第1巻第2部第1節の続きその9 「手術終り 続きその3 大雀蜂ジーナ その2」
*
「あ、あれはなに?」
「見たとおりのもんじゃ、」
「で、でも、燃えてる・・・ 」
「そうじゃの、」
「青く光ってる!」
アトゥーラの硬直は解けない。
「雷の神様?」
「いや、只の狼じゃな、」
「でも、牛みたいに大っきい」
「いや、それほどでもないじゃろ、」
「じゃ、ロバくらい?」
「今のところそんなもんかの、」
「こっちを見てる、」
「好奇心旺盛な奴じゃからな、」
「なんであたしを睨んでるの?」
「さあぁてな、なんでじゃろな、」
「やっぱりあたしを食べたいのかな、」
「そんなやせっぽち食ってもうまくないじゃろ、」
「そ、そりゃあ、そ、そんだけんど、なんもそんな言い方しなくたって・・・ 」
蒼い狼は、左の前足を力強く一歩だけ踏み出した。次に右足を軽く持ち上げる。持ち上げたまま軽ろらかにユラリユラリと前後に揺するのだがそれは逡巡や疑惑の動きではなく、ただ只管に優雅な、そして己が力能への完全な自信に満ち満ちた優美極まる動きだった。
蒼白い幻妖な炎は今は少しおさまり暖炉の燠火の如きやや控えめな煌めきでその巨大な体躯の表面を静かに、跳ね、踊り、駆け巡っているようだ。
アトゥーラは喘いでいた。この小娘にも奇っ怪な性癖があり、それは己れの命が絶体絶命の危機に瀕してさえ目前の美に陶酔してしまうという、生存本能の真逆を行く倒錯的な嗜好=癖ではあったのだが、それらの破滅的な経験をさえ遥かに乗り越えて、今ここでは圧倒的な恐怖が、如何なる審美的かつ合理的な審級をも無効にしつつ、全神経系への支配権を掌握し席巻し蹂躙し尽くしているのだった。
狼の顔は、美しかった。聖相たる逆三角形と円と楕円の精緻な組み合わせであり、目の間隔は狭く、輝く黄金の中の黒点、底無しの瞳は無限の闘志、追跡と殺戮への完全な嗜好、仄かな家族愛、仮初めの契りをさえ永遠の伴侶とし絶対の愛を誓う不屈の意志を渾然と融合させ、もはや何者とて抗うことも、目をそらすことさえできない、一本の、強固な、鋼の視線と化している。
しかしアトゥーラはその黄金と黒の輝き、ドナドナの底無しの青の深淵とは全然その性質を異にする、大地を支配する獣の真髄ともいうべき黒の輝きに、心底魅入られてもいたのである。体の硬直は解けず、足元には暖かな尿の溜まりさえできていたのだが、それはまあ(この状況では)、致し方のないことである。全身が細かく震えている。そして、何故か、無意識の裡に、新しい左手が、緑の包帯のヤクザな紡錘形が、新しい絆を誘う標識のように持ち上がり、獣の王と片輪の少女の間に、文字通り、スピンドルとして浮上する。そしてそれが合図となった。
*
三つの灰色の塊(毛玉である)が矢のように駆けてくる。それらは途中複雑に跳び跳ねながらしかし一直線にアトゥーラの方へ駆けてくる。次の瞬間、ほぼ一塊の毛玉となったそれは、小娘の凍りつき棒立ちとなったからだに文字通り激突する。
と、見えたのは錯覚でそいつらは寸前でまた三つに分裂し、アトゥーラの右腕、薄い胸元と、左の膝に飛びかかり、噛みつき、舐め回し、四つの足(合計すると十二本)で蹴りまくり、縦横無尽に転位しつつ暴れまくるのだった。
アトゥーラはもちろん瞬時にふっとばされ仰のけに転がったのだが丁度分厚い苔の褥の上であり殆んど衝撃もなく、その上その表情にまったき驚愕と、恐怖の残滓があるのは当然として、他にもまるで場違いな愉悦の閃きが、また、何か得体の知れぬ爆発寸前の感情の、明るい前触れの影らしきものが仄見えていたことも確かである。しかしそれもすぐに消えた。なんのことはない、小娘は笑い転げていたのである。
「があ、ぐ、や、やめて、そんなとこ噛まないで、ダメ、舐めちゃ、ちゃダメ、ああ、もう、あかん、もう、そこは、あかん、やめレィ、
やめいっつっとろーが、こらあー、が、があ!」
