性霊と呼ばれる者。
「えーっと、うんと、アレっす。私の霊力を吸って大きくすくすく育ったって感じっす。」
「そう…なの?確かにあなたはワタシよりも霊力が高そうですものね。でも、本当に悪霊じゃないの大丈夫?」
へぇ、アリマって霊力高いんだ。
というかあんな投げやりな言い訳で納得したんだね。
大丈夫大丈夫と適当に肯くアリマに、
「精霊…か、はぁ…。確かにぴったりとあなたに従っていて、ずいぶんと懐いているのね…。」
何だろう?少し残念そうにしている気がする。谷間が覗くので俺はそれを薄目で覗く。
「性欲溢れる性霊っすね。変に懐かれて、プライバシーを侵害するストーカー行為は御免すけどね。」
ん?性霊ってなんですかね。私は神に誓って紳士であります。
「悪霊ではないのね…それは残念。本当に悪霊じゃないの?」
不穏な事を言い、ため息を吐く美女。生まれながらのゴーストバスターなのかな?
「それはそうとアリマさんと言いましたね?あなたはワタシと同じような特殊な力を持っているみたい
ね。いえ、ワタシより遥かに強大な…。」
「いやいや〜、それほどでもありますけどね〜。お姉さんも割と凄い方だと思うっすよ。」
褒められると満更でもないようでホクホク無邪気に喜んでいるアリマさん。いや、言葉の端々に邪気はあるな。
「ええ、ワタシもあなたに会うまでは自分以上の霊能者の存在なんか信じられなかったわ。それにしても、そんなあなたを瞬時に昏倒させる悪霊…いえ、精霊でしたかね。その子には興味を持ってしまったわ。」
ジロリと向けられた美女の視線、寒気なのか身震いがした。あの事故に俺の責任はありません。コイツの自爆です。
「悪癖こそありますが、悪霊じゃないんで除霊はしないでくださいね。…それより、私は実はこの村へ来るまでにかなりの時間さまよっていたので、少し体力が落ちていて…。」
フラリとベットに保たれて、腹部を抑えるアリマさんは察してくれオーラを放っている。
美女は「ああ。」と納得した様子で、
「もうじき夕飯の時間よ、あなたに色々聞きたいことがあるけど、とりあえずは休んでいて頂戴。また迎えに来るわ。」
美女はヒラリと踵を返すとドアの外へ消えていった。
そういや名前とか聞いてなかったや。お近付きにはなりたくないから、まぁいいや。
「あんな女が居たなんて計算外で面倒っすね〜。」
不毛な皮算用をし、ぶつぶつつぶやくアリマはほっといて、窓から外を眺める。
日は傾き茜色に空が染まって、その背中には既に夜が迫っていた。
異世界というよりは山の中のキャンプ場にでも来た感覚だ。
それでも自分の家ではない事に一抹の不安は残っている。
しばらくして来た迎えはあの妖艶美女ではなく、ファッティくんだった。