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第1巻第2部第1節の続きその10 「手術終り 続きその4 大雀蜂ジーナ その3 木が燃える 義兄弟」

ラグンが箱車とトネリコの間に立ち、頻りに周囲の地面の臭いを嗅いでいる。

その巨大な体からは炎々と燃え上がる炎が、

あたりの草を焦がし、小石や枯れ枝の切れ端を焼き転がし、

無数の小さな渦巻き風を起こし散開させつつ裳裾を引き、

また長々と霧のように棚引き、そよぎ、靡いていた。

その長い炎の尖端、燃える舌が這い上がるように延び、

ついにトネリコの若い樹冠に届き、ほとんど予定調和のように滑らかに燃え移る。

瞬時に、全体が燃え上がった木は、

青紫色の奇怪な炎の中でその全ての枝葉シヨウを変形させ

螺旋状に渦巻き、また逆巻き、旋回しつつ、ひとつの、膨大な宝珠と化す。

アトゥーラは額に手を翳した。かなりの距離があるのに酷く熱い。

「あれは・・・  いったい・・・ 」

小娘は立ち上がり、そしてよろめいた。今ごろ膝が笑っているのである。バスポラの噛みどが少し熱く燃えるようだ。(不思議だが、もちろん、遠隔感応・相似相同作用として、と後の注釈者たちは、ややあやふやに考えたようだ)

