっぱりわかってるんじゃない」
「男の人は時々そうやって自分をかわいい女の子(または男の子、または異性体)に見立てたくなる時があるそうです」
シュリアナももはや開き直ったように腐った解説を始める。
頬杖をつき軽く頭をアトゥーラの肩に寄せる。
「バスポラ様はどのように?」
「まだ焦らしてる、あの子のお○り、あんなにかわいかったのね、
あらら、しっぽが出かけてる、でもプリプリね、おいしそう!」
「ア、アトゥーラ、ちょっとハシタナイのでは?」
「あっ! こっち向いた、あいつ、狼の顔に戻りかけてる、
はは、でもいい面構えだわ、うん、お!? おおお、
ああ、あんな顔するのね、はいったのかしら、うん、入ってるわね、
はは、ちょっと痛そう、なんか唸ってる、
なによ、オトクのナンのってごねてたくせにもう妥協したのね、」
「アトゥーラ! アトゥーラ! グレオはどんな顔してます?!」
「サンザ追いかけ回してた
意中の子の背中に
やっとよじのぼれた鳩の雄みたいな顔」
「なんですか、それ」
「わかってるくせにきかないの、
でも瞬間的な鳥の交尾と違くて長続きが持ち味、が、あれ、
あらら、ドナドナ様が横入りした、素早い! なんかクネクネ!
変な動きよう!」
「ああそうですね、おおきな影同志がひとつになりました、
ドナドナ様は、あんな立派なおヒゲのお顔はどんなですか?」
「ふふ、あなたもやっぱり腐ってるわね、スキなのね、
ドナドナ様はあのおヒゲだけどやっぱり女の子みたいなせつなそうなおかおをなさってるわ」
「アトゥーラ! グレオの表情は違ってる?」
「あの強力な両腕でドナドナの腰を抱き締めてる、
お顔は、そうね、バスポラの時ほど手放しの幸福感は漲ってない、
なんか緊張してるみたい、でも全身が震えてるわ、」
碧眼の小娘が自身の唇を舐める。
「あ、バスポラも参加」
「よくわかりません」
「影の中だもんね、あいつ、今、ドナドナ様のとってもかわいいのを
口に含んでる、したのもころがしたりしてる、忙しいわ、
なんか、よくみえるようにちょおっとこっちがわへむきをかえてくれたみたい、
じぶんのも(なにあれ、なが!)いじってるし、
あれれ、あいつのせなかにちっちゃなバラの花がはえてるみたいにみえる」
「ゼノーンの薔薇ですね、グレオのお気に入りです、」
解説の声の響きにはちょっと苦い、ややこしそうな感じがあったが
アトゥーラはあえて無視する。
ー ねえ、イヨルカ、あの薔薇、ー
ー 待って、さんにん、同時よ、ー
三者三様、異様な雄叫びがこの狭い炉部屋にこだまする。
*
「なんだかにぎやかなことになってるわね」
「いいけど、ちょっと、ちかいわ」
「なにいってる」
「こ、こんな、まだそんな、ゆるしたおぼえ」
「ありえないな」
「な、なに」
「ありえん、といっとるんだ」
「あっ!ぐうぅ! そんなにきつく!」
「たしかに、このからだはりそうけいだ、」
「ゆ、ゆるさないっていってるでしょうが!」
「こんなからだでやるじっけんとはなんだ?」
「な、なに、なんのこと?」
「おまえが、まいつきみっかみばん、このからだでやってることだ」
「そ、そんなことより、グレオは、いったいなにを、いまものすごいこえがした、グレオのあんなこえ、あたしには」
「こたえろ、それとも、俺にはいえんことなのか」
「だ、だれが! あたしがどこでなにをしようと」
「こたえろ、それとも、これがこたえなのか」
「ああ、そんな、どうじに、ふたつとも、ああ、ふかすぎる、」
「こたえろ、グレンがそんなにきになるのか」
「なぜ、いま、このタイミングで、なぜ、あんたが
なぜ、ここに、あああ、い、い、い、」
「こたえろ!」
「こ、こんな、ぜったいゆるさない、ゆ、ゆる、さ、
い、い、あ! だめ! それいじょう、あああ、」
「こ、こたえ、ろ、こ、」
「あ、ありえない、ありえない、こんな、あたしが、
あたしが、いしゅぞくの、こ、こんな、」
「ちかわせたのはおまえだ」
「ああ、なぜ、どうじに、ああ、まだふえる、ありえ
ああ、そうか、ここは、あ、あたしにはここが、
あのきおくをけすため? たしかめるため?