小娘の涙で一杯の視界の端に丈高い人形遣いの、のっぽりと見下ろす顔がぼやけて見える。表情は陰になって定かでなく、しかし、なんとなくわかるのはやや皮肉っぽく笑っている風、この情況を心底楽しんでいるらしいことは確かなのである。その横にチラリと時々小さな影がよぎるのは、ジーナらしい。
のけぞり、そりかえり、なかば回転しつつ暴れ、狂いながら首を振る。
ドナドナの青と金の帽子の遥かな向こう、薄ぼやけた青空の彼方にダヌンの、今は薄赤い喉仏も見える。すると、突然、仔狼どもの攻撃が止む。激しい抵抗の緊張が断ち切られ娘は一瞬目を閉じる。
静かな、生暖かい、圧倒的なケダモノの臭い、柔らかく強い息がかかる。
これは・・・ この臭いは・・・ どこかで、あたしを、ああ・・・
と、その時、軟らかな、湿っぽい、巨大な舌がアトゥーラの顔面をすっぽりと包み込み、舐め回し始めた。それは落ち着いた、微塵もせっかちな風ではない、しかし有無を言わせぬ力強さに満ちた決然たる動き(舐め舐め)だった。ほとんど疲労困憊していた小娘はそれでも起き直ろうとする。仔狼どもはいつの間にかまた集まり、一頭はアトゥーラの腰の下へと(梃子の支点よろしく)潜り込む。バスポラは再び左膝の噛みど=自分の刻印痕に喰いついている。
そしてアトゥーラは見た。そう、まさに、巨大な狼がのしかかっているのである。蒼白い幻妖の炎がその全身を染めている。
「おかあさん!?」
娘は、その逞しい首筋にかじりついていた。
まったく別の、新しい涙が溢れているようだ。
*
泣きじゃくる小娘を舐め回し、鼻先で小突き回しながら、ラグンは困惑?とも愉悦のさざ波ともつかぬ曖昧な表情を浮かべていた。人形師は、わざとらしい他人事のような顔つきで、しかし腹を抱えたくなるのを無理矢理我慢している風な妙な(イヤミな)面持ちである。ジーナはトネリコの若木の方へ検分にでかけたようだ。小娘の泣き声はまだ続いている。ラグンは自分の首根っこや耳の後ろ、顎下や胸元の深い毛並みをまさぐるようにまた、甘えるように撫で回すアトゥーラの両腕が、なぜか心地よいことに自分で吃驚している。しかし両脇からの微、妙ぅ~な視線、バスポラとトワイム、そしてペームダーが、やや恨みがましい、羨ましげでもあり、妬ましげでもある目配せを交わし合い自分と小娘を等分に見比べていることに気付いたので、ひとつ、盛大な胴震いをやらかしてから娘を突き放す。
「いつまで泣いてんだい、」
狼の声は、その喉の奥で発生し、ごく普通の人語としてだが、しかしいささか奥深い洞穴の中の雷声のように轟いた。小娘はイヤイヤと首を振る。
「アタシはアンタの母さんじゃないよ、」
「そんなこと! わかってる!」
「じゃあ、もう泣き止みな、」
「こいつは確信犯なんだな、」
「もふもふできればなんでもいいんじゃないかな、」
「でも、こいつのオシッコは凄くおいしいな、」
「ほんのカケラでもいいから、こいつの肉が喰えたらなあ、」
「こそばせるのになんでかじれないんだろ、」
「おもいっきり噛んでも、じっくり噛んでも、食い込む寸前で急に硬くなるな、」
「こっちの歯が痛くなるもんな、」
「さあさあさあ、おまえたち、もうあっちへ行きな!」
「あなたの炎、熱くないのはなぜ?」
「これは炎なんかじゃないわ」
「炎じゃないならなぜ踊るの?」
「それが本性だからね」
「踊りってなに?」
「それをあんたが聞くのかい?」
「どーゆーこと?」
小娘は既に立ち上がり、もう泣き止んではいたのだがギクリと体を震わせる。しかし泣き顔を見られたくないのかラグンの胸毛に半身を埋もれさせたままである。
「あたしは知ってるよ、いつも見てるのさ、」
「何を?」
「あんたの踊り(ダンス)をさ、」
「なんのことかわからないわ、」
「この下の森を抜ける時、いつもじゃない、」
「あ、あれはっ!」
「何?」
「あれは、違うの、」
「何が違うのさ、」
「あ、あたしは、ダンスなんて知らないもの!」
「ダンス、ダンス、ダンス・・・ ダンスは屁理屈じゃないのよ、」
