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第1巻第1部第13節 「寝物語1」

何か得体の知れない、底意有り気な期待の眼差しが見上げる中、黒衣の侍女はゆっくりと己が制服のベルト(黄金のリングバックルが付いた幅広のサッシュベルトだが剣帯としても兼用できるのが剣呑である)を緩めホックを外しそのまま足元に落としてしまう。一見簡素なスリップ1枚の姿になったが背が高く恐ろしく細っそりと優美極まる立ち姿なのでこれが特注品であることは明らかである。材質はメンシンジュサンの希少な絹製で仄かな黄緑色を帯びた光沢があり、贅沢も極まったある意味場違いな下着なのであった。極々薄い仕上げの生地は固い乳首の形や腰骨の線、やや豊満な下腹の膨らみの曲線を如法になぞってはいるが猥らな風合いは少しもない。クニドスのアフロディーテーの彫像が少しも扇情的でないのと同断ではあるが例外はいつでも存在するし人間的なる欲情の見境の無い支離滅裂さは発現する時と場所を選びはしないものである。エリクレアの女友達を見上げる視線に、そんな涎まみれの不埒な欲望の下心が含まれるとは信じたくは無いものの、それを見下げるクサンドルの眼差しには明らかな冷淡さ、いささか見通しがたい懐疑と危惧の色合いが大変に濃ゆいのであった。

「そんなに見ないで、」

とクサンドル。

「それも脱いでよ、」

と、薔薇の姫はいよいよ強気に厚かましい。

「いやよ、それよりもあんたもちゃんとしなさいな、もう済んだんだからいつまでもお乳を放り出してるんじゃないわよ、」

娘は返事の変わりに明らかに挑発的な意図で身をくねらせするりと掛け布団の下に潜り込んでしまう。中でもぞもぞしているのはどう見ても侍女の命令とは真逆の動作である。目だけを出し布団の下でもごもごと呟く。

「突っ立ってないで早くこっちに来て、 ちゃんと脱いでね、」

侍女は短く鼻を鳴らすとかまわず素早く入り込んでしまう。

「なんで着たままなの、あたしの言うことはいつも無視なのね、」

「ほらほら、馬鹿言わないの、ちゃんと添い寝じゃない、何が不服なの、」

「ああ、クサンドル、とっても久しぶりじゃない?!」

「そうかしら、」

「そうなのよ、」

「ちょっと!暑苦しいわ!」

しかし二人はぴたりとおでこをくっつけた。お互いの高い鼻が邪魔をするので少し角度を取り極自然に唇を合わせた。しばらく*を絡めあい**を交換する。が、いつ果てるとも無く続く湿っぽい粘着音にまずクサンドルが焦れ始め息切れの風を装って首を振り優しく相手の後ろ髪をつかんで引き離す。

