田ノ中さん、協力してください。
意識の共有が出来た俺たちは、いざと動き出した…が。
「アリマの姉御、大丈夫ですか!?」
騒音と共にファッティくんが部屋に飛び込んで来た。アリマはいつの間にかファッティくんの姉御に昇格したらしい。
「えっと…いや、まぁ大丈夫っすけど。アポなしで来るとかなんすか怖っ!」
「良かったぁ。」
泥やら擦り傷で全身を汚したファッティくんが安堵のため息をついた。
そして乱れていた呼吸を整え、
「姉御、申し訳ないんですけど、アイツを倒すのに協力してもらえないでしょうか?」
「は?」
ファッティくんが指差したドアの向こうでは黒龍が元気に炎を吐いている。
まるでお昼のように外は明るかった。
「いや、なんで自分が?」
「ミミさんに聞きました。姉御は物凄い能力を持った霊能者だって、さらに強力な使い魔も連れていると。」
「えっとー、それは…。」
調子に乗ったツケが速達でやってきた模様。
「そう、そうだ!ミミさんやアニキさんはどうしてるんすか?」
「ミミさんはアンデットの群れをアニキは指揮をとってる幹部と交戦中です。ドラゴンはスリーたちが対峙してますが、もはや限界が近くて…。」
チラチラとドラゴンの方を気にしている。
今もあの炎の中で仲間が戦っているんだ仕方ないだろう。
「どうかお願いします!」
ファッティくんは深く深くアリマに頭を下げた。
「どーしましょう、田ノ中さん。」
「…助けてあげなよ。」
困った様子のままボソッと相談してくる。
「無理っすよ、私に戦闘なんて出来る訳ないじゃないすか。」
嘘を吐いてるようにも見えず、本気で困ってるアリマさん。その時、外からスリーらしき人物の悲鳴が聞こえた。
「くそ、スリーっ!」
ファッティくんは飛び上がり、近くにあった棍棒を握りしめてドラゴンの元へ駆けて行った。
「なんて情熱的な人なんだ…。」
「感心してる場合じゃないだろ、この状況で逃げるのはさすが辛くなってきたんだけど。」
「そっすよね…。」とため息混じりにアリマはうなずき、
「田ノ中さん、協力してください。」
葡萄色の瞳が俺を真っ直ぐに見つめる。