アトゥーラはやっと顔を出した。気難しげに眉を寄せ口許はへの字である。
「ダンスは理屈よ、数学?とか幾何学?とか、なんかそんなこと」
「それ、誰の受け売り?」
「姉様が言ってる、姉様はダンスの名手だもの、熊とだって踊れるわって、」
「はんっ! すごい計算力だわ!」
「それに綺麗だもん、凄く綺麗だもん!」
「それは・・・ そうかもしれないわね、」
「で、でも、それでも、ちょっとだけ教えてくれたことがある、」
「ふふん、」
「でもダメだった、」
「なんで?」
「才能が無いの、一日と半分、で、姉様は怒り出したの、で、ひっぱたかれて、蹴っとばされちゃった、」
「短気ね、」
「みんな見てたの、ギドンもグエンドーも、グリモーだって、みんな嗤ってた、最後にグリモーがあたしにキュウアルシンの見本をかけたの、」
「なにそれ?」
「わかんない、そう聞こえたんだけど、キリキア語か、コキャウル語か、でもすぐ気絶しちゃって、みんな大笑いしてたのはなんとなくおぼえてるんだけど、」
「まあ、想像はつくわね、」
巨大な狼は頭を振り、憎々しげに左右の輝く牙を剥き出しにする。アトゥーラは両手を使い狼の鼻面をやさしくなぜる。左手の緑の包帯がそのビロードのような毛皮に触れると何故か新しい火花が散った。
「ねえ、アトゥーラ、」
「なに? えと、えと、かあさ、じゃなくて」
「あたしは、ラグンよ、」
「ラグン、ラグン・・・ なに」
「ただのラグンよ、」
「凄く強そう、」
「ふふ、まあね、無敵といってもいいのよね、そうでしょ、ドナドナ、」
人形師はどこから引っ張り出したのか小さな白磁の徳利を逆さに振り、至極残念そうな面持ちだったのだが、特に慌てた風もなく穏やかに振り返った。そしてほとんど年齢不詳の謎めいた微笑を浮かべた。
「森と大地と、ともにあるかぎり、じゃな、」
「条件なんてないわ、あ、り、え、な、い、そしてこいつら、紹介しとくわ、」
いつの間にか3頭の仔狼が整列していた。皆腰を落とし、太く短い前足を三角形に突っ張り、しかしきれいに一直線に揃い並んでいる。今にもでんぐり返らんばかりの威張りようなのではあるが。
「ペームダー、トワイム、そしてバスポラよ、ほら、挨拶しな、」
しかし3頭とも野太い唸り声をあげただけだった。目付きが座っているのがなんとなく剣呑であり、しかもその上抗しがたい愛嬌があるのである。
突然バスポラが口を開いた。
「模擬戦やろう、アトゥーラ、俺たちの攻撃をみんな避けれたら認めてやる、」
「普段、森の幽霊どもを避け散らかしてるようにな!」
「それっ! かかれっ!」
3頭は大気圏内で分裂する流星のように飛び散った。
ラグンは軽く跳びすさる(とはいえ一瞬で8~11メルデン!という恐ろしいほどの距離をとる)
3頭の速度はさっき硬直状態のアトゥーラに飛び掛かった時とは雲泥の差である。小娘のまわりの草地に荒い引っ掻き傷が、目にも止まらぬ早さで描かれる。錆泥岩のカケラが派手に舞い上がる。低い唸り声が二重三重に、ほとんど一つの振動波となってあたりの空気を揺るがせる。娘は最初面食らっている風に棒立ちだったが、やおら首を傾げると右手をさっと伸ばした。それは空振りだったがそのまま肘を立て逆回転にややこしく、さもイヤイヤ気に、しかし複雑微妙に回転し(ひねり)ながら腰を落とす。
それからの約1分間(正確には約88秒間)、息切れのした娘がへたりこむまで、珍妙極まる光景が現出したことはやはり特記しておくべきだろう。
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それは踊りというにはあまりに風変わりで、世にある舞踊評論家、舞踏教師、ダンス振り付け師どもならば、揃いも揃って笑い飛ばし、唾を吐き、顔をしかめるのが落ちだという奇天烈極まる動き様だった。まずそれは音楽に則り自身を律するという骨格がなかった。軟体動物の不定形の動きにも似、軽くアンネリダ・タンツェーリンにさえ擬することもできようが、強固な媒体に保持された上での仮初めの自由という風でもなかった。その体が描き出す線は基本的には全て螺旋であり、右手の指先は龍の五本爪を象ったかと思うと次の瞬間には大鵬の嘴となり、うねりくねりながら空間のあちこちを啄み、かきむしり、引っ掻くのだった。