にんげんのあいの、さいこうちを」
「なぜおれをさける、なぜにげる、なぜだ」
「あ、あなたは、あああ、あん、あんたは
おうごんのあくま、まがまがしい、ぜったいのあく、
わがしゅぞく、わがじょおうのしゅくてき、それを
あたしが、ああ、あんたの、あんた」
「ドゥーナ!」
「ジ ジーナ! (アンサプラス グゥエイン ホォウラス※7)」
*
「なんかあっちもすごいもりあがってる!」
「ドゥーナ様 行き方がスゴイ!」
「こっちもガンバらないと!」
「えっ! ちょっと待って! そこはまだ、あああ」
*
「ううーーーむ、あちこち、たいそうもりあがっておるな、」
「しかしこれは、なんか、なんというか、一切合切仕組まれてたって感じがするな」
「バスポラ君、君は鋭いね、しかし、予見と予言、分解と再構成、
いやちがった、予定調和と再構築、無限修正過程とが相矛盾するとは
習わなかったかね」
「ふん、タワゴト繰りが!」
全裸の大男は二重の意味で屹立しながら平然と佇んでいる。
正確には、ドナドナの口による奉仕を受け入れている。
三人が三人とも、依然として臨戦態勢を維持しているのである。
「そしてこれは、唯一無二、一期一会、いやちがった、
永劫回帰の頂点部分というべきか、」
「なあ、ドナドナ、このおっさんはちょっとおかしいな」
「よいよい、言葉の使い方としては、別に間違っとらん」
「いやいや、失礼した、言い換えましょう、
この稀有なる出会いを確かにする、あるひとつの、
冴えたやり方を提案したいのです」
全裸の偉丈夫は窓台に腰をつけ、左手を伸ばす。
そして小さな、翡翠細工の鉢を引き寄せる。
一輪の真紅の薔薇が弱々しく、しかし曖昧に首を振る。
*
「アタシを追ってきた理由を聞かせて」
「おや、急に冷静になったな」
「巫山戯ないで」
「お前が根っからの戦略家だってのはよくわかってた」
「話をそらさないで」
「俺を逆にはめてやろうって考えてたろ」
「そんなこと!」
「だが、我軍は何度も痛い目に遭い何かおかしいと気付いた」
「単なる偶然、もしくは幸運だわ」
「暇だった俺に特命が下り捕獲作戦に出た」
「馬鹿な話」
「そう、馬鹿な話だ、
俺は網を張ったがなにもかからない、はかばかしい報告もできない、
(なぜそんなことになるのか、は、省略してもいいよな)
で、しびれを切らした女王は別動隊にも指示を出した」
「恥の上塗りね」
「しかし、今度出てくる奴はそう甘くはない、しかも二隊、三隊となるといささか手に余る」
「あんたの手を煩わせる気はないわ」
「とにかくだ!」
「あ、だめ、まだ、そこ」
「とにかくだ、おまえはもう出歩いちゃいかんのだ、
城に籠ってろってことなんだ、別動隊の件は俺がなんとかする、
しかしすこしばかり時間が要る、俺に時間をくれ」
「ああ、そこは、ぐうぅ、うん、あ」
「とにかくだ、ここは目立ちすぎる、俺だっておまえを拘束するつもりはないが、今は状況が違う、言うことを聞いてくれ」
「あ、あたしが、あ、あんたを、あああ、ずるい」
「とにかくこの周囲は特に飛行禁止だ、危険すぎるのだ、
すぐに主城へもどり引き籠もれ!」
「こ、この状況って、あんた、いま、あたしに
ああ、もう、もう・・・ もう、だ、だめ!」
*
「今ここに集う七人は、ある絶対的な絆で結ばれている、
と、そう感じるのです」
グレオファーンは荘重に始めた。但し三人の肉体的連結関係の位相には些か、微妙な変化がある。
「もちろん 偶然です」
大男はさらに荘重に述べた。
「しかし、偶然とは何か?」
大男は再びオオカミ少年と結合する。
「もちろん、偶然と必然は表裏一体、
いな、むしろ、メビウス・リングの位相に同じ」
ドナドナは遊んでいる少年の長大な○○※8を清めるべく、やや窮屈そうに潜り込む。
そして時に両手を使い少年の体のあちこちを愛撫している。
少年は、偶然を装い目の前に聳える二本の、魁偉極まる膝頭を掴み体重を支えている。時に全身を走る痙攣がナマメカシイ。
「そう、リングなのです、
ひとつの輪となることが、この世界の実相を映し出す真実の鏡となることを
わたしはいまここで示したい」
ドナドナがバスポラの腰脇に顔を出した。
「もしかして、例のアレ、偽ウロボロス・サークルのことかな」
「まさに!そのアレです!」
「アレをここで構築すると?」
「然り」
「しかし、アレ となると、いささか人数が足りんと思うがの」
「問題ありませんな」
大男は巨大な左腕を旋回させ眼の前の空間を薙いだ。
風が起こり、薔薇が揺らめく。
「シュリアナがおりますからな」
*
アトゥーラはおのが体の下のシュリアナを見た。
見上げる小さな侍女はユックリと頭を振る。
涙のたまった目は
【諸注混在 あとで整理いたします】
※1 どこからか出現した
このすっとぼけけた書き様は何故だろうか
※2 平坦
ここの語用は奇妙である、ふつう、平静?とか冷静?とか言うところ
アトゥーラの言葉使いには時々こういったズレがある
しかし、意味はなんとなく通るし、かえってより的確な感じとなることもあるのが
不思議といえば不思議
※3 ◯◯
花冠、又は、花輪
※4 文字通り!
