耐えろアリマさん。
家の内部はログハウスといった様相で、天井は高く、小部屋こそいくつかあるが、全体的に広々としている。
槍や刀剣などの武器か生々しく置いて無ければ、キャンプ場としても楽しめたかもしれない。
部屋の真ん中に置かれた大きなダイニングテーブルの上座に位置する席にアニキなる人物が腰掛けている。
インディアンのような髪飾りをした無骨で何より大柄な男、何かの動物の毛皮をベストにして羽織り、露出した肌や顔には無数の傷。
テンプレートなThe山賊といった出で立ちが良い味を出していた。
その脇には幹部らしき人物も控えており、幾ばくかの緊張が部屋の中には流れている。
対面の下座には可愛い顔した天使アリマさんが少し涙ぐんだ瞳で座っていた。両脇に控えた二人組はまるで子分のようだ。
「スリーから聞いたがあんた神に使える者だとか?」
スリーとは痩身の男の事だろう。
それはそうとアニキの体格に不釣り合いな甲高い声が、私気になります。吹き出したとしてもアリマ以外には聞こえないだろうけど、一応マナー的に我慢する。
ふと視線の端のアリマを見ると俯き肩を震わせている。
やっぱりね、あんたはそういう人だよ。
笑いを堪えるのに必死なアリマはアニキの問いかけに答えず、沈黙が空間を支配する。
「あ、アリマさん?」
沈黙に耐えられなくなったのか、ファッティが声をかける。
やめてあげて、今その人戦ってる最中なの…。
俺も近寄ってアリマの様子を確かめると、ヒーッヒーッフーッと必死に呼吸を整えてるが、それじゃ出ちゃうよ生まれる方の呼吸だよ?
数秒後、何とか乱れを直せたアリマが細々とした声で「はい。」とだけ応じた。
よし、アリマさんよくがんばった。
「お前…大丈夫か?」
再び開かれたアニキの言葉に撃沈したアリマはテーブルに頭を打ちつけ意識を失った。
多少のざわつきはあったものの、ファッティくんのアリマは呪われやすい設定説明のおかげでアニキたちも納得したらしく、アリマの身体はベットに運ばれた。
お触りされ放題だけど、仕方ないよね。俺は手を出せないし、自業自得だし…。