「なぜ、あんな、木が、あああ、変形してる、なにか、」

「心配せんでもいい、ほんとに燃しとるわけではない、そう見えるだけだ、」

「でもすごく熱い」

「大丈夫だ、すぐおさまる、」

ドナドナはすぐ後ろに立ち小娘のかたく尖った肩先を包むように抱いている。娘は無意識に左手を上げ、右肩に乘った長い大きな手を探ろうとする。

「ほう、もう痛くないかな、追加は要らんかな?」

「この包帯もうとってもいい?」

「まだ駄目じゃ、」

「でも、なんか、指先?の方がムズムズするの、これ、ほんとに、あたしの手?」

「ふむ、そんなら間違いなく、もう完全に、おまえのもんじゃ、」

「ひとつ聞いていい?」

「なんじゃ、」

「古い包帯はどこ? あれ、もって帰らないと、」

アトゥーラは、乾いた、いささか暗い声で呟きながら、

青い炎の狼が箱車の綱をガッシリと銜え上げ、首を振り、

恐ろしく軽々と引っ張り出すのを見詰めている。

「家へ戻る気になったかな、」

「さあ、でも、あれってあれよね、」

「そう、おまえが落っことしたやつだな、」

「でも、粉々になったのに、」

「まさにな、見事に粉々じゃった、」

「あなたが直したの?」

「ラグンたちに拾ってきてもらったんじゃ、

欠片という欠片を全部な、

で、おまえが寝てる間に組み立て(再構成し)といた、」

「まあ、ひどいコワレ方だったな、木っ端微塵ってヤツ、」

バスポラが足元から見上げているが、なぜかひどく自慢気な顔付きだった。

「苦労したぜ、」

「でも、ありえない、あんな完全に、ほんとに元通り?」

「もちろん、足らんとこもあったがの、アリンコどもや、掃除虫が持っていっちまったもんがあるしの、」

「あ、そうか、あなた、なんでも作るって言ってたもんね、」

しかし、アトゥーラの額にはひどく疑い深げな皺が寄っている。

「足りないとこはどうしたの?」

「それじゃ! こいつらはよく集めてくれたんじゃが、やっぱりすこうし足りんかったからの、その分あの木から貰ったんじゃ、」

「で、今、ラグンが借りた分を返してるわけだ、おまえ、あれ、人間の樵みたく恩知らずに燃やしてるもんだと思ってたろ、」

「だって、熱いんだもん、ほんとに燃えてるって思うわよ、」

「あれはいい木だな、」

ペームダーが小娘の踵をクンクンやっている。

「非常にいい部材になるのだ、」

言いながらちょっと嘗める。

「うぅーむ、やっぱりこれは美味い、フム、癖になるな!」

「おまえ、狡いぞ、」

バスポラがペムを押しのけ踝ごと大口にくわえようとする。

「やはりここか!」

「ちょっと止めてよ!」

アトゥーラはスカートをからげ足を振り回す。

「なんであんたたちあたしのオシッ、ウ、ムゥーム、ムばっかし」

「よーし、決めたぞ、」

バスポラは軽く頭をあげて短く吼え、右手?を使いアトゥーラの左足の甲をペシペシと叩く。

「な、なに、」

「俺たちとお前、義兄弟(姉妹)になろう!」

「なんで?」

「なんでだとおーーー!!!」

いつの間にか三頭とも寄り集まっていた。

「だって、意味わかんない、義兄弟って、そんな、一体なに?」

「意味だとぉーー、お前、そんなとこにひっかかるんじゃねぇーー 」

「理屈臭いヤツだ!」

「ここは、勢いでスゴいーとか、ウケるーとか、ピョンピョンするーとかってとこだろーが!」

「だって、あたしに、そんな値打ネブチなんか、」

「だってもヘチマもあるかっ!」トワイムが吼える。

「ほれ、ラグン! あんただってそう思うだろ!」

一人と三頭が同時に見上げる。

目の前に巨大な、妖怪めく姿があった。ほとんど北方の輓馬なみの大きさとなったラグンである。まだ引き綱を銜えたまま

物凄い目付きで一同を睥睨しているのは、さながら伝説の魔王と一心同体という

妖炎の化け物(但し足は4本)、身の毛もよだつような非現実的な姿なのであった。

しかしアトゥーラはその漆黒の瞳の中に無限の愛情めく優しい煌めきのみを見たようだ。

ふらふらと近付き青白い炎の渦巻く逞しい右脚を掻き抱く。

そしてその毛皮とも白炎ビャクエンともつかぬ一種独特な柔らかみの中へ顔を埋めモゴモゴと呟く。

「あたしは・・・  あたしはこのままあんたたちに食べられてもいいの、

生きてる値打ネブチなんか全然ないんだから・・・ 」

「まあ、それは貸しにしとこうかな、食べるのはいつだって食べれるんだし、おんなじ食べるんならもうちょっと美味(うま)そうになってからってのが定番でもあるしね、」

「あたし、そんなに不味そう?」

「まあねぇ、」

引き綱を銜えたまま口の中で唸る。と、透明な涎が綱を伝い潺潺と滴り落ちた。

アトゥーラは思わずそれを手に受ける。

そして匂いを嗅ぎ一瞬の躊躇いもなく舌を浸した。


(たとえ猛毒だとしても、それはそれで、・・・ と、一瞬で計算する、いや、したのだろう)


