お姫様は足元がお留守なの。
「お払いとかした方がいんじゃねの?大丈夫?」
太目の山賊はアリマから少し距離を取って心配そうに見ている。
「ああ、すいませんっす。悪霊にセクシャルな方面でのハラスメントされてたんすが、もう弾き飛ばしたんで平気っす。」
「なんだオメェ、妙な格好してると思ってたがシャーマンかなんかなのか?」
「ええ、私は神に使える者なんです。皆様に愛と祝福を〜。」
痩身の男の言葉に反応し、猫被りな声色で、それっぽく手を合わせて祈っている。ただ、よく見るとアレは忍者のにんにんじゃないかしら?
「神に使える者なのに呪われてるって、変な話だなぁ?」
ほぇ〜っと納得していた小太り君と違い痩身マンは鋭く突っ込む。多少頭が切れるのかもしれない。
「えっと、それはその…、そうです!私は皆様に愛や祈りを差し上げ過ぎて自分の分の聖なるパワー的なのがすぐになくなっちゃうんすよ。とはいえ、我が身かわいさに他者の不幸を見逃すなんて出来ませんし…。」
俺の目の前にいる眩しい笑顔の嘘つきを呪う方法はないのだろうか?
「お前…天使かよ。」
痩身マンも頭スカスカだった模様で、すっかりほだされて羨望の眼差しすら送っている。
「はい、天使です。」
「俺たちは天使を連れて来たのか!早くアニキのとこへ行こ行こ!」
「ああ、我が天使様こちらにどうぞ!」
天使天使と湧き立つ2人の騒ぎに気づいたのか、ポツポツと点在する家から人が顔を覗かせている。そんな聴衆の目を全て優しく受け止めてアリマは威風堂々と歩いていた。
いや、なんだコイツ。
さほど大きくない集落のお陰かアニキなる人物の家には早々に到着した。
道すがら見てきた家とは違い、明らかにサイズが大きく村長、または権力者の家なんだと容易に想像できる住居である。
木造建築で赴きと年月を感じるが、決してボロ小屋とは呼べない程度に整備されている。一応といった様子だか、門番らしき人物も家の前でくつろいでおり、それなりに重要人物の住処だという事を感じさせる。
「他のトコと違っておっきい家っすね〜。」
「そうなんですよ、ココが我らのアニキの家です。さぁ、どうぞ。」
痩身の男が門番らしき人物に取り次ぎしてる中、小太り君はすっかりアリマの手下のようになって説明していた。アレ、敬語になってますよ?
「アリマさんファッティ、アニキの許可が出た入ってくれ。」
ドアから顔だけを覗かせて、痩身の男が声をかけてくる。
小太り君はファッティという名前らしい。
「段差になってるんで、足元に気をつけてくださいね。」
と、ファッティくんはアリマをすっかりお姫様扱い。俺も足元を気をつけながら憑いて行こうと歩き出した先でアリマが豪快にすっ転んでいた。
「アリマさぁぁぁん!」