表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/83

第1巻第2部第2節その02   「森の中 続き」

【承前】(再録3行)

「じゃ、じゃあ、死にたくなったら死んでもいい?」

「それは完全に自由じゃ、」

「よかった」

しかし安堵の言葉とは裏腹に、右目の碧緑はやや藪睨みに、いささか仄暗い、いとも微かな、あるかなきかの疑惑の影を伴って男の青く、青い、底暗い妖しの瞳を覗き込んでいる。

男は、これも微かな、否定とも肯定とも取れそうな曖昧極まる、怪しい目配せめく動きで目を細めていたが左の口角に僅かな微笑のシワをよせているのである。しかし、瀧のような青灰色の髭がそれを覆い隠しアトゥーラには気付くことができない。小娘は続ける。

「どんなオトクだって縛られるのは真っ平だもん、」

「フン! 料簡の狭いやつだ、」

「やっぱり、アホはなおっとらんな、」

「ろくな死にかたをせんぞ、」

「ふぉん、ふぉん、ふぁっはぁーー  ろくな死にかた、とな、ふあん、ふぁん!」

足元の四頭がヴァラヴァラと吠え立てる。そしてスカートの裾にじゃれかかるフリをしながら、四頭が四頭とも奇妙な図形を地面と空中に描き始めた。それは既知の魔方陣※の、どんな構造体とも起源を異にする全く未知の多次元変換素描だったがアトゥーラは目敏くそれに気付いた。


<※魔方陣・・・ 正確には、魔法陣とすべきだが、慣用表記に従う。そも、魔法陣とは言ってもほとんど意味不明ではあるのだが・・・ >


そして相変わらず不可解な微苦笑を続けているドナドナの、やさしい両手をかろくはずし、素早く振り返った。その正面、丁度怪しい角度で着地したトワイムの脇腹をオソロシク軽やかに、だが容赦なく蹴りとばした。子犬のような悲鳴を上げて狼子供がすっ飛んで行く。そのまま腰をひねりボロボロのスカートを翻しながら第二撃をパスポラに見舞う。こいつは優に約三倍のスピードでさらに容赦なく吹っ飛ばされる。残る二頭もやむを得ず構えを解いた。軽くびっこを引きながら戻ってきたバスポラが悪態をつきかけるのを小娘がひっつかまえる。

「ぐぅおらぉう、よ、よせ、」

「つっかまえたっと」

「は、はなせっ!!」

小娘は右の小脇にバスポラの首をガッチリと抱え込みヘッドロックを極めている。モフモフの四足(ヨツアシ)すべてが空しく宙を蹴っているが掠りもしない(学習したのである、つまり良い角度)。

