1、種目
「来月のクラス対抗スポーツ大会ですが、あとサッカーとバスケ、それぞれ一名ずつ決まってません。人数的に2種目出てもらうことになるのでハードかもしれないんだけど誰かやってくれる人居たら私まで声かけてください」
水瀬まりは、実はクラス委員でもある。
人望も厚く、次期生徒会長候補とも言われている彼女は人前で話すことになんら抵抗ない。美結はそんなまりを眩しく見つめる。
「宇佐美くーん、スポーツ大会バスケだったよねー?」
「うちら応援行くねぇ」
教室から聞こえてくる彼の名前に、美結は少しだけ過剰反応してしまう。
(だめだめ、もう関わらないって決めたんだから)
「今日もすごい囲まれ様だね、宇佐美くん」
教壇から降りてきたまりが、宇佐美崇仁を横目で見ながら言った。だけど目の前の美結は反応がない。
「・・・美結?」
「あ、ハイっ!」
「どうかした?」
突然声をかけられて我に返った美結は慌てて笑顔を見せる。
「んーん、何でもない!」
話を逸らそうと、美結はまりに問い掛けた。
「そうだ、まりちゃんは何出るんだっけ?」
「私はバレーかな。」
「そっかぁ!格好いいだろうなぁ、応援に行くね!」
まりは運動部に所属していないが、かなり身体能力に長けていて一年の頃はよく様々な部活から勧誘されていたほどだ。
「美結は?出ないの?」
「うん!私は足手まといになっちゃうから、救護係に」
「めっちゃ笑顔で言うことじゃないと思うんだけど?」
呆れた顔をしてまりが笑っていると、教室に慌ただしく比呂が入ってきた。
「美結!」
「比呂くん?どうしたの?」
「俺、サッカー出ることになった!」
「えっ、良かったね!」
「おう!」
嬉しそうな比呂の表情に、美結は心から嬉しく思った。
「サッカーやりたいって言ってたもんね」
「じゃんけんで勝ったんだ、マジで嬉しい」
「去年はサッカー出来なくて不貞腐れてたもんねぇ比呂くん」
「は、不貞腐れてなんかねーし!」
プッと思い出し笑いするまりを、比呂が赤くなって否定する。
「応援に行くね!」
そんな二人のやり取りを笑顔で見ながら美結がそう言ったその時────。
「水瀬さん、ちょっといいかな?」
美結の席に、いや正確にはまりのところにやってきた宇佐美に、美結の体が強張る。
「サッカーも出るよ、俺」




