第1巻第2部第1節の続きその8 「手術終り 続きその2 大雀蜂ジーナ その1」
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「しかし、まだ信じられんな、本当にこいつはただの人間なのか?」
歴戦の大雀蜂ジーナ・フォゾミナはゆっくりと旋回している。その羽音にはもう威嚇の響きは無く平静に、ただ冷静に、この赤く燃える頭を、その内的な直径を、まずは測り切ろうとでもいうかのように、いささか不安定なブレを含んだ楕円のコースを維持しながら、それでも幾分不本意なボヤキを止めることができないらしい。
「そもそもだ、我が攻撃力の真髄、不滅の毒液(薬液・厄液・焼尽液云々・・・と無限にブツブツ)〔妙な威張り方である〕の直撃を浴び、マバタキひとつ、欠伸ひとつで済ましちまうなんぞ、有り得ようはずもな」
「あたし欠伸なんかしてない!」
「しかもだ! 直接! 眼球をだな」
「耳元でブンブン五月蝿い!」
「悶絶して然るべき」
「もうあっち行ってよ、聞きたいことは聞いたんでしょ!」
「き、究極の痛みが、あるべ」
「それでこれからどうするつもりなのかな、あの子はもう城に戻ったろうし、満月はまだだいぶ先じゃしな、」
蜂はガクリと下降したが、すぐに高度をとり直す。再びアトゥーラの目の高さに浮上しつつ、いささかワザトラシク大顎を鳴らす。
「お前たちに何の関係がある?!」
「大いにあるぞ、」
ドナドナはすっくりと立ち、またもや胸前でゆったりと手を打った。乾いた、丸みを帯びた音が透明なガラスの鉢のようにこの森の空き地を満たし震わせる。蜂は、文字通りに、
頭がひっくり返りそうになるほどに、やおらグリンと
首を回転させたかと思うと、些か皮肉っぽい角度にきつくねじ曲げたまま固定する。
「第一、お前さんの考えは、ほぼ手に取るように判るしな、」
「ほう、言ってみろ、」
「グレオファーンを殺る気じゃろ、」
「ねえ、蜂さん、前から聞きたかったんだけど、自分で自分の頭をもぎ取りたそうに引っ張るのってなんか特別な意味があるの?」
「なんのことかさっぱりだな、」
「そんなに頭をもぎたくなるのって、あれ、あっ、トンボさんも、そいからハエさんもよくやってるけど、そばで見てるぶんにはとってもこわいんだけど、」
「あれには色々意味がある、まあ、第一には索敵警戒、そして、測距だな、
もちろん、単に気持ちいい、ってこともある、」
「あれって、気持ちいいの?」
もう普段の角度に戻っているのである。
「いくら恋敵といっても、問答無用で殺るってのは、そりゃあ、気持ちいいかもしれんがの、」
「ねえ、蜂さん、そんなに気持ちいいの?」
「問答無用ってわけではない、」
「話し合いの余地はあると?」
「わかりきったことだ、」
「やっぱり気持ちいいんだ!」
「こいつは一体何を言っとるんだ、気持ちいいもんは気持ちいいんに決まっとる、」
「これこれ、話をはぐらかすんじゃない、問題は気持ちいいんかどうかではないじゃろが、」
「お前たちの指図なんぞ受けん、」
「では、こうしよう、わしとて、無責任な噂話だけで刃傷沙汰を誘導したなどと言われたくないからの、ほうれ、これからわしらはちょうどこの下の森を抜けるんじゃ、」
「ちょっと待って、」
「悪魔の臍へ抜けるのか、」
「そうじゃ、その先の泥炭沼まで行かんならんのじゃ、」
「ち、ちょとまっ」
「メノンの谷もちょうど横切ることになる、」
「うぅむ、」
「で、ついでといってはなんだが、そこでグレオファーンと話をつけてしまうというのはどうじゃ、今なら確実におるはずじゃからな、」
「お前らの立ち会い付きでか?」
「特に問題はなかろ、それに結果がどうあれ、わしらは口は堅いほうじゃしの、」
「まあ、あんたなら、万一俺が暴走しかけても・・・ 」
「万一もくそも、お前さん、こんな女の子の前で痴話喧嘩の果ての果てを見せつけるってのはどう考えてもアカンじゃろ、」
「今の俺はそんな情けなく見えてるのか、」
「あの、あの、痴話喧嘩ってあたしよくわからないけど、でもなんとなく想像はつくんだけど、男?・・・とか、女?・・・とかの関係だの、縺れ~だの、ヨリヨレ~?だの、
ナイフ?とか、紐?とか、ギドンの3人目の奥さんとか、いろいろ聞くんだけど、えええ、って、そんなことより、なぜ泥炭のこと、なぜ、言いつけのこと、あなた、あなたは、なぜ、」
「アトゥーラ、おまえがあそこから飛び降りる前から、ずっと(ここ意味深)見てたんじゃ、」
ドナドナはダヌンの頂きを、遥かな高みを、まさに虚空をくしけずる鋭利な刃物めく、地獄の喉仏を顧みた。
正午の頂点から、ホンの少しずり落ちた黄金の太陽が、どこか締まりの無い、幅の乱れた光の矢を打ち出しているが、ダヌンの喉がその全てをカマトトめく純情さで飲み干しているようにも見える。風は相変わらず中途半端な高さで、なぜか手持ち無沙汰を装い、しかしやはり強力に渦巻いている。
「おまえが自暴自棄になって走り出す前、こいつを落っことしたのも知っとるからの、」
男は空き地の縁に蟠る小さなトネリコの若木を指差した。その陰に半分覗き出るように見えているのは例の哀れな箱車である。木っ端微塵になる前と寸分たがわず、蛇のノタクリ癖のついたヤクザな引き縄付きで我が物顔に鎮座しているのである。アトゥーラは苔の褥から立ち上がり、なぜか疑り深そうな面持ちで手を伸ばしよろめき出した。が、ぎょっとして凍りつく。箱車の後ろ、ブナの木立の、影と影との間から蒼白い巨大な狼が姿を現したからである。
またもや、変な横道、いえ、寄り道に嵌まり込みつつあるような・・・
すみません、まだ残り予定の四分の一にもきておりません。ナヌ? なんかビミョーに
増えとりゃせんかのお疑い、ごもっともでございます。すべてはこの暑さのせい、
セミがうるさすぎるせいなのでございます。とにかく、目指せ!月一更新、のカケコトバを
空言にせぬ為に、あえて中途半端のままとりあえずのアプでございます。そです、
今日はまだ、21日なのです。なんとか、ハァー、カッコだけでも・・・ いえ、頑張ります!
熱中症で倒れぬ限り、
イナ!
ウチテシヤマン、であります。○して○カバネ、拾うものなし!!
いえ、すみません、カッコつけすぎました、どうかアネウエ、あとはヨロ・・・
え!? アプレモア~~~! ってアータ・・・