「もう、変なことしないって約束して!」

「なんのことだ?」

「とぼけないで!」

「さっぱりわからんな、」

「あんたたち、また契約式描いてたでしょ、」

「なんのことだか、えい、さっぱり、えい、おおう、く、くるし、」

「ちゃんとわかってるんだから、丸見えよ、」

「お、おれたちは、また、おまえのアンヨで遊びたかっただけだぞ、とんだ濡れ衣だ!」

「そーだ、そーだ!!!」

「だめよ、わかってるのよ、循環契約式だったわ、」

「な、なにを言っとる、そんなもん、人間の目に見て取れるはず」

「し、しまった、パスポラ、俺達、うっかりしてたぜ、こいつ今両目明いてるんだった、」

「ゲッ!」

「ちょこーーーっと焦りすぎたかな、」

「ああ、クソーーー、もうちょっとだったのになぁ」

「まだまだ まだよ! どっちみち、バスポラの終止印なんて絶対阻止するもん、」

「あああ、クソーーー、」

「あきらめた?」

「わかった、わかったからもうはなしてくれ、」

着地後、盛大に胴震いし、くしゃみをし、ちょっと涙目になったバスポラはやや大人しげにうなだれたままアトゥーラの足首に近付いた。

「お詫びの印にちょっと舐めさせてくれ、」

「やーーよ、なに言ってるの、あんた、」

しかし狼は電光石火の早業で噛みついた。今度は右足首の上、一番細いところである。

「痛い! なんで?! い、いた、は、はなして、」

咄嗟にしゃがみこんだアトゥーラはしかしチビ狼の小さな頭を叩いたりはせず、下顎に手を添え軽く(くすぐ)るだけなのである。

「なんで、あんたは、いっつもいっつも、ああーー、もうっ!」

いやにあっさり飛び退いたバスポラを横目に足首をさすっている。薄い噛み痕に血が滲んでいるようだ。

「これが証拠だ!」

バスポラは偉そうに吠えた。

「何が証拠よ!」

そのまま尻餅をついたアトゥーラも吠える。

「血が出とるだろーが、」

「血ィくらい出、あっ!」

「そうだ、左膝ん時はもっと強力に(オモイッキリ)噛んだのにちょこっとへっこんだだけだったぞ、」

「で、でも、さっき臍石にぶっつけた時はすごく出たのに、」

「あんときは、なあ、イヨルカ、おまえまだ寝てたもんな、」

「寝とりゃせん、完全には、そして全力では展開してなかっただけよ(ちゃんと転移処理はしたぞ)、」

「いいから早く始末しろよ、まずいだろーが!」

「いや、もういい、もういいんだ、 ふうぅーーむ、ほれ、

アトゥーラ! 自分で舐めときな、」

言われた通りに※した小娘はひどく吃驚したように器用に右目だけを見開き思わずドナドナをかえりみた。


<※言われた通りに ・・・ このやや異常な柔軟性に注目! ただし、この時の小娘の格好のあられもなさには非難の余地がある、ただし、誰も見てはいないようだったが・・・

例外は、目敏く正面に回り込んでいたジーナと、例のヤクザな木の箱車(興奮し過ぎ)の二人?>


「なにこれ! すごく甘いし、苦いし、鉄くさいし、なにこれ!」

人形師も、やはり汚れるのにもかまわず大地の上に胡座をかき、そばでブンブン尻尾を振っているラグンの首を抱きながらその耳元に何事か囁きかけているようだったが、

「それこそが、ほううむ、」

かなり頭を傾げたので青いデカ帽子がずり落ちかける。ラグンが素早く、大変嬉しそうにその庇を噛み止める。

「普通の、人間の血の味っていうものよ、」

「普通って、前のは普通じゃなかったの?」

「まあ、いろいろあるわけよ、」

「ちゃんとわかるように説明して!」

「ほおぉーーら、メンドクサイやつ!」

「ま、もっともな疑問だわな、ほれ、イヨルカ、このへんはおまえさんの得意分野じゃ、それにハナからの当事者でもある、言ってやってくれ」

「ええーーー、なんでアタシに振るのよ、メンドクサイ!」

「この子の体は、もともとスッゴク変なのよ、」

少し前から微かに不安げに、辺りを周回中だったジーナが(ちょっと前のアヤシイ動きは別として)、しかしいかにも当然という口調でキッパリと混ぜかえす。

「こらこら、話しをヤヤコシクするんじゃない!」

「もともとヤヤコシイんだから仕方ないじゃない!」

「なんでもいいから説明して!」

「ホレホレ」

「ああーーもう、わかったわよ、すりゃいいんでしょ、すりゃあ、」

疑り深そうな視線を外し、イヨルカ、の憑依基体、輝く銀の左手がゆっくりと持ち上がる。そしてそれは流れる雲の動きさながらに目にも止まらぬ変容を経、いつの間にか小さな、いかにも女の子らしい、可愛らしい手鏡となってアトゥーラと相対した。

