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第1巻第1部第17節続きの続き 「楽しい拷問その3 (続き・その2)」

どことなく締まりの無い、寝起きのあとのような、猥雑な雰囲気を漂わせているのが不思議である。首の防塵スカーフに僅かに涎?の染み跡が見える。

「もいちど言うぞ、そこをどけ!」

「カラン! 止めなさい!」

薔薇の長姉の声は落ち着き払っていたが

・・・いささか上滑りな妙な威厳に満ちている。

すっくりと端然たる面持ちでベッドの端に腰かけているが、手持ちぶさたを装う

お遊び中の右手の位置が、失神中のメイドの、剥き出しのお腹の上というのがそも台無しである。そのまま下穿き(パンティ)の湿った内側へと潜り込みたそうな、やや不穏な動きをも見せている、タランティーランにも見紛う淫靡な指たちの蠢動はもっと不謹慎極まるのである。

「姉さん方、」

僅かに膝を落としていた、これもまた不穏な体勢を解き、薔薇の三女は尊大に腕を組んだ。

抜刀の意志無きことのあからさまな見せかけではあるが、あまり意味の無いことは二人にもよくわかっているのである。

「あたしのトリスタンを玩具にするのは止めていただきたい、」

「何よ、改まっちゃって、」

「あたしのってのは聞き捨てならないわね、」

「あたしのだからあたしのだ、」

「そんなことより、あなた、ちょっと聞きたいことがあるのよ、」

黒衣の侍女は半歩だけ前に出た。カランソットがぞくりと肩先を震わせる。しかし後退はせず僅かに震えを帯びた唇をきつく噛み締めながら精一杯の虚勢を張る。テュスラはさらに詰め寄りその右手が相手の白銀の柄頭に触れる。

「あはん、リョーグロッド! 久しぶりね、」

「実に、な、刃毀れなんて!な!」

「ちょっと(なま)ってるんじゃない? カランのことだからほったらかしでしょ、ちゃんと手入れしてもらってる?」

「いやいや、そういう問題じゃない、とにかく、さっきのは久しぶりにきつかった!」

「こ、こら、テュスラ、他人ヒトの剣と勝手にしゃべってんじゃねぇ!」

「旧友の再会に水を指すなんて!まあ!野暮の極みよねえ、」

「いきなり撃ち合うってのも悪くはねぇんだけどな、」

「で、旅支度のまんまだけど、またどっか出掛けるの?」

「いや、別に予定はないぞ、っていうか、まだ今夜のねぐらも決まっとらん、」

「丁度いいわ、これから温泉宿へ繰り出すのよ、一緒にいらっしゃいな、」

テュスラが手を拍った。

「ほほう、悪くないな、」と、剣。

「風呂か、もう長いこと、っていうか、なんだ、聞きたいことって、言いかけて止めるんじゃねえ、」

「いいのよ、いいのよ、ここじゃなんだから、あとでゆっくりね、急ぐことじゃないの、それに、ほんとのところはね、怪我人の養生も兼ねてるんだからとにかく早く行きたいのよ、」

「怪我人だと!? まさか、トリスタン!」

「あんたのおねぇちゃんがね、やらかしちゃったのよねえ、」

「ほほほ、嘘ばっかし、信じちゃだめよ、カラン、この人の手加減知らずはあんたが一番よく知ってるでしょ、」

黒衣の侍女と女傭兵は、ほとんど乳房同士がくっつくほど重なりあって立ち、互いの腰に手を回せるほどの近さだったがカランソットの方がやや苦しげに仰向(あおの)き加減で窮屈そうなのは一目瞭然である。

薔薇の長姉ダインバーントは艶然と微笑みながら、しかしけしからんことに今はトリスタンの幼い**(新鮮な蕾)を指先で転がしつつ意外そうに声を掛ける。

「ねえ、あなた仕事に戻るんじゃなかったの?」

「気が変わったわ、」

「悪いがあたしはいつもの宿の方が気楽でいいんだ、」

「もう遅いんじゃないの?」

「それくらいの融通は利くさ、それよりオイ、トリスタンはどうしたんだ?」

「どうもしやしないわ、ちょっとオイタが過ぎただけよ、」

カランソットは侍女の肩越しに猫娘を見定めようとするのだが、テュスラがまた絶妙に肩をそびやかしたり腰をひねったりするためさっぱり埒が明かないという有り様なのである。

「ねえ、カラン、」

黒衣の侍女は右手でリョーグロッドの白銀の柄頭を握りしめたまま、ついに左手を相手の腰の後ろに回した。そのまま埃臭いコートごと抱き寄せる。

「アンタさっき本気で突いてたわよね、」

「あたしはいつだって本気だ、」

「ヨナルクを本気で殺せる気でいるのはアンタぐらいのもんかしらねえ、」

「それがどうした?」

「いえ、ちょっとね、なんだか可愛いなって思っちゃったのね、」

「くそ、放せ、」

「あんたたち、薔薇の精? っていうか、なんでわざわざ人形(ヒトガタ)になって、こんな矛盾の塊みたいな、限界だらけの活動体を維持したがるのか、ほんとワケわかんないんだけど」

「ち、ちょと、ちが、ぐ、ぐ、ぐるしィ・・・」

「でもあんたがこの体で東方の砂漠を越える旅ができるのもかなり驚きだし」

「ヤメロ、や、やめてくれ、テュスラ、ぐ、」

「そんでもって、このトリスタンや、カイアスにまで色目を使ってるのも、なんだかなぁーーだし・・・ 」

「ぐふぅ」

「このまま絞め殺しちゃってもねぇ、本体の株を滅ぼさない限り、まーーた、おーーーんなじことだしねぇ、」

「苦痛もまた、快楽であるって、ほら、いい勉強でしょ、」

姉娘が楽しそうにまぜかえす。

「だ、だれが!」

「でね、今夜はちょうどいい夜だし、あんたのおねーさんがとってもいい温泉(ヒトー)を見付けたって言ってるし、せっかくだから付き合いなさいよっていうワケ、」

「ク、クソッ、」

テュスラの全身を青白い微光が包んでいる。その左手から薄い渦巻き模様の光のヴェールが拡大し、ゆっくりとカランソットの背中を這い上って行く。

「く、か、こんな拘束帯域マガイあたしに効くとでも」

「離れてちゃ無理かもね、でも今は・・・」

黒衣の侍女は相手の右耳の上、きつく編み上げられた、やや油臭い髪にキスをする。

薔薇の三女 カランソットの額が少し紅くなる。侍女はその耳元に口を寄せ

「もちろん、カイアスも連れてくわよ、」


明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い申し上げます。

なんとこれは一昨年9月以来の続き部分です。

ほったらかしで大変申し訳なく思っておりました。

なんとか繋げそうなのでボチボチ書き足して行くつもりです。

主筋の先端部分との平行作業ですので更新は間遠となりますが

どうかお許しください。

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