憑いて行きます。どこまでも…。
「な、なんかに呪われてんのか?大丈夫か?」
小太りの男が怖いものを見るような目でアリマの様子を伺う。
「あ、そうか!そういやそっすね。」
アリマは1人合点がいったようで、ポンと手を打った。
そして俺に軽く目配せをし、
「田ノ中さん幽霊だから彼らに見えてないんすよ。」
「…え、俺が幽霊ってマジ設定なの?」
「いや、まだ疑ってたんすか?自分は天界の者だから、田ノ中さんを視認出来ますが、普通の人には幽霊なんて見えませんからね〜。」
へぇ~と頷きつつ、最終確認の為に山賊2人の前で手を振ったりしてみたが反応がない。
見えてないのは本当らしい。そんな俺を「ちょっと邪魔なんでどいてください。」と小声でどけて、
「気付いてしまったかも知れませんが、私は体が弱く、なおかつお化け的なモノに憑かれやすい体質なんすよ〜。」
「お、お化けってアンデットか?」
「それって呪いなんじゃないのか、大丈夫か?」
ワザとらしく弱々しく振る舞い山賊2人の心配させる始末。コイツは追い詰められた状況に妙に慣れてやがる。日々の精進の賜物なんでしょうね~。
「大丈夫じゃないかもっす、すいません。どこかに休めるトコはないでしょうか?はうぅ。」
フラリよろけて見せる。迫真の演技とは言えないが、可愛い子に頼られたり困っていたら断れる男は少ないだろう…。顔だけは本当に可愛いのだから。
「お、俺らのアジトはどうだ?一応、シャーマンが居るし、医療道具も揃ってる。」
「そうだな、嬢ちゃんもう少しだけ歩けるか?それとも馬に乗せてやろうか?」
見ぐるみ剥がしに来た山賊に何故か手厚く扱われるアリマさん。
先程まで元気にハキハキ喋ってたはずのアリマは、
「す、すいません、ご迷惑をかけて…ぜひお馬さんに乗せてくださいっす。疲れたんで。」
息絶え絶えといった演技で言うべき事だけ告げてとっとと馬の方へ歩く。その足取りはとてもしっかりとしている。
ま、俺も憑いて行きますよ幽霊だけに。