「なに、アタシ、じぶんの顔なんか見たくない、」

「いいから、左目も見せて、」

小娘は渋々燃える赤髪をやりにくそうにかきあげた。

「そう、いいわ」

「なにがいいのよ、ちっともよくない、こんな顔!」

「きれいよ、アトゥーラ、あたしにとってはあんたは宇宙一の美人なの、」

「キライよ、こんな、不細工な、オデコばっかりで、みにくい、あいそのない、どぉーしよーーもない、

あんたが嘘つきだとは思いたくないけどやっぱトコトン信じらんないわ、」

「でもアトゥーラ、さんざ、世界中の、いろんな愛欲(スキスキ)の形見せてあげたじゃない(なんでそんなことってのは、まあ置いといたげる)、

まだ名乗る前でずうぅぅーーーーーーとあんた、夢の中のアタシをただの物好きな変態驢馬だって思ってたみたいだけど、」

「ねえ、もういい? 右手しんどいんだけど、」

「まだよ、もうちょっとだけね、」

銀の手鏡はちょいちょいと角度を変え、アトゥーラのちっちゃな頭全体を完全に記録するかのようにパタパタし続けた。

「ね、アトゥーラ、なにがきれいか、みにくいか、基準なんてキィーーッチリ人のアタマの数だけあるのよ、ほら、どっかの諺にあるじゃない、イッヌのお尻もバラの花ってね、※」


<※ 惚れてしまえば、という条件節が要るところ>


「それって貶してんのよね、」

「そうじゃないわ、馬鹿ねえ、アタシが宇宙一っていえば、掛け値ナシに宇宙一ってことなの、」

「どっちにしたって褒め言葉じゃなさそう、」

「素直じゃないわねえ、ああ、もういいわよ、ふふ、やっぱりその方が落ち着くわ、」

やっと手を下ろせたアトゥーラは少し落ち着いたように自分の左手との会話を続ける。

赤い前髪がより赤い左目を隠したが、閉じてはいない。相変わらず極ゆっくりと瞬きを続けている。完全に覆われて見えないにもかかわらずその存在の強烈な波動は、わかるものにはわかるのである。

「ねえ、アトゥーラ、」

「なに」

「ちょっと聞きたいんだけど、その目、すんごい真っ赤っ赤じゃない、一体どう見えてるの?」

「べつに、ひとつのときと全然かわんないわよ、」

「そなの、」

「なにも変わったことなんかないわよ、あ、でも、こうやって両目で見てると、なんか頭がスッキリするような、ものの輪郭がクッキリするような、ちょっとイイ感じ、それに、ホラ、ジーナの、飛ぶのが時々すごいユックリに見える、」

「じゃあ、ま、ヤッカイってわけじゃないのね、」

「そゆこと、それにもう痛くないしね、」

「ちょっと安心したわ、それじゃ、もういい? ややこしいから、一から説明するわよ、」

「あっと、ちょと待って、なんかお尻が冷たくなってきちゃった、ねえ、ホルキス、そっちに腰掛けていい?」

「いいもクソも(コレ)はお前のモンだ、好きに座れ、」

「ありがと」

アトゥーラは泥水臭い、薄緑色の染みのついたスカートの後ろ(オシリ)を気にしながらヤクザな木の箱車の上に腰掛けた。

森は相変わらず静まり返っている。ここらはもうアラガシワではなく、遥かに明るい蝙蝠ブナの林になっている。木の葉たちも不自然な静止状態ではなく、爽やかに微風にそよいでいるがその葉擦れの音には極微かな不協和音が混じっている。そういえば、もう幻獣も幽霊どもも全然姿を見せていない。だが、まだ、やや不穏であることには違いがないのである。


洩れ落ちてくる金の光の筋が一行を斑に染めている。新緑のブナの葉ごしの光は大層柔らかい。

手鏡を掲げ優雅に?腰掛けたアトゥーラは、足がプラプラしているのを除けば一幅の絵のように、まるで童話の中のヒロインのようにも見える。その足元には四頭の仔狼がチョコナンと座り見上げているし、ドナドナはドナドナで丁度ポニーを一回り大きくしたくらいのラグンの上に、これまた、なにか妖精画の主人公のようにご立派に跨がり(しかし、足はやはり余裕でひこずっておる)澄ました顔で何か鼻唄らしきを歌っているのである。その母狼(ラグン)はやはりなにやら一心に枯れ枝の切れ端や、いじけた草や、湿った黒い土の匂いを嗅いでいる。