体全体はごく緩やかな動きで時に平面となり雪の結晶の如き幾何学的構造を模したかと思うと折り畳まれ巻き込まれ、風に揺れる柳の如く全ての激流を受け流したかと思うと縮こまり
世界を孕んだ卵のように歪な丸みを帯びて転がり行き、ぐいと間延びしたかと思うと破裂した。周囲のあらゆる動きに乗じて反応し鏡となり、対抗し、先行した。
相手の動きを写し、さらに変形し、誇張しながら歪曲させた。完全な受動でありながら、未踏の第四次元空間を走破する自由と先見性を兼ね備えていた。
アトゥーラの右目の緑は、普段よりやや深みを帯び、微かに渦巻いているようにも見えたが、特に異様な輝きを放っているという風ではない。ただし、その目が見ていたものは例の跳ね踊り、ちっちゃな鋭い牙を閃かす毛玉のような仔狼どもではなく、流れる寄る無限の線分、銀色に輝く蛇体の如き、そのノタクリ様そのものだった。
目に写る動きはごくゆっくりで、いかにも不自然にノロノロしており、それら3本の線分を2本の腕でさばき、受け流し、時にはお互い絡み付けるように誘導し、結び合わせさえすることはさほど難しいことではない。アトゥーラの小さい体も時に跳ね上がり、しゃがみこみ、翻る。その実質の運動量と反応速度の齟齬は幾何級数的に増大し筋肉組織と関節に破壊的な影響を及ぼすはずであるが、開始後約80秒付近まで小娘に息のあがった気配もない。〔この現象、現出形態には疑義がある・・・※〕
<※この現象の実態、いや、正体というべきか、には、後の注釈者たちも頭を悩ませている。ここでの記録者の記述は混乱しているが論理的な矛盾にさえ気付いてはいない。無論、平行的物理攪乱現象としては、アトゥーラの体こそが通常の視覚には捉えられない、原子加速状態に没入しているのだとみなすべき根拠はある。だが事実は違いジーナにさえ、アトゥーラの肉体は、ごくゆっくりと、むしろスローモーションのように、ゆるゆると、ごく生ぬるく動いている風にしか見えなかったのである。あとの二人の有力な観察者は何の疑念も抱かぬ風に平静に議論していたから、別の存在次元の重ね合わせ等、異様なヘリクツ的空間認識能力やらご都合主義的主人公補正(?これの実態も不明だが、しばしば言及されるので一応挙げておく、私が思うに、要するにこれは原作者自身にも全く理解できない事態なのではなかろうか? 但し、今後の展開、アトゥーラの、主に、極端な受難の局面において、徐々に解明されてゆく可能性はあり、それは大いに期待したいところではある)やら、いろいろ念頭に置いておく必要はありそうである>
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人形師と狼はほぼ寄り添って立ち、この有り様を眺めていた。公平に見て、アトゥーラの踊りっぷりは、これをごく平均的な人間的評言に託すならば、甚だ不細工であり、滑稽の極み、精々よく言っても泥酔した千鳥足の浮浪者から全ての関節と骨を抜き取り、全体に狂いっぱなしな、不規則にふらつく独楽の回転を与えたようとも言えそうだった。町の悪餓鬼どもなら端的に、ただのタコ踊り、と決めつけたかもしれない。だが、真実を見通す目を持った二人には全く違った風にこれが見えていたようである。
男は、古い付き合いである雌狼の背中を左手で軽く撃つ。
ーーあれをどう見る? ラグンーー
ーーこの宇宙開闢以来初めてよねーー
ーーそういうことだなーー
ーーついに現れたのねーー
ーーそういうことになるーー
ーーはは、あたしの、ちがう、あたし自身が、いいようにあしらわれてる、なんか新鮮、はん、泣けてくるわーー
