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「ええ?会社へ行くんじゃなかったのか、きみは」

 隣の銀縁眼鏡をかけた少年が驚いたように叫んだ。

「何言ってるんだ馬鹿、何でおれたちが会社なんかに行くんだ」

「オヤジじゃあるまいし」

「そうだよ、ちゃんと制服着てるじゃあないか」

 隣の少年たちが口々にはやしたてた。

「本当だ、学ランだ、懐かしいなあ」

 銀縁眼鏡の少年は狐につままれたような顔で、黒いカラーをいじくりまわしている。

 そういえば、黒い詰襟の制服なんて、この辺の学校にあったっけ?

 彼はどこの学校なんだろう。目を凝らすと、襟についている組章の数字はⅤ、私より一年先輩だ。

 でも、おかしい。確か、中学って三年までじゃなかったっけ。高校だってそうだ。

「いいんだよ、キューセイなんだから」

 私の隣に座っていた同じ詰襟の制服を着た見知らぬ少年が低い声でぼそっとささやいた。

 私はいつの間にか不審げに隣の彼の制服をじろじろと見つめていたのだった。

 少年?でも、ずいぶん老けて見える。頭には白いものも結構混じっているし。

 だけど、顔はどう見てもやっぱり少年だ。若白髪かな。

 キューセイ、という言葉が私の中でいくつかの単語に変換される。急性、旧姓、救世・・・?

「旧制中学だよ。知らんのか。五年まであって、今でいえば中学と高校が一緒になったようなもんだ」

 隣の彼はまるで私の心を読んだかのように説明してくれた。

 気になって彼の組章を見ると、Ⅵ―C。

 六年生?まるで小学生じゃないの。今、五年までって言ってなかったっけ?


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