ようこそ天界へ!
「それでこれからなんすけど、あなたにはちょっと異世界の方へ行っていただいて…。」
「ちょと待て、ちょと待てお嬢さん。」
「なんすか?」
掌を彼女の眼前に突き出し、静止を促す。キョトンとした表情もそれもそれで良い。
「死んじゃったって言うのは?」
「あなたっすよ。日本在住の平凡な高校生、田ノ中霊太郎16歳、あなたはまことに残念ながらお亡くなりになっちゃったすね。」
「はぁ?俺がお亡くなりに?」
「そっすね、なんであなたは今は幽霊って事になりますね。私はえっと…人間界でいうトコの天使って感じすかね~。まぁ、正確には異なるんすけどね。」
「いやいや信じられないでしょ?ってか何で俺の名前を?何、どういう事なの?」
可愛さに思わず流されそうになっていた俺が悪いのだけど…、今更ながら戸惑い始め、早口に問いかける。
「察しの悪い人っすね〜。今時の人なのに異世界転生の物語とか知らない口っすか?死んでしまったあなたは異世界へGOって事っすよ。」
柔らかそうな薄桃色の唇からは不釣合いで奇怪なセリフが飛び出す。
「いやいやいや、異世界物とかは俺だって知ってるよ。でもだって…え?」
荒唐無稽な告白に到底事態を飲み込むことが出来ない。
「待って…。混乱してる。」
「少しは待ちますけど、混乱とかはしないでください。めんど…えっと、あの…その、ん~面倒なんで。」
何言い直そうとしときながら、なにも浮かばず素材のままお届けしてくれてんの?
「死んだって何だよ、俺は今こうして生きてるじゃん!」
自分の身体を手で触って確かめつつ、異議を申し立てる。流れで彼女の腕を掴もうとしたが「お触りは禁止っす。」と身をかわされる。
「自分自身に触れるのは当たり前じゃないっすか…。しかし、まぁ、あの〜っすねぇ。」
先程までの淡々とした口調と打って変わり、どうにも言い淀んでいる。
「なんだよ?」
死んだ自覚無く死んでるって何?超怖いんですけど…。そういやコイツが俺の事を殺したとか言ってなかったか?先程の発言を思い出し、語気を強めた。
「いや、不味いんっすよね〜、あなたが死んだのがバレちゃうと〜。」
視線を逸らして頬をポリポリのかく。
「おい、詳しく話してもらおうか?」
「おっと田ノ中さん、そんなに近づいてこないでください。怖いっす、吐息がぶつかり合うなんて恋人の距離っすよ…。」
「今はそう言ったジョークに付き合ってられるほど、余裕がないんだ。はよ、答えんかい?」
はいはい、わかりました。といった感じで彼女は俺を宥めて、
「えっとまず田ノ中さんに理解してもらいたいのは、ココが天界だと言う事っす。」