一人遊び。
何だろうこの台本通りというかお約束の展開は?
「何者だぁ、妙な格好してやがんなぁ?」
異世界に来て数分で馬に乗ったガラの悪い二人組に絡まれる僕ら。いや、むしろ絡みに行ったのはアリマさんだけどね。目つきの吊り上がった痩身の男の馬上からの問いかけに、アリマが応じる。
「天界から来たアリマっす。ちょっとあなた方に道をお尋ねしたいんすが?」
「…天界?何を妙ちきりんな事言ってんだ?」
「まぁ待ちなよ。よく見りゃ、この子はまだ育ちきってないが、中々な上玉だぜ。」
もう1人の小太りの男がアリマの全身を舐め回すように確認して下品に吐き捨てる。育ってないかな?俺はこのくらいでも…。
「気持ち悪い事言わないでもらえるっすか?好きになってもいいけど、お触りとストーカーは禁止すから!」
どんな場面でもブレないメンタルに脱帽する。とりあえず、関わりたくない俺はこの場からお暇させてもらいましょう。
あの人たちの見た目…完全に山の賊の人たちだもん。神からのギフトが何一つ無い高校生じゃ、すぐに身包みはがされて、下手したら奴隷にされるだけ、逃げるが正解だ。
アリマさんならきっと大丈夫だ、どんな状況でも順応できるだろう…。
ごめんねの気持ちを胸の奥に秘めて、息を潜めて踵を返す俺の服の裾はガッチリと掴まれた。
「おーっと、どちらへ行くんすか田ノ中さん?」
「え、いや…ちょっとお花を摘みに…。」
「あなた幽霊っすよねぇ?生理現象がある訳ないじゃないっすか~?」
口調は優しいが、目はかけらも笑っていないアリマ。
「逃げるんだよ!当たり前だろ、どっからどう見てもあいつら山賊的な人たちじゃん。」
奴らには聞こえないくらいの声で抗議する。
「え、山賊なんすか?マジすか?初めて見たっす。本物っすかね?ダサい格好してますよね〜。」
キラッと目を輝かせて二人を観察するアリマ。この子の全てを舐めきった態度は何なのかしら、霊太郎困っちゃう。
「おいおい、お嬢ちゃん!」
「何すか、おっきな声だして?」
痩身の方が痺れを切らせた風に声を荒げた。度が過ぎたコソコソ話は怒りを買うのは当然だろう。
「さっきから一人で何してるんだ?」
尻すぼみに弱くなる声色…ひとり?