「まだ!」

「もういいでしょ!」

「もうちょっとだけ、お願い、お薬くれるって言ったじゃない、あれは嘘?」

「ちゃんとあげたじゃない、」

「瓶入りのはね、これはまた別!」

「こっちはお薬じゃないわよ、」

「あたしにとっては、そう、特別も特別、とっておきの霊薬なの!」

「屁理屈ね、」

「あら、至極真っ当な生理学よ、」

「無茶苦茶じゃないの、」

「あなたの身体はそれくらい特別なの!」

「ふん、身体だけが目当てなのね、」

「ふふふ、怒ってる怒ってる、」

再び*を絡めあい、なんと最初よりも随分長い時が過ぎた。やがて一応満足したらしい薔薇の娘は鼻先をスンスンさせながらようやっと離れるのである。

「これ、やっぱり最高の肌触りよね、」

「汚しちゃ嫌よ、」

「だったら早く脱ぎなさいよね、」

「その手には乗らないわ」

「もう!すべすべすぎるのよねっ!」

「ひっかいちゃだめよ、」

「ずっと撫でててもいいくらい、」

「ゼノワ様の指示でタマーラ様が調製を指揮したんだもの、当然ね。」

「黒の娘たちって、ほんと贅沢だわ、」

「でも、王宮界隈では地味すぎるとか、陰気臭いとか言われてるわ、」

「知ってるわ、でもほんと見る目がないのね、」

「でも、光物や豪奢な東方産の輸入生地に目移りするのも人情としては当然なのよ、」

「知ってるわよ、あたしだってそれは好きだもの、」

「まあ、わたしとしては地味で陰気臭いと思われてる方が気が楽だし何かと都合がいいのは確かなのね、まあ、例外もあるんだけど、」

「ふふ、わかるわ、たとえばグロムハイン伯なんかそうよね、」

「あの風流大臣ね、あの人の目線にはちょっと怖いくらいの時があるわ、」

「あそこの衣装代と王宮の服飾予算が拮抗してるって噂もあるのよね、」

「単なる噂だと思うけど?」

「あたしは自分の見たままを信じるわ、」

「まあ、見るたびに変わってるあの衣装を見てるとねぇ、恐っそろしく奇抜だし、それでいて着こなし方には全然卒が無いというか、気が利きすぎてるっていうか、」

「確かに、あの手のモノはねえ、マイソート公やゲリダニ公が身に着けててもねえ、衣装のお化けが歩いてるだけって感じかも、」

「失礼な物言いは駄目よ、さっきからずっとだけど、」

言いながらもクサンドルの声にも非難の響きは全くないのである。

「それはそうと、ねぇ、前から聞きたかったんだけど、」

「なに?」

「あんたの前のご主人クレサント伯のことよ、」

「何度も話したじゃない、」

「凄い人だったってことはわかってるわよ、そうじゃなくてね、」

「あんまり変な質問には答えないわよ、」

「そんな先回りしないでよ、」

「で、なによ、」

「えとね、」

「んん、」

「デリケートなんだけど、真剣に答えてね、」

突然、侍女は声を荒げる。

「あ、こら、勝手に!馬鹿っ!」

掛け布団の外にエリクレアの美しい二の腕が飛び出した。その手先には二人の下着の塊が一つになりひらひらと揺れている。しかし、クサンドルの抗議には全然力がなく、なんの必然性も存在しない。〔というのも、侍女は頭一つ分背が高く腕力、脚力、いずれをとっても完全に薔薇の娘を凌駕しているのであるから暗黙の同意もしくは積極的な協力の意思なくしてかかる軽業が可能であるとは到底想定しがたいのである〕

「ふふん、やっと成功だわ、あー大変大変・・・ 」

「ちょっとやめなさいよ、 痛いわ、」

「黙ってちょっと吸わせてよ、さっきの仕返しなんだし、」

「そんなにきつく・・・ だ、駄目、噛むのは、もう!」

身長差を利用し肢を絡めあったまま丁度目の前に来た**に唇を当てているらしいし、こりこりに固くなったそれに軽く歯を当て甘咬みを敢行しているのでもあるらしいが布団の下のことなのでよくわからない。二人はそのまま、もそもそ・うぞうぞしていたが、これの描写を延々と続けることは、もちろん第一には技術的に甚だ困難であり〔なにしろ、お布団やシーツという難儀な障壁の下のことである〕、また、あまりに細部にわたることでもあるからなんとはなしに滑稽でもあり、またこれは一層重要なことだが、いささか礼儀作法にも悖る局面も恐らくは存在するのであるから、おおよそのところは省略し、時には韜晦のヴェールをも使用するべきなのではある。しかし二人の交わした会話は、これは綿密に記録しておく必要があるのである。

ちょっとややこしい状況が続きますが、長いので分割いたします。相変わらず堅苦しい書きっぷりなので、相当HEなお話しではありますが問題ないとは思うのですが、運営様より指摘があれば改稿または省略し、非省略版は別に考えることといたします。

【御注意】運営様より指摘があり語句の一部を省略いたしました。

【御注意】運営様より指摘があり語句の一部を追加省略いたしました。第2回目。

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