好き嫌い
ケイ「好きとか嫌いってすごく単純そうにみえるけど実はすごく複雑だよな。」
アイ「うーん?どういうこと?」
ケイ「なんていうのかな、例えば同じものを好きな人間が二人いたとしてもその二人の好きのベクトルの方向性や大きさってのは全然違うわけじゃん。」
アイ「まあ、同じものを好きな人同士でも意見がぶつかったりすることもよくあるもんね。確かに好きって言葉だけじゃどう好きなのはよくわからないわね。」
ケイ「そうなんだよ。その人の好きとか嫌いってその人がどんな人かを表してるじゃん。だから初めて会う人とかにはよく好きなものを質問したりするじゃん。でも好きって言葉だけじゃその人がどんな人かなんて全然わからないよね。」
アイ「確かにそうね。それに自分の好きを言葉で相手に伝えるっていうのは難しいよね。頑張って伝えようとしても全く伝わらなくてかえって逆効果になることもあるだろしね。」
ケイ「だよね~。言葉っていうのは難しいよね。だから自分のことを相手に知ってもらいたいときなんかは下手に言葉で伝えるんじゃなくて時間はかかるかもしれないけど行動で示すってのが大事なのかもね。」
アイ「うーん、行動で示すってのはちょっと大袈裟な気がするけど……。まあ、でも結局相手のことを知りたかったら言葉で聞くんじゃなくて共に過ごすってことが大事な気がするわ。過ごしてくうちにどういう人間かっていうのがわかってくると思うのよね。」
ケイ「つまり!フィクションとかでよくある転校生が来たときにする質問攻めというのはあまりよくないってこと?」
アイ「まあ、あれは相手のことが知りたいってのもあるだろうけどクラスに馴染めるようにというかお喋りしてみたいっていう好奇心なんじゃないかなー?そもそも現実だとそこまでないわよね。」
ケイ「なるほど!あの行動にはそんな深い意味が……。それはそうと話は少し変わるんだけど自分の好きを語るシーンっていうのは結構あるけど逆に自分の嫌いを語るシーンってあんまりないよね。なんでだろ?」
アイ「確かに言われてみればそうかもしれないね。まあ、でもそれは全然不思議じゃないわね。だって誰だって明るいことや自分の興味があることについて話したがるでしょう?嫌いなことっていうのはどうしても負の感情が付きまとうものだからあまり話してていい気分じゃないのよ。私だってきらいなシュールストレミングの話なんてしたくないわ。思い出しただけで鼻が腐りそうだもの。」
ケイ「シュールストレミングに一体どんなトラウマストーリーがあるのかは気になるところだけど、自分のことを知ってもらうためには嫌いなことについても話したほうがいいと思うんだけどな~。」
アイ「そもそもあなたは友達とかと会話する時、常に自分のことを知ってもらいたいな~って思いながら話をしてるの?」
ケイ「うっ……。そう言われると弱いな、確かにいつも自分が思いついたことについて適当に話してるだけだ……。」
アイ「そうだと思ったわ、だって私と話してるときにケイが自分の嫌いなものについて話すシーンなんて身に覚えがないもの
。大体、なんでそんな自分のことを知ってほしいのよ?自分のことをそんなに知ってる人間がいたらかえって気持ち悪くない?」
ケイ「うーん……言われれてみれば確かにそうだな。アイが言ってることって意外と正論な気がしてきた……。でもやっぱり自分のことをなんでも知ってくれてる親友的な存在って欲しいじゃん!」
アイ「そんな親友的な存在なんて基本はフィクションの中だけで現実ではそういるものじゃないわよ。というかさっきから思ってたけどケイって漫画とかアニメの見過ぎじゃない?理想と現実は違うって話はこの前もしたわよね。」
ケイ「まさか……前回の嘘予告である『理想と現実の差異』というのは嘘予告ではなかったーー!?!?」