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第1巻第2部第1節の続きその13 「手術終り 続きその7 大雀蜂ジーナ その6  門の前 続き  シルバ・シルバの下にて・続き」

人が赤子をあやすように、緑の包帯の塊と左胸だけで挟むように支え持ち、右手は変わらず鼻先のビロードを撫で続ける。

ヒゲを起こし撫で付ける。口の(はた)(めく)り小さな牙に触ってみる。

血と泡に汚れた長い犬歯。この輝く牙があたしの膝を噛んでた、

その痕が今も何故だか暖かい、また涙が湧いてくる、

ああ、だめだ、だめ、だめ、早く埋めたげないと・・・

ここはいろんな(ケダモノ)が通る・・・

アトゥーラは大岩の根元を見回しグリックソーン・ノイバラの大きな株が三つ、

三角形に並んでいることに気付く。小さな墓所の囲いとしてはうってつけだ。

今は静かになった鴉の視線を気にしながら首をもとの場所に戻す。

箱車の蓋を開ける。大小2本の山刀を無視しスコップを取り出す。泥炭の切り出しや整形にも使うヤツだがその(エッジ)は結構鋭い。

岩の下影の中へ、

穴掘りにとりかかろうとしてフト足を止める。

血溜まりのなかのバスポラの姿・・・

なんだろう? なにか変?

グッ!グゲェェ! と鴉が我鳴る。

首を振りながら、イヤな鳥、と呟きつつ、巨大な墓標、シルバ・シルバの

短い影の中へ戻ろうとする。が、足が動かない。何か目に見えない透明な手が後ろ髪をつかみ引き戻すようだ。

アトゥーラは再びバスポラの傍に立ち尽くす。

甘い血の香りがますます強くなっている。

スコップをガランと放り出し崩れ落ちるようにへたりこんだ。


この時太陽の光が、小さいが頑固な雲の素早い擦過のおかげで、瞬きのように煌めく。

常住の光の矢が不意に消失し、すぐよみがえるその過程(一刹那)、

血の池が1枚の鏡のように暗転し反転する(ギラリと輝く)その刹那、

アトゥーラは切断された狼の体ににじりよる

スカートをまくり膝を剥き出しさらににじりよる

白く輝く膝が血の池に浸る

暖かい!

今流れ出たばかりのようだ

震える指を浸ける

その手をかざす

だが一滴も付いていない

もう一度掬ってみる

暖かくそして異様な滑らかさで指の間を零れ落ちて行く

しかし一滴も残らない・・・

こんな、こ、これは血?

何か別のもの?

アトゥーラは胸元を見た。

もう一面の汚れ(血糊)はなく丁度最後の赤い一滴が胴衣の裾から滴り落ちるところ。

それらは超高速度の粘菌のように動き あっという間に血の池に合流してしまう。

「まさか」

右手でゆっくりと掬うように首を持ち上げ胴体に近付ける。

なめらかな切断面は血の色一色に輝き一枚の硝子板のようだ。

それは待っていたかのように、お互いの鏡面をすべるように引き寄せ合い、そして合体した。

その瞬間、辺りの血の海は、まるでそんなものは端から存在していなかったかのように消え失せる。

シロバナスミレが純白の花弁を震わせ軽やかに挨拶する。

アトゥーラの視線はバスポラの口もとに釘付けになっている。

なぜかその曲線が微かに歪んだような気がしたのである。



「ふふふふ、あはははは」

アトゥーラは突然笑いだした。

右手はまた狼のお腹を撫でている。それはただ、すこうし野太い、

ころっころの仔犬が満腹してお昼寝中という風情でしかない。

「わかってたの、ちゃんと、最初からわかってたのよ、これは夢なんだ、

あたしはダヌンの喉から落ちて死んだんだ、

その続きの地獄の夢なんだ、このアタシが、

あんなにチヤホヤされて、大事にされて、

新しい目ん玉や、左手までもらい、

箱車まで直してもらい、

ああ、なにもかもありえない、

ありえないことなんだ、

そう、地獄の魔神の悪戯(ワルフザケ)なんだ、

そんなら、この手は何? 

この緑の包帯は何? 

あの人は、背の高い、青い帽子のあの人は、

アタシをおひめさんて呼んでたあの人は何?」

小娘は今はピンと立っている狼のヒゲを引っ張ってみる。顎の下を擽ってみる。

しかし、なんの反応もない。

「ああ、なんか腹立ってきた、やっぱりコイツ、このまま埋めてやろう、あんな立派な墓標があるんだ、いったん決めたことはちゃんとやり遂げるんだ、」

「こらこら、勝手に殺すんじゃねえ、」

バスポラが薄目を開けていた。口もとがニンマリと曲線を描いている。

アトゥーラはその場で文字通り飛び上がった。一瞬目が泳ぎ、すぐさっきのスコップに気付く。

素早く拾い上げ、左手も添えて振りかぶる。

「これは夢なんだ、も一度切り放したって問題無いっ!」

「も一度首無しなんて御免だね!」

容赦の無い一撃だったがバスポラは難なくかわし軽く跳躍、アトゥーラの剥き出しの膝の間に飛び込む。派手にひっくり返った娘は咄嗟にスカートをたくしこみ下着を隠そうとするが狼の狙いはそこではない、全身を使って(シッポも含む)左足を抱き締め(というか器用に巻き付き)、そして おもむろに膝下に噛み付いた。ついさっき自分が印を付けた場所である。痛みではない、何か得体の知れぬ電撃が全身を貫き爪先から脳天までを文字通り駆け抜ける。

「痛え痛え痛え!!!」

しかし、悲鳴をあげているのはバスポラの方だった。

小娘は、苦痛とも快感ともいえぬ痙攣の波を凌ぎながら狼の体を簡単にひっぺがし右腕一本でその首を締め上げる。後足と、シッポが、苦し紛れに娘の脇腹や腰の辺りを連打する。娘はその衝撃と痛みを、なにか、自身の特権のように、或は、何か特殊なご褒美のように甘受しているようだ。泣きながら何かおめいている。

「なーーーにが・・・  なにがっ!!!  俺達に命の危機なんて有り得ねえ、って、

バカ言ってんじゃないわよ、

バカじゃないの、バカじゃないの、バッカじゃないの!!!」

「アトゥーラ、もうその辺で勘弁してやれ、」

ドナドナの声が響いた。


という訳で、実にコマギレで申し訳ないのですが、

ボチボチ訳し続ける今日この頃・・・

さてさて、リアルは、はや年末進行フェーズに突入しつつあり

お休みさえママならぬ超忙しいこのワタクシ、

年内にもう一回ウプできますか、超ビミョー・・・


あっ、すみません、思わずコピペしてしまいました、

状況は1ミリも変わっておりません、超タイトです、

タイトといえば、去年はけたスカートが、さて、今、

もうはけません、これはヤバイ、

ヤッパ運動不足?

そーいえば、もう長いこと本屋さんをウロウロしてません、

一年前くらいの今ごろは、資料漁りに毎日近所の本屋さんを覗いてたような・・・


さてさて、つっこみどころ満載の本作、ハイ、もう、イロイロと承っておりますです、

ハイ、

前回後書きで、チョイお漏らししてしまいましたが、

姉上様と共同で

一大企画を準備中でございます。

アレです、めくっちゃだめーーー、とか口走りました、アレ、

その為の、マル秘下書きノート最終頁のことでございます。

なんかヤヤコシイ方面と勘違いなさったかた、

が、約一名・・・

アヤシウコソ、モノグルオシケレ・・・・・・

とかなんとか、おっしゃっておられます・・・

・・・

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