これはアトゥーラ視点というべきツッコミだが、
さらにメタな注釈とも取れば、ややおかしなこととなる
※5 不抜
これは不正確だが、絶対に掘り起こし不可能な膨大な切り株の如し、などという含意らしい
言葉足らず、というか不味い表現。しかしSBの意志に従う
※6 左手だけを・・・取り
片手で(左、右の順)、両手で、直接頭の上で、受けるという具合に段階を踏み、
受け手の意志の輪郭が示される、という
その後の所作にもいちいち複雑な意味があるらしいがここでは省略
※7 (アンサプラス・・・ )
この呪言?はまだ解読されていない
※8 ◯◯
ここでは、むろん、○茎 を指す
後書き
「うむ、やっと盛り上がってきたな!」
「なにゆっとるんすか! ちゅーーか、われらがヒロインになにやらせてんの!」
「問題ない!」
「ありまくりだわ!」
「そんなことよりネコドノ、なにか報告すべきことがありゃせんかの?」
「あっ! そうでした、え、えと、おほん、
不肖、雲野根子、恥ずかしながら本日より
愛する姉様の別宅へ押しかけ女房、いえ、もとい、
お手伝い妹として限定同居の次第と相成りましたこと、
ここに謹んでご報告申し上げます、」
「ほほう、誰が押しかけ、いや、お手伝いやて」
「やや、いえ、姉上、これは言葉のアヤという奴でして
もとより他意はなく、」
「ほんでから、誰が何を手伝ってくれてるって?」
「あう、そ、それはこれよりのち、おひおひ、」
「つーか、あんた、本日よりって、こっちころがりこんできて
もう二月近いで」
「あう、それももちろん、いわゆる、アヤという奴で」
「ほんでから、毎日食っちゃ寝してるだけのやつが
なにをどうてつどうてるて?」
「そ、それは、あの、それ、あたくしの存在そのものが
癒やしとなり、姉上の心の傷を、癒やしとなり」
「いやし、いやし、て、あんた、頭のネジ、だいぶどっかに
落としてきてるやろ、」
「ち、ちがいまひゅ、そりはアタクシは、もともと役立たずの
オッチョコチョイのミソッカスのカスではありましょおが」
「もおええわ、それで、肝心の、お話の方がどうなったて?」
「ああ、それなんです、姉上様、シャリーの奴、ひどいんです、
なんちゅーーか、もうおのれの趣味ばっか全開で、それもネットの毒もろ受けで
お話が全然すすまんどころか、シチュのすべてが桃色一色、」
「コラコラコラコラ、なにゆっとる!」
・・・ ・・・ ・・・
とまあこんな訳で、ギリギリ三ヶ月、公約?の範囲内でやっと
続きの一部をあげることができたのでした。
さて、さっきの 久しぶりの三者面談実況のチョイ切り出しはいかがでしたでしょうか
なんか自分的にはスゴク懐かしい、涙の出そうな、
ああ、実に久方振りの姉上の言葉責め、ゴチでござい
ゴタン!
あ、う、お尻が痛いです
涙です
お◯り と 涙 といえば
次回の状況は実に余談を許さぬ
ややこしくもワイ◯ツな、
もってのほかのシチュに突入しそうな・・・
え、ナンノコッチャ?
そうですな
キィワドをひとつ
シャリーどんがポツリと漏らした独り言より再録いたします
「そう、わかる人にはすぐわかる、
つまり
おお、リオ◯ルド! おおリオ◯ルド!
ちゅーーーわけヤ」
でも訳者としては迷っております
運営様も気になりますし・・・
省略してしまいたい・・・ といふ
ヨクボウがフツフツと・・・
いえ、ま、ここはすべてシャリーどん次第
彼に丸投げっつぅーーーことで茶濁し
ああ、すみません、精進イタシマス
それでは皆様、また、秋風の吹くころに・・・
「こらこら、わたしンチで、わたしの目の黒いうちは、
そんなゼェータクは許されへんでえ、覚悟おし!
ビシバシ行くでぇーーー」
「ああ、姉上サマ、ウルウルです!」
「はよ辞書取ってこんかい!」
【続く】
20250630




