第1巻第2部第2節その09 「炉部屋の風景 続き 嫉妬と欲望の綯い交ぜが・・・ 涙[涎]を流す その3 」
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で、とにかく、一同はシュリアナの可愛いくも複雑なお尻の動きを注視することになったのだがもちろんドゥーナの思うほどヒドイ状況であったわけではない。しかし長いことむせ続けている主人の方は次第に侍女の献身を邪険に扱い始め、終いには全くの余計なお世話だとばかりにそのナフキンまで奪い取ろうとするのである。
「なぜ邪魔するんです、おとなしくなすってください、」
「いやもういい、ゲフン、あとは自分でできる」
「そんなにむせてまた落としますよ」
「グフ、いいからもう降りろ」
「嫌です、ああもう、これ一番いいネクタイだったのに、あっ! 何するんですか!」
突然主人である大男は小娘をスッパリ裏返し、膝の上、
というよりもむしろ腰の上に引き落とすように座らせた。
一同はただ啞然と見つめるばかり。
侍女は正面向きにいきなり体を全開させられ
さらにアラレもない姿となったがそれでもほとんど表情を変えずひどく冷静な面持ちで一同を見返す形となっている。
たださすがに膝だけはすぼめて秘◯を隠そうと試みるのだったが主はそれを許さない。
だがシュリアナは無言のまま、異様なほど平静に、
そしてそう、まさに一瞬の躊躇もなく太ももの短剣を抜き男の膝頭に突き立てる。しかし男にとっては蚊に刺されたほどにも感じないらしい、それこそ微風に撫でられたという顔付きであっさりナイフを摘まみ取り後ろへと放り投げる(まずは微小な削げを始末したという感じ)。
「なあ、シュリアナ、御前はいい娘だがちょっとタリナイところがあるな」
「わかりませんね、まあ、言ってみてください」
「ほんとにわからんのかな、しかしまあ、私がちょっと怒っているのはわかっておるな、」
「さあ、どうですか、」
「ほんとうになんの心当たりもないのかな」
「ありませんね」
「そうか」
グレオファーンはやや残念そうに眉間に小皺をよせたが、
ふと目を上げてこの際おいてけぼりの一同が、いかにも気まずそうに
見事バラバラに彷徨わせたり、または真っ当にも奥床しげに伏せてなどいる視線の幾つかに気付くとさっと表情を切り替えた。
「これは大変失礼をしたようだ、話の腰を折ってしまいましたな、」
「そんなことよりグレオファーン殿、シュリアナさんをどうなさるおつもりなのかな?」
ドナドナがごく自然に問い掛ける。
「これはまあ、主人と奴隷、おっと、奉仕されるものと奉仕するものの関係を確認する、一般解を求める行為ですな、もちろん、時と場所を選ばなければならぬことは承知しております、しかし、この子の場合、そうも言っておられぬ事情もございましてな、」
「わかりませぬな、どういうご事情ですかな、」
「いや、それを明かすことはできんのです、ここでこのシュリアナの本質を開示することは、もっとも微妙で、個人的秘密に関わる問題でもあり不可能なのです、ですが喫緊の課題として厳格な対応が即時的になされぬことには要するにこの子のためにならんのです、」
じれったく、かつ、まわりくどい言葉の羅列の裏側でシュリアナの表情にはやや苦痛の色が浮かび始めているのをアトゥーラは目敏く感づいている。
グレオファーンの巨大な左手はそのままシュリアナの喉首を押さえ、右手は侍女の右足を自分の太ももの上にガッチリと固定しているのである。
そのかなり虚ろな金色の目玉は微妙に振動しながら何故か奥深い、いな、いささか後ろ暗いと言ってもよさそうな愉悦の表情を浮かべている。
「グ、グレオ・・・ 」
小さな侍女が微かに呻く。
同時にそのほとんど露わな腰を左右に捩り、
ほんの少しでも浮かせようとするらしいのだが
