ボッチ耐性ゼロな構ってちゃんなんすか?
山賊らしからぬ人懐っこい柔和な笑みに心が和む。そのままファッティくんに連れられ、先程の大広間へ。
大きなテーブルの上には絢爛豪華な御馳走とまではいかないものの、肉料理にスープ、パンなど多種な料理が並んでいた。
颯爽と駆け抜けてアリマは席についた、隣にでも座ろうかと近寄るがその席にはファッティくんが陣取る。仕方なく、もう片側へ移動するも今度は痩身スリーが滑り込む。
誰も俺の存在に気付いていない。今更ながら自分が幽霊だという事を思い出して悲しみが少し心を揺らした。
空腹感こそないが、みんなが頂きますと食べてる様子を見て自分だけがお預けというのは物悲しいものだ。
後ろ髪引かれるままトボトボと部屋の外へ出た。
日は落ちるというように堪えきれずに、落ちていった太陽はの姿はもうどこにも無く、空は高く見慣れないほど澄み渡った天に月が爛々と輝いている。
「いや、蒼いな…。」
青白く光る月?らしきものを見て、やはりココは異世界なのだと思う。
風は凪いでいて心地良い。
昨日の夜、軽い散歩のつもりで出掛けたはずなのに次の夜には幽霊になって異世界に来るとは …人生とは不可思議なものである。
今頃、葬式でもしてるのかな?体はどうなっているんだろう?本当に生き返れるのだろうか?
顔を合わせては喧嘩ばかり、最近では交わす言葉も減っていた両親の顔が浮かび、言語化出来ない不安が闇夜に後押しされて、喉の奥からこみ上げてくるのを感じ、じんわりと目頭が熱くなった気がした。
「いやいや、いくらパーティから除け者にされたからって泣く事はないじゃねすか?」
不意に脇から声がした。
「え?」
ピンク頭から伸びた黄色い輪っかがピョンピョンしている。
「田ノ中さんってボッチ耐性ゼロな構ってちゃんなんすか?」
「泣いてねぇよ。」
「目、真っ赤ですよ。」
よく見ると片手に骨付き肉を持っている。口もモグモグしてるし、はしたない子だわ。
「何しにきたんだよ?」
「何拗ねてんすか?一応、あなたは私の精霊って事になってるんで、近くにいて貰わなきゃ困るんすけど。」
「ストーカー禁止だろ?」
「田ノ中さんって人との距離感測れないタイプなんすか?粘着質な生き様ぶっ込み隊の隊長なんすか?」
「そんな訳わからん隊に入隊した覚えはない。」
俺の言葉を聞いているのか、聞いていないのか、アリマは肉にかぶりつき数度の咀嚼後ゴクリと良い音で飲み込む。
「そういえば、ミミさんが泊めてくれると言ってたので、しばらくはこの村に居られるみたいっすよ。」
「…誰?」
「おっぱい。」
即座に妖艶美女の顔が浮かんだ。
「あー。」
「はっ、これだから思春期男子は嫌っすね〜。」
「今のはお前発信じゃん!」
俺の抗議もどこ吹く風でアリマは食べ終わった骨をヒラヒラさせて建物の方へ消えて行った。
しぶしぶと小さなその背中を追った。あの羽は本物なのかな?ってか彼らには見えてないのか?なんて妙な疑問が生まれた。