だが、極普通の穏やかな時間が、流れの本性そのままに、ただ流れているという感じとは、なんとも把捉し難いズレがある。どこかで、なにかが、塞き止められているというような、微かな違和感がある。しかし、会話は続く。


「ねえ、そもそもアトゥーラ、あの大嵐の夜、あたしがあたしでなくなった夜、そしてあんたの左手が時の狭間へと消え去った夜、あの男の言う至高点、両極の一致と分離の、」


後書き

死にかけております・・・

また言ってしまいました、

最悪カケル最悪、最悪二乗のアリサマです、

仕事は煮詰まってます(誤用もクソもなく、慣用的に!)、

ええ、あたくしだって働いてるんです!

はや、年末進行の足音が、ヒタヒタと・・・ 

ああ幻聴であってほしいぃぃぃ~~~

てな具合ナンデス

でも、訳すんです、訳して、訳して、訳しまくるんです、

てな具合には、はぁーー ならんだろうなぁーー

宝くじあたらんかなぁーー

ほしたら週勤二日で、贅沢三昧してやるぅぅーー

(完全に仕事を辞めれないのがカナシイ・・・)

そです、姉上に怒られました

根っからの貧乏人がアブク銭持つとロクなことにならん、

大転落は目に見えとる、

と、まあ、こうオッサル。

サヨウデスかぁぁぁ

おねいちゃん、

温泉行きたない?

温泉大好きやん!

アリマ? クマノ? それともリュウジン?

シラハマ?

もっと足のばしてオイセサン?

おお、イセエビ?

クエナベ?

あ、あかん、アタマがコンガラガッテきました

・・・

アブク銭上等!

あたってぇぇーーー!


すみません、

錯乱してしまいました

つまり

こんな情態ナンデス

年内もう更新できないかもしれません

ど、どうか お気を長く、長く

お持ちくださいまして、

来年もよろしくお願いもうしあ、


血ィーーーん

いえ、ちーーーん、

と書くつもりが偶然イッパツ変換されたのがコレでした

まだ、サクランが足りぬようです

ではでは・・・


オイオイ

後書きになっとらんぞ、

今後の展望予想とか、次回予告編とか、

ネタバレ=チョイ出しの釣り(アオリ)文句とかはどーした?

まったく不甲斐ないヤツめ!

そんなことではこのワシの助手(ヤクシャ)はつとまらんぞ


と、シャリー殿がおっさっておりもうす・・・


冗談はサテオキ、

そろそろ、本気出すぅぅぅーーー

で、なく、

いえ、

自壊、いえ、次回、

暴投、いな、冒頭、

じゃなくて、

前書き、か

この、後書き あたりで

今後の見通しを

ツラツラ、と

フカンしてみたい、・・・と

思っとりマス、

ツマリ、

訳者、といたしましても

このまま ノンベンダラリーン っと

およそお話の展開もクソも無く

コォーンナ似たよぉーーな、メリハリの無い、退屈な描写が続くようでは

ええかげん 見放されしまうんではなかろーーか、

と、遅まきながら、危機感を抱いているワケでございます。

実際 このままでは

飽きられてしまいます・・・

自分で言っててちょっとカナシイ・・・

ジッサイ、

訳者としても

かなりシンドイ(ウザイ) のです

「読者は()むとも作者は()まない」

とか豪語してたのはドナタでしたっけ?

いや、この場合は訳者ですけど・・・

いやいやいやいや、

無謀な挑戦、いえ挑発、はイケマセン

自重いたします

スミマセン・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