何かの麻痺がかかっているのか微動だにできないようだ。
「なあ、シュリアナ、私は常々言っておったはずだ、御前は常に無音で行動せねばならん、
それはこの○○○キューブの中での絶対の不文律、
全ての行動に先立つ絶対の前提条件であると、」
「グゥエゥ」
喉を詰まらせたようなイヤな音である。
「そして御前は二度ばかし、この絶対の掟を侵犯した」
「ぞぅれば、そぼぅ、あなたぐぅわぁ」
「まず、ドアを閉め、そして開く、細心の注意が必要な局面でだ、
二度目のはひどかったな、
私はもろ手を上げて遺憾の意を表したはずだが御前は少しも意に介さなかった、」
「あ、あた、」
「あ? 新しい評価が必要かな?」
侍女は微かに首を振ろうとするができない。
「御前は仕えるものだ、そうだな、」
侍女は頷こうとするがそれもできない。
しかし今や、その視線は真っ直ぐに、
アトゥーラの疑惑に満ちた、だが無限の同情と共感にも満ちた、
深い、底無しの、碧緑の右目に固定されている。
その深淵の意味を完璧に捉えているらしいシュリアナは、ゆっくりと、
ただ一度だけの完璧な動作、
巨大な洞門を開閉させる作動(差動)機構のように
そう、ひどくゆっくりと瞬きをする。
そしてそれが合図となった
アトゥーラはゆっくりと立ち上がった。
*
・・・
後書き
ただの脱線、余計な寄り道みたく始まった今回のお茶会なんですが、
実を言うとコレ、今後の展開を占う最重要のタメの回、
この物語の本質を規定する最下層の基本構造の一端が露呈する
暴露ならぬ暴露、意味深長も極まった暗示回なんである、と、
かのSB氏より お言葉を 承りました。
うけたまわり・・・ました(いまさっきです)
突然そげなこと、宣言されましても
なにも言えない訳者なんでございます
ございますが、まあ、非力を尽くすのみなんで ございます
(ええ加減慣れてきました)
それはそうと、またもや、申し訳ないことなんですが、
プライベートでもちょっと、いや、だいぶん、
切羽詰まった事態が進行中・・・ なんでございまして
(またもやです、しかも今回はもっぱら姉様のカラミで、さらにキツイ)
しばらく更新が滞ってしまいそうです
それとは別に、やはり、年末進行のシワヨセも
もちろん、カランデくるのです(これは私のお仕事関係です、ハイ)
本当なら今回はお茶会の中央部、枢要の会話部分まで
訳出の予定だったのですが、全然、無理でした
で、もちろん、極力、たとえ1行でも、毎月、更新を
はい、目指すつもり、なんではありますが
カタツムリさんにも笑われそうな、そんな歩みになりそうです
どうかお許しください
で、ワタクシ、ちょっと拗ねながら
ほかの連載小説さま、疾風怒濤の勢いで進行させておられる
すばらしいストーリーを追っかけることで鬱憤バラシを
しております
具体的には、いつも3時のティータイムに
いつも美味しいお茶を淹れてくれる同僚の女の子に
呆れられながら携帯をいじっております
ああ、シャリーさんに、この1億分の1でも
読者サービス精神があれば・・・
いえいえ、ナイモノネダリはイケマセン
ああ、悩ましいところでございます
目下はまっておりますのは昨日新刊出ました
ムシ(ここホントはちっこいバッタさんの絵文字)※
が一杯出てくるやつです
蟲(ここホントはちっこいハエトリグモさんの絵文字)※
というだけで、シンキンカンです
ああ、ウラマヤシイ
でなく、
羨ましい限りです
スミマセン
ショウジンいたしますです
おねいちゃん、ええかげん
出張から帰ってきてぇ
20241031
※可愛い絵文字を使いたかったのですが
「以下の文字は、環境依存文字のため使用できません。
□(U+1F577)」
とか出るんです。なにか他に裏技的方法があるんでしょうが
そっち方面はサッパリなので・・・残念です無念です




