安心してください、自分も初めてです。
「アジトに行くのはいいが、アニキの許可取らなくて平気かな?」
「ココで見捨ててく訳にもいかないだろ?アニキならわかってくれるさ。」
自分の身長の倍ほどもある馬にヒラリとまたがる活発なアリマを他所に山賊たちはコソコソお話中。
「なぁ、アリマ。」
「なんすか、田ノ中さん。いきなり呼び捨てとかイラッとしますね。まだお前とかのがマシっすね。」
今更コイツに敬称は要らないと思うので、無視して話を続けた。
「アイツら間違いなく山賊だぞ、付いて行って大丈夫なのかな?」
「また、得意のビビリモードっすか?どうせ見たところ周りに人家もないですから、頼れる人に頼ってけばいいんすよ。」
「頼っちゃいけない人だと思うんだけど…。」
後の事は考えず、その場しのぎっぷりはアリマらしい。これを人は無計画馬鹿と呼ぶのだろう。
「それに山賊なら宝の情報に詳しいでしょうし…。ウケケッ。」
小声で耳打ちしてくる留めの下品な笑いにコイツのゲスさが凝縮されていた。
やがて問答していた山賊たちがアリマの元へ来て「案内するよ。」と優しく声をかけてくる。
見た目はともかく、中身はアリマよりよほど爽やかな連中かもしれない。
「わかりました、お願いします。私はこの馬さんに乗って行くのでお二人は、そちらの馬さんでどうぞ。」
えっ?と固まる2人に構わず、どうぞどうぞと笑顔で誘うアリマ。おやおや、どちらが山賊かわからなくなってきましたね〜。
根っからの子分気質なのか2人は戸惑いながらも馬にまたがっている。
大柄の男が狭そうに乗って馬も可哀想だ。
「さ、田ノ中さん早く後ろに乗ってください。」
ポンポンと馬の背を叩く。
「え、いい…いいんすか?」
「気持ち悪い反応はやめてもらるっすか?田ノ中さん置いて行く訳にはいかないし、あの人たちの後ろに田ノ中さん乗せて変な感じになるのもアレなんで断腸の思いっすから。」
口は悪いがそこそこ色々と考えてはいるらしい。
「あ、でもお触りは禁止ですから。」
「難しいな…俺、馬なんて乗るの初めてだし。怖いんだけど…。」
「安心して下さい、自分も初なんで。」
耳を疑う発言と共に走り出した馬に俺は言葉を失った。