1、イケメンは最強
「イケメンって、最強だよね」
頬杖をつきながらそう声をこぼしたのは、小宮山美結が高校に入って一番にできた友達の、水瀬まりだ。
「急にどうしたの、まりちゃん?」
「ほら、あれ見て」
まりに指をさされた先に美結が視線を辿ると、そこには高校入学以来女子の視線を集めまくっている宇佐美崇仁の姿があった。
「宇佐美くん、今日も女子に囲まれてる」
「ああ・・・」
ハハハとつい渇いた笑い声で答える美結に、まりが言った。
「だから本当に信じられないんだけど、美結があの宇佐美くんと許・・・」
「あーーーっと、まりちゃん!?」
まりの言葉を慌てて美結は遮った。
そんな美結の慌てようを見て、ようやく気がついたまりは小声になる。
「あ、ごめん。美結、内緒だって言ってたのに」
「うん・・・」
周りに知られたくないから内緒にしているだけではないことに気付いていた美結は、苦笑いで答えた。
(私だって、信じられない。)
元々は、祖母同志が勝手に決めた許嫁だった。
仲の良かった祖母達が、お互いの子に男女が生まれたらぜひ結婚させましょうという約束は、孫の代でついに果たされることとなったのだ。
(宇佐美くん・・・・)
宇佐美崇仁は、入学当初から目立っていた。
整った顔立ちだけでなく、物腰柔らかな性格はすぐに女子を夢中にさせた。
スラリと伸びた長い手足はスタイルの良さを強調させ、
日本人離れの高身長。
とにかく、目立っていたのだ。
そんな彼と自分が将来を共にするなんて、美結にも信じがたかった。
というよりその約束がいまだに続いているのかどうかも、いまいち自信がなかった。
「ていうか話したことあるの?私、美結が宇佐美くんと話してるところ見たことないけど」
「そ、それは────・・・・」
まりに痛い処を突かれて、美結は一瞬言葉を詰まらせた。
そして、苦笑いを浮かべたまま小さな声でぼそりと溢す。
「・・・私、宇佐美くんに嫌われてるから」