好きになってもいいけど、お触りは禁止っす。
「色々疑わしいし、信じがたいが…。」
「そこを信じていただかないと話が進まないんすよ。」
プクッと頬を膨らます、実にあざとい好きになってしまう。コスプレ感のある頭部の輪っかや背中の羽が本物なのか疑わしいが…。
「…わかった、ひとまず信じるよ。」
ありがとうございますと彼女は小さく呟き、
「正確には天界へ行く前なんすけどね。田ノ中さんは閻魔大王とかってご存知すか?」
「ん、ああ、アレだろ。天国行きか地獄行きが決める鬼みたいな…。」
「ま、そんな認識で合ってますね。その閻魔大王様が所属してる天界の役所みたいのがありまして、自分はそこの新入社員的な存在すね。」
真偽のほどは置いておいて、実にわかりやすい説明だ。俺は視線で続きを促す。
「いや~実はこの春からココで働き始めたんすけど、雑務ばっかで何にも面白くないんすよね〜この仕事。思ってたのと違うって言うか、お役所仕事って楽だし給料も安定してますけど、生活にハリが生まれないっていうか~。田ノ中さんはぐうたら学生で働いた事ないからわからないでしょうけど〜。」
愚痴りながら流れで俺を貶めるコイツは何様なんだ?可愛くなけりゃ泣かせているぞ。
そりゃ、高校一年の俺は社会経験はないけど…。
「っつかあんた何歳なんだ?」
俺より明らかにちんまくて、幼い顔立ちの見た目には中学生かせいぜい高校生くらいにしか見えない彼女に問い掛ける。でも、働いてるって事は…。
「レディに年齢を聞くなんて失礼っすね。」
「春から働き始めたってんだから、もしかして18から22くらいなの。」
「なんでわかったんすか?エスパー能力持ったストーカーすか!?」
「いや、普通に高卒か大卒の年齢言っただけだけど。」
本気で怯える様子の彼女のテンションには付き合わず、淡々と説明する。
「ああ、そう言う事っすか。…私ってほら可愛いじゃないすか?」
「え、自分でそれ言っちゃうの?」
真顔の発言から冗談ではない事を察する。
「だから、昔からストーカー被害とか多くて困るんすよ。田ノ中さんも私のこと好きになっても良いけどお触りやストーカーは禁止っすからね。」
恥じらいなどもってのほか、むしろ自信満々といった様子で胸を張る少女。緩い服装越しに奥ゆかしくも形よく膨らむ胸部に視線を奪われるのも悪くない。
とりあえず、コイツは容姿は抜群だが中身がダメダメな気がする。
「俺はあんたにストーカーする気はないから、説明を頼む。」
「そうっすね、私もそれほど暇じゃないんで。」とイラつく前置きをし、
「とりあえず軽く自己紹介だけしときますね。私の名前はアリマ…先程のあなたの推察通りピチピチの18歳です。まぁ、まだ16歳の田ノ中さんからすれば社会で働く大人のお姉さんと言った所すかね。」
出会ってまだ十数分だが、いちいちとウザさを醸し出してくるやつだ。この春から働き始めた18歳と俺の社会経験など50歩100歩な気もするが…。
「変な名前。」
言いたいことは多いが、気になった点だけ簡潔に突っ込んでおく。
「うるさい、変な死に方したくせに。」
ボソッと反抗してくる、あれあれ~?僕の聞いた話だと殺したのお前じゃねぇの?
というかどんな殺され方したんだろう?などと考えている間もアリマの自己紹介は続いている。
「天界通行管理局雑務処理班で働いてるキャリアウーマンすね。」
「雑務処理ってモロに下っ端じゃないの?」
「質問とかが無いならこのまま話を続けますね。」
「したよね、質問。なにサラッとスルーかましてんの?キャリアのカケラもない事気にしてんの?」
「うっさいなぁ!人が話してる腰を折って質問してくるとか馬鹿なんすか?常識ないんすか?これだから社会経験ゼロの童貞小僧は嫌になるんすよ!」
「お前が質問求めたんだろ!?それに童貞は関係ないだろ!高1だぞ!そこらの頭スカスカエンジョイズと違って身持ちの硬さはセールスポイントだろうがぁ!」
「ちょっ、あんまり大きな声出さないでくださいよ!あなたがココに居ることバレちゃうじゃないすか!」
少し大人気なく全力反論し俺の口をアリマの小さく柔らかな手が塞ぐ。伝わる温もりと柔らかな感触、クソッ…この程度の色香で騙されるな俺!
しかし、ことさらに慌てるアリアの様子からココは攻め時なんじゃないかと察する。