ーー初めてであれだけ動けるとはな、もちろん、あの右目自身の力能だが、イヨルカの奴も大分いれこんでるな、もっとももう限界かなーー
ーーほぼ光速に近い動きを分解できてるのよ、ああ、でもただのタコ踊りよねえ、独りで踊ってる(曲がりくねってる)ふうにしか見えないし、ふふ、あの子、森の幻獣や霊体なんかにびびりまくってたけど、自分の力能が宇宙をひっくり返すかもって知ったら・・・ーー
ーーそうはならんように見守ってやるしかないーー
ーーふふふ、無敵よね、完璧な無敵だわ、しかもイヨルカまでついてる。これはちょっとヤバすぎない? なんか制限をかけとくべきじゃない?ーー
ーーいや、なるべく介入はしたくないな、それに制限なら(直接的なヤツではないぞ)、もう既にいろいろびっしりとかかってるからな、かわいそうなぐらいになーー
ーーそうよねえ、それにあの体、もうちょっと丈夫に、っていうか綺麗にしてあげられなかったの? 仮にも女の子なのよーー
ーーあれにはあれでいろいろ意味がある、まあ、運命にまかせようーー
ーーあんたがそれ言うと冗談を通り越して腹立つんだけどーー
ーーまあ、そう言うな、おっと、もう終わりそうだーー
背中を撃った手は反動で軽く跳ね上がる。上のやり取りは、そのぴったり瞬きひとつの間で交わされたのだが、もちろん、音声化されてたわけではない。丁度戻ってきたジーナ・フォゾミナにも、この思考の欠片さえ漏れてはいない。
蜂は狼の頭の上で静止し、今はゆっくりと持ち上げた左手で顎髭をしごくフリの、丈の高い男をよこざまに見上げる。
「ところで一体あいつはなにやっとるんだ?」
「ダンスだ(ダンスよ)」
大雀蜂は巨大な顎をあんぐりと開いた。
「あれがか?! ミツバチだってもうすこしましに、色っぽく踊るぞ、」
「たしかに・・・ 色気は無いな、」
「ええかげん、気色悪い奴だ!」
「フゥイーーー」
アトゥーラの伸ばした右腕にバスポラが両腕をかけ、可愛く引っ掛かっている。
「おしまい、もう、おしまいでいい? あんたたち素早すぎ、これ以上無理っ!
い、息が、もう、フイィフ、フハン! フゥーーー 」
あとの2頭はスカートの裾に食いついていたが、放したくはなさそうだった。
バスポラの尻尾が激しく回転する。
「おろせ!」
そして大地に踏ん張り立つとモフモフの右手を、おもむろに、やや尊大に持ち上げた。
(要するに逆お手=要求である)
「よろしい、認めよう、俺たちの攻撃を3分間よくぞ凌いだ、」
アトゥーラも崩れるようにしゃがみこみその手をとった。
「ありがと。凄い攻撃だったわ、(でも3分も経ってないけど)」
「お前の感覚はよくわからんな、」
「タビリスやポアンらが悔しがるだろうな!」
「それだれ?」
「さっきの手術のとき、手伝いに来てたんだ、」
「手術?」
「おまえ、足癖悪いよな、」
「でもいい臭いだな、」
「おまえのオシッコはいい!」
アトゥーラは真っ赤になった。そしてスカートや膝や足首を擦ってみたが少しも濡れていたような形跡はない。
「あたし、靴は?」※
<※靴と呼んでいるが正確にはトゥーレマンザール・サンダルの類いである>
小娘は足指を鷲爪のように曲げ、やわらかい大地をつかんでみる。目に沁みる青さの草が一本ずつ足指の股の間からそれぞれに覗き出ている。緑の、新鮮な香り。
「そんなもん、要らんだろ、」
「そりゃあ、まあ、そんだけんど、まだ、あっ!」
小娘は振り返りトネリコの若木を見た。
木は、宇宙樹のヒコバエよろしく盛大に燃え上がっていた。
なんとか間に合いました。セーフです、まだ! 8月です!
(31日ですが・・・)
相変わらず話が進んでおりません、それに、今節、題名のわりに
ジーナが活躍?していません。でも大丈夫、次回、大活躍です、
(予定は未定・・・)
エグイ話に? いやいや、そんなこと・・・
あと、時々聞かれますが、ジーナは女の子です。
「俺っ」っとか言ってますが・・・ まあ、すごい子なんです・・・
と言っておこう・・・




