1、新しい友達
「悔しい!悔しい悔しい悔しい!」
全ての種目が終わり帰りのホームルームが始まるまで、比呂は美結のクラスにいた。
感情を露にして騒ぐ比呂の姿に、まりと美結は苦笑する。
「比呂くん、そんなに悔しがらなくても」
「二人のクラスはサッカーもバスケもバレーも優勝だろ?俺のクラスは結局どれも勝てずだぞ?!あーあっ」
クスッと笑う美結を比呂が睨み付ける。
「なんで笑うんだよ」
「あ、ごめん。相変わらず負けず嫌いだなぁって。比呂くん小学生の頃から全然変わらなくて」
「なんだよガキだって言いてぇのか」
「ううん、なんかホッとするなぁって言いたかったの」
ふわりと柔らかく笑う美結に、比呂の頬が赤くなる。
「本当に・・・お前はっ!」
(そういうのが、ダメなんだって気付けよバカ!)
照れ隠しに頭をぐちゃぐちゃに撫で回すと、美結は「え、ちょっとやめてよー比呂くん」と戸惑いながら乱れた髪を直す。
中学時代から、美結の無垢な笑顔を直視すると破壊力がヤバい、とは聞いてはいた。実際比呂の周りの友達も、それで惚れてしまったことが多々ある。それを蹴散らすのに比呂がどれだけ苦労してたか美結は知らない。
(無自覚ってのが、また一番タチが悪ぃ・・・)
「帰り、ドーナツ食べ行くぞ」
ぶっきらぼうにそう提案する比呂に、美結は嬉しそうに微笑む。
「うん。まりちゃんも行こ」
「オッケー」
「じゃあ放課後迎えに来るからな」
「うん」
教室を出ていく比呂に手を振っていた美結は、同じクラスの柳くんと目があった。柳壮太郎は意を決したような表情で、美結の席まで近づいてきた。美結に周りの好奇な視線が集まってきて恥ずかしくなる。
「小宮山さんさっきはごめん。二人きりになれたのが嬉しくてつい・・・勢い余ってあんなこと言って。」
「え・・・あ、うん」
隣でキョトンとするまりの存在に、緊張した面持ちの壮太郎は気づく余裕もない。戸惑う美結だけを真っ直ぐ見つめて、壮太郎は続けた。
「俺、分かってるから。小宮山さんが俺のこと好きになることはないってだから」
「ちょ、ちょっといいかな・・・」
クラスがざわついて、いたたまれなくなった美結は慌てて壮太郎を連れて廊下に出た。
「えと・・・柳くんさっきはごめんね、話の途中だったのに」
「いや、」
「・・・柳くんは優しいし、クラスのムードメーカーとして人気者だし、ステキな男の子だけど・・・」
そこまで話して、美結は言葉を切った。
(そっか・・・)
想いに応えられないって、こんなに苦しいんだね。
たっくんも・・・こんな気持ちだったのかな?
「小宮山さん・・・?」
「ごめんなさい。私、好きな人がいるの・・・」
気持ちを伝えるって、すごく勇気がいる。
受け入れて貰えない辛さを、私は知ってる。
だから────余計に申し訳ないよ・・・・。
「・・・本当にごめんなさい」
「そんなに謝られると逆に惨めだからさ!もう忘れて!」
おどけるような口調でそう言うと、壮太郎は笑顔を美結に見せた。
「じゃあさ、友達になろうよ」
「・・・“友達”?」
「そっ。友達!それなら良いでしょ?」
壮太郎の明るさに、美結は救われた。だけど同時に、壮太郎の言葉にどこか違和感を感じた。
「・・・うん」