「あ、甘い、そんでもってニガイ、ああ、おいしい・・・ 」

「ちょうどいいわ、」

狼はやはり綱を離さずモガモガ言う。

「これで契約の杯にしよう、ドナドナ、なんか器出してよ、」

「これでいいじゃろ」

人形師は例の合切袋から漆塗りの杯を三つ取り出した。全体に漆黒であり、所々に鮮やかな炎の如き緋色の飛びが入っている。

「あんた、三つじゃ足りないわよ、」

「おおお、おっとそうか、」

胡散臭げに舞い降りてきた大雀蜂が狼の鬣の炎を掻い潜るように旋回している。

「もうこいつも立派な証人だしな、あと三つかな、」

「そういうわけね、」

三頭の前にひとつずつ、アトゥーラの右手にひとつ、ドナドナの両手にひとつずつ、黒の酒杯が行き渡る。ラグンはその全てにおのが涎(唾液)を満たした。

「では、乾杯だ、大地と森と、我が太陽、」

ドナドナが右手を掲げる。左手の杯にはジーナがとまる。

「そして全能のラグンに賭けて、ここに宣言する、

トワイム、バスポラ、ペームダー、

この3人を代表とする血族は、

永遠に、

ここの大地の娘、隻眼、隻手だが、このドナドナにより補完された、

いまや完全な人間の娘、

アトゥーラと、義兄弟の契りを結ぶ。

その証人は、わたしドナドナと、ラグン、そしてジーナ・フォゾミナである。

異議のあるものは即刻申しいでよ・・・  

・・・  ・・・  ・・ 

異議無しと認める。

では、乾杯!」

杯はそれぞれの流儀と仕草で完全に干された。

「あなた、ジーナっていうのね、なんか変なことになっちゃったけど、いいの?」

「ま、成り行きだしな、別に問題はない、」

「でも、あなただってお国の女王様に仕える兵隊さんでしょ、」

「べつに、任務は任務、これはこれだ、」

「そうそう、女遊びする暇もあるしな、」

「なんだとぉーー!」

「こらこら、やめんか、それよりも、返杯じゃ、返杯! ほれ、アトゥーラ、杯を集めてここに置いてくれ、」

小娘は店の手伝いもあり、給仕には慣れていたから割合と手早く動いた。ラグンの後ろ、引かれてきた箱車の背は丁度よいテーブル替わりになったから都合はよかったのである。

ラグンはぐるりと旋回し再び杯を満たした。ドナドナがさっきの白徳利を取り出し中空で軽く振ると涼しげな水音がする。華やかな酒の香りが漂い人形師の顔に満足げな笑みが浮かんだ。

「これで二倍になる、いや、三倍かな?」

男は何の頓着もなく酒を注ぎ足したが当然溢れ零れてしまう。箱車の背蓋まわりはびしょびしょになった。

「おまえたち、これくらいなら届くだろ、」

「当然だ!!!」

バスポラだけはほんの少しつま先立ち気味で一瞬じたばたしていたがなんとか届いた。

ジーナも降り立ち、アトゥーラも手に取った。ドナドナが再び音頭をとる。

「こいつは、そう、人間的に、わしとアトゥーラからの返杯という形じゃな、」

「これって、お酒なの、」

「べつに酒が飲めんってわけではないじゃろ、」

「嫌いじゃない、っていうか、たぶん好き・・・ だけど・・・ うん、

でもお酒ってたいてい、飲んだあとロクなことにならないんだもん、

無理矢理飲まされたあとは特にひどいんだもん、」

「そんなヤクザな酒と一緒にするでない、

しかも! ラグンの御神酒(オミキ、つまり、ヨダレ)とのカクテルじゃぞ、

ここ千年、いんや、万年だって誰も見たことも聞いたこともない、

超絶の、カミカミの酒じゃ、」

「よくわかんないけど、でも、まあ、いいの、どっちみち、あたしの体にはいったら腐っちゃうんだし、よいものを全部駄目にする、疫病神みたいな体だって、いっつも叩かれてるから、もう慣れっこだし、」

だが、一杯目の涎酒?の精が効きだしたのか、アトゥーラの額は少し紅くなっていた。

そしてドナドナの掛け声を待たずさっと飲み干してしまう。

「こいつ、将来ウワバミだな、」

「頼もしいな、」

「末恐ろしい奴だ、」

「なんつったってあのオロチを殺したやつの三倍だからな、」

「俺たち、契約の先を間違ったんじゃないか?」

「ま、証人が三人いることだしな、なにかあったらそこのじいさんに責任取ってもらうさ、」

「いいから御託を並べてないで早く飲め!」

「ちっ! どーもこのテーブルってやつはいけすかん!」

「人間ってばメンドクサイな!」

しかしとにかく返杯の儀も終了し仔狼どもも慣れた(大地に沿い従う)姿勢に戻ることができた。(しかし彼等三頭の飲み跡、というか、ベロさばきの名残りの凄まじいことときたら、これ厳粛な儀式の締めがこんなんでいいの?というレベル・・・ )

さて、しかし、かわりにというか、体の大きさを考えれば当然というか、

ジーナが・・・、つまり、出来上がっていた。


お彼岸です。リコリスです!!

っていうのは置いといてーーー (ああ、最終回! がきてしまふ・・・・ )

どーどーどー

さてさて

またもや、表題詐欺?

違います、かろうじて最後1行で「大活躍?」を示唆・・・という

なんという奥床しさ・・・

自分で言っててちょと虚しい・・・ そして姉の視線が痛い・・・

でも、頑張るのです、このあたり、アトゥーラの将来を占う大切な

伏線が一杯つまっとるらしいのです(シャリー氏談)

で、だいぶお昼もまわりましたが、ウェスタさんあたり、血管が切れてないか、

かなり心配です!

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