天麩羅
デパートに入った二人は、お昼を食べようと話し合う。
コンクリートとガラス、暗めの照明でデパートらしくない場所だ。周りのオフィスに馴染ませているようだ。
大きな吹き抜けが、丸の内南口周辺の雰囲気と合っていると京は思う。
レストラン街のフロアにエスカレーターで移動し、歩き回りながら何を食べるか相談する。
「お寿司食べたい!」
「寿司...めっちゃ並んでる」
有名回転寿司店のテナントの外に、丸イスに座った行列があった。なかなか移動しそうにない。
「むー...あ、天麩羅」
少し歩くと、天麩羅専門店のテナントがあった。待機列はなく入れそうである。
無事昼ご飯にありつけた二人は、天麩羅と白米、味噌汁のセットを注文していた。
テーブル席だったが、揚がった天麩羅から順に席まで運んでくれた。専門店の天麩羅など食べ慣れていない二人だが、嬉しい仕様であった。
二人は家庭の天麩羅より薄く、さくさくした衣に驚いた。塩で食べるのが美味しいというのにも納得した。ポテトチップスに匹敵するほど心地よい食感で、右紗子は顔がほころび、京はご飯をかきこんでいた。
にこやかな中年女性の店員が、おかわりいかがですか、と優しく声をかけてくれた。