序章 フレイア王国 2
二話 農村でした。
飛び出してすぐに子供を押し出す。
少し強く押し過ぎたかもしれない。まぁ許してほしい。
そこまで考えたところで身体に激痛が走った。
意識がどんどん薄れていく。感覚がなくなっていく。
そして暗闇に包まれた瞬間。自分がこの世界から離れている
そんな気がした、その時、その声は、聞こえた、気がした。
『ナカノ ケイタ ーーの魂の隔離をーー確認しました。
これよりーー転生システムを起動します。』
あー俺ってば幻想見てるわー、いよいよ死ぬわー
死んだら転生?そんな都合のいいことないよ
きっとこれも俺の脳が死ぬ間際に考えている、
単なる夢に、他ならないんだろう。
そう決めつけ、思考を止める。
『来世についての希望がなければ抽選による転生となります。』
希望?なにそれ?希望もクソも死んだからもうないよ笑
まぁでも、助けた子がいい人生を送ってもらいたいな。
ってか事故、痛過ぎて、もう生きたくないんですけど…
『希望なしと承りました。それでは抽選します。』
『ドゥルルルルルッバン』
『出ました。小当たりですね。あなたは、剣と魔法の世界ユグドラシルで小当たり特典の鑑定術Lv3を持って転生してもらいます。』
(はあぁ?ユグドラシル?なにそれ?鑑定?インキャの見る夢は最後までそんなことなんだな)
ラプラスの悪魔を宿せるほどの解析能力を持つ自身の脳を馬鹿にする。
(これにてーーー転生システムを終了しますーーー)
そう聞こえた、瞬間 俺の意識は暗闇に沈んだ。
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終わることのない永遠の眠りにつけると思っていた。
あの声もどうせ夢だと思っていた。
もう一度死ぬなんてもう嫌だと心から思った。
なのに…なのにぃ〜〜 なんで…どうして俺は、
「「「転生しちまってんだよーーーーーーーーーー」」
転生した。その事実に気づいたのは、6歳だった。
俺が生まれたのは農村で数十世帯が暮らしている。
農村って聞くと貧乏ってイメージがあるが、この世界では
魔法が意外と普及していて、生活魔法で水や火には困らんし、畑の野菜もそこそこうまい。
もっとも、よくわからん色や形をしているが、慣れとは
恐ろしいもので、今では普通に食える。
俺が転生に気づいたのは、6歳といったが、実はあまり正しくない。
生まれつき、自分が自分でない感じがはあった。それが自我が安定した6歳になってようやく気づいた、そんな感じだ。
この世界で俺は シモン=アレキメデス という名前を授かった。
意外とかっこよくね?俺の名前 笑
でもなんでか、村の人たちは、俺の名前を悲しそうに呼ぶ。
なんでも、父が村に襲ってきた魔物を退治して死んだ村の英雄の名前を借りたとか、
ちょっと重くね?父上様、
そんな名前だと真面目にしか生きられないよ。
そして転生に気づいたところで色々な検証を始めることにした。まず自分を鑑定してみる。
「「かんていじゅつーー!!」」
そう言って俺は自分を指差す。
この世界では、スキル名を口にして対象に指を指すことで
スキルが発生するらしい。
舌がうまく回らんのは許してもらいたい。
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シモン=アレキメデス
攻撃力 3
防御力 15
回避率 8
生命値 19
魔力量 35
運 500
〜スキル〜
固有スキル
ラプラスの悪魔Lv.5
未来予測 状況把握 未来予知
レアスキル
鑑定術Lv.3
耐性
目眩Lv.2
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前世でも持っていた能力はこの世界で明確なスキル
となっていた。
この世界では魔力があるのだが、それを活用する事で
スキルは発動できる。
前世は魔力なんて持ってなくても使えたのにな
固有スキルってのはとても珍しいらしいけど
有名な冒険者とか 学者さんとかになれば大体持ってるらしい
まぁどうでもいいかな。
とも言えないのが現状だ。
自我がはっきりしたおかげでわかった事があるのだが
俺たちの住む世界 ブラウス は戦争が多いらしく
そのせいでフレイア王国でも有用と思われるような
スキル持ちは12歳になると教育を受けさせるために
王都へ集められる。
その対象として俺は含まれるらしい。
王都での費用は国が負担してくれるらしく
さらに両親には謝礼として金が支払われるらしい。
そのせいで両親も俺とバイバイする気満々だ。
正直、俺も学校へ行くのは悪くないと思うのだが、
間違いなく卒業後には戦地へ送られるだろう
幸にも学校へ行くには6年後だ。
まだ猶予がある。
前世みたいにあっさり死なないようにしっかり
準備をしないとな。
「アルーっ! 危ないから戻ってきてー」
金髪碧眼のthe美女。名前はクレハ 今世の母親だ。
丁度今は森の中で山菜採りの最中。
一人家には置いてかないと俺も駆り出されている
「うんっ」
まぁ俺は 山菜とかよくわかんないー
っていって、遊んでるだけなんだけどね
「よしっ!結構集まったから帰ろっか!」
記憶が戻った理由はわからんが、
魔法なんかがある世界だ。
どうとでもいえるだろう。
母は後ろに山菜 前に俺を抱きかかえる
「身体強化っ!」
と同時に加速。
体感50キロはあろうかというくらいの速さで
木を蹴り崖を下り川すら弾き進んでいく。
「あわわわわっ」
10分後、
「よしっ到着!」
頭がぐるぐるする。
何回やってもなれないな
これのせいで目眩耐性なんか獲得しちゃったし
30分後
だいぶ楽になったー
前までは1時間くらい回復に要したけど今は30分
くらいで治るようになった。
これも耐性のおかげだな
感謝感激雨嵐。
起き上がるタイミングで
家の戸が開く。
「ただいまー」
父